第二幕 ポーション③


 喚び出されて三ヶ月。

「『ステータス』」



 小鳥遊 聖  Lv.55/聖女

  HP:4,867/4,867

  MP:5,867/6,067

  戦闘スキル:

   聖属性魔法:Lv.∞

  生産スキル:

   製薬   :Lv.21



 研究所で只管ひたすらポーションを作っていた私の製薬スキルは21レベルまで上がった。

 ポーションは10レベルごとに作れるランクが上がるので、現在は上級HPポーションも作れる。

 ただし、まだ失敗することも多かったり……。

 上級のポーションは使用する薬草も貴重な物が多いため、あまりにも失敗が多いこのレベルでは中々作らせてもらえない。

 20レベルを超えて作った上級HPポーションはまだ三つなのよね。

 それでも、そもそも上級のポーションを作れる人間が少ないから、研究員の私が上級のポーションを作れるようになったのは快挙らしい。

 今までは研究所に上級のポーションを作れる人間が一人もいなかったらしく、研究で使うときには外部に注文して取り寄せていたらしいので、私が作れるようになったときには、その分の手間とコストが減ると喜ばれた。

 製薬スキルのレベルを上げるためにはポーションを作る必要があるのだが、一般的には魔力が枯渇してしまうので、一日に作れるポーションの個数に限界があり、なかなかレベルを上げられないのだそうだ。

 私?


「相変わらず、おかしな量を作ってるね」

「そう?」

「うん。一日に中級のポーションを十本以上作れるとか、十分おかしいから」


 目の前の保管庫にはずらりと並んだ中級HPポーション達。

 性能はもちろん一般の五割増し。

 研究所の所長曰く、下手をすると一般の上級HPポーションより効果が高いかもしれないとのこと。

 そんな私の作るおかしな性能のポーションの原因を探るため、今なおジュードと二人、日夜検証を続けている。

 相変わらず原因は一向に分からなくて、私とジュードだけでは見落としがあったのかもと、最近では他の研究員まで検証に加わっているんだけどね。

 色々な角度から検証をとのことで、作製経過を検証する者、ポーション自体を検証する者等に分かれて検証を行ったのだけど、その間、私は只管ポーションを作り続けた。

 一日中。

 あれはいつだったか、その日、百五十本目の下級HPポーションを作っていたときだった。

 ジュードが言ったのだ、「まだ作れるの?」と。

 それに対する私の返答は、「何のこと?」だった。

 そこでようやく、一日に作れるポーションの一般的な個数というものを知った。

 ポーションに注ぐ魔力はランクが高くなるにつれ必要量が多くなるそうで、下級で百本、中級で十本程度が一般的に一日に作れる本数だそうだ。

 これは専門的にポーションを作っているくすの話で、研究所の人間はもう少し少ないらしい。

 確かにポーションを作っているとMPが減るけど、微々たるものだから、全然気にならなかったのよね。

 そこでジュードに、製薬中に魔力を注いでいないんじゃないかとか色々言われたけど、MPはしっかり減ってるし、そもそも魔力を注がなければ、ただの薬草をせんじた汁ができあがるだけ。

 結局、所長の「性能が上がる方の研究を優先しろ」との声で、私はポーション作製の日々に戻った訳だが、少々調子に乗り過ぎたらしい。

 研究に使うよりも私が作るポーションの方が多くて、余るようになった。

 市場に卸せばいい金額になるのだが、如何いかんせん性能が一般の1・5倍で、このまま卸すと問題になるということで、研究所には現在素敵な量のポーションがある。


「また沢山作って。所長に怒られるよ」

「集中して作ってたら本数を数えるのを忘れてたのよね」


 噓です。

 早く文句を言われずに上級HPポーションを作れるようになりたくて、レベル上げをしていただけです。

 薬草は薬草園の物を使っているので、この間、薬草園の薬草が少なくなってきたって所長に文句を言われたのよね。

 怒られるのは嫌なので、今日作ったポーションは自室に隠そうかと思い、今日作った分を保管庫から取り出しているとバタンと大きな音がして研究室のドアが開いた。

 後ろを振り返ると息を乱した兵士が「所長は?」と大きな声で叫びながら、研究室に飛び込んできた。

 所長室のドアを指差すと、大慌てで所長室に向かう。

 一体何があったんだろう?

 しばらくすると兵士と所長が所長室から出てきた。


「緊急事態だ、今ある回復系のポーションを集めろ」

「何があったんですか?」

「第三騎士団がゴーシュの森から戻ってきたんだが、サラマンダーが出たらしくてな。怪我人が多くてポーションが足りないらしい」


 所長の近くにいた研究員が聞くと、状況が分かった。

 第三騎士団はこの一週間、王都西にあるゴーシュの森で魔物の討伐を行っていたのだが、どうやらそこで甚大な被害が出たらしい。

 いつもは甘いマスクでにこやかに微笑ほほえんでいる所長が、鬼気迫った顔で指示を出し、途端にバタバタと研究員たちが机の引き出しや棚からポーションを研究室入り口近くの机の上に集める。

 私もジュードと一緒に保管庫からポーションを取り出して運んだ。

 机の上に集まるポーションを見て「こんなに!」と兵士さんが驚く。

 えぇ、最近め込んでいましたから。

 保管庫から全てのポーションを取り出し終わり、その後、部屋に置いてある上級HPポーションのことを思い出したので、取りに行った。

 部屋から戻ると、研究所のポーションを集め終わったらしく、ドアの外に来ていた荷馬車にポーションを積み込み終わったところだった。


「何人か一緒に来い」


 所長の指示で、入り口近くにいた研究員が荷馬車に乗り込む。

 私が走って荷台に乗り込んだところで、馬車が走り出した。


「ねぇ、ゴーシュの森って竜なんて出るの?」

「竜? いや、出ないよ」

「サラマンダーって火竜のことじゃないの?」

「ん? サラマンダーはただの火を噴く蜥蜴とかげだろ」


 一緒に来たジュードにサラマンダーについて質問すると、予想外の答えが返ってきた。

 サラマンダーって竜じゃなかったんだ……。

 脳内イメージでは火竜だったのに……。


「蜥蜴なのに、そんなに被害が出るって……」

「蜥蜴っていっても大きいからね。その癖すばやい。竜種ではないとはいえ、ランク的には上位に入る魔物だよ」

「そう」


 サラマンダーの脳内イメージが体長十メートルのコモドオオトカゲになった。

 これが火を噴いて高速で向かってくるなんて、たいした瞬間、生をあきらめて動けなくなる自信がある。

 そんな上位の魔物と戦うなんて騎士団も大変ねと考えていると、荷馬車が王宮の一角で止まった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る