24 もしかして犯人じゃないですかね

 その日の深夜2時、スマホのバイブ音で目を覚ます。枕元に置いてあるスマホに手を伸ばしボタンをスライドさせ電話に出る。


「はい、もしもし…?」


 寝起きの声で対応する。相手も非常識な時間にかけているのはわかっているので、一言詫びてから話し出す。


『ああ、ミシェルさん。サミュエルです。こんな時間にかけてすみません、ちょっと話があって』


 ミシェルは体を起こしながらまだ覚醒かくせいしていない頭で話を聞く。


「な~に?」


『今、ある奴を付けてるんですよ。そいつ、人の後を付けたり、部屋の前で20分ぐらい見張ってたりして、怪しい行動をとってるんです。

あいつ、もしかして犯人じゃないですかね』


 サミュエルの話にミシェルの眠気は吹き飛んだ。すぐに問い質した。


「ちょっと待って、サミュエル!どういうこと?」


『仕事帰りにコンビニにいる時に同業者っぽい女性が入って来たんです。で、外にそいつもいて、そのひとが出て行くとその男も後を付いて行ったんですよ。怪しいと思って、俺も後を追ったんです。

警察の情報と同じで、黒髪に長さは肩ぐらい。カーキー色のジャケットとジーンズを履いてます』


 ミシェルは立ち上がって着替えて始める。すぐに駆けつけたほうが良いと考えた。


「サミュエル!今、どこにいるの?」


『東区の海波うみなみ小学校の辺りです。この辺住宅街が多いでしょ。奴が付けてた女性も3階建てのアパートに住んでました。で、今は線路沿いを歩いてます』


「いい!今すぐ尾行をやめて。私もすぐそっちに行くから!」


『あっ、跨線橋こせんきょうを上がってる!後でまたかけ直します』


「サミュエル!サム!」


 呼び止める声も届かずサミュエルは電話を切ってしまう。ミシェルはコートを取ってシヴァに連絡を取りながら駐車場へ向かった。





 サミュエルは階段を上がり小さくなった奴の影を見つけ距離を取りつつ尾行する。遮蔽物しゃへいぶつがないので振り返らないことを祈りつつ付けていたのだが、反対側の階段に奴が消えたところで走り出した。

 駆けて階段を見たところ彼の姿がなかった。どうやら駆け足で階段を下りたらしく見失ってしまった。急いで駆け下りて辺りを見渡す。真っ直ぐ線路沿いを歩いたのか、それとも住宅街に入って行ったのか検討がつかなかった。


「くそ!どこ行った?」


 地団駄じだんだを踏んで悔しがったところで背後から何者かに掴まれる。首筋に噛みつかれて生気を奪われる。引き離そうとしたがすぐに力が入らなくなり、サミュエルの体はちりとなって消えてしまう。




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