幕間 闇の者たちの密談
「なぁ、イコールル? お前、なんかヘルベルト様を見る目が怖くねぇか?」
「妾が……そのように見えましたか? パンクラ」
ランこと魔王ヘルベルトが玉座の間から立ち去ったあと、ゲートキーパーの三体は未だに話を続けていた。
主がいなくなって緊張もほぐれ、場の空気も軽くなっている気がする。
「ボクにもそう見えたのです」
「ディーテフロンまで……」
いつも冷静なイコールルが普段と違うのなら、周りが気にするのも仕方がない。
それとなまじトップクラスの魔力があるため、一度何かで感情が爆発したら、無限迷宮リバベールが破壊されて〝無迷宮〟にでもなりかねない。
「もしかしてイコールルは誇りあるゲートキーパーの座を、元は動物風情であるペットに任せるのが不服だったりしたのか?」
そのパンクラの問いに対して、イコールルは首を横に振った。
「いえ、それは違います。ヘルベルト様のペットには敬意を示しています。いくら妾たちゲートキーパーに及ばないとはいえ、ヘルベルト様はただの動物を元にしてペットをいくらでも作れるのです。あれほど凶悪で恐ろしい軍団スキルは見たことがありません」
テイムスキルは倫理観を無視して効率よく使ってしまえば、いとも容易く世界を征服できるような軍団を作れてしまうだろう。
魔王に相応しい禍々しいスキルといえる。
「じゃあ、なぜヘルベルト様をものすっごい目で見ていたのです? 尋常ではないのです」
これには参謀であるディーテフロンも智慧が及ばず首を傾げた。
「それは……あの……ですね……。妾にはそんな気は毛頭なかったのですが、ただヘルベルト様のステキなお姿に見惚れてしまって……つい凝視を……」
「それなら仕方がないのです。ヘルベルト様は格好良く、逞しく、男らしく……って、アレ? でも、今の姿は若い女性で――」
「そう! 今のヘルベルト様は可愛らしく、花のようで、女らしくステキですッッ!!」
突然、イコールルは絶叫に近い音量で話し始めた。
興奮気味で何やら早口だ。
「闇夜を千夜束ねても敵わない、黒く美しい
「何かブツブツ言い始めて怖いぜ……」
「とにかく、今のヘルベルト様はサイコーなんですよ!!
その言葉に、パンクラとディーテフロンは顔を見合わせた。
言葉としてはわかるはずなのだが、何を言っているのかがわからない。
「つ、つまり、どういうことだぜ……?」
「たしかに元々の男性であるヘルベルト様もステキでした。でも、それよりも女の子になってしまって、魅力がさらに上がったということです!」
さすがのパンクラも気圧されて『ひっ』と軽い悲鳴をあげてしまっている。
ディーテフロンは何とか思考を放棄せずに頭脳をフル回転させて、ある結論に辿り着いた。
「も、もしかして……イコールルは女の子の方が好きなのです……?」
「最初からそう言っているじゃありませんか!」
「「えぇ~……?」」
あの異様なテンションで感じ取れというのは無理だという抗議の視線をはね除け、イコールルが話を続ける。
「もちろん、女の子が好きというのはありますが、それはヘルベルト様だけに対してです。普段は血を吸うときに女の子の方がいいかな程度ですよ。本当に」
「そ、そうなのですか……微妙にどうでもいい情報も一緒に得てしまったのです……」
引き気味のパンクラとディーテフロンを見て、イコールルはムッとした表情を見せた。
「じゃあ、逆に聞きますが、おふたりはヘルベルト様が好きですか? 愛していますか?」
「そ、そりゃあ……まぁ……ちょっと照れくさいけど……」
「もちろん、ボクも忠誠を誓うのはヘルベルト様だけなのです」
イコールルはニンマリと微笑んで勝ち誇った。
「ほら、妾と一緒! 女の子であるヘルベルト様を愛している!」
そういう言われ方をすると反論できない二体は、呆れながらも肯定するしかなかった。
――こうして、ランの知らないところで『女の子同士でもいいよね』という常識が無限迷宮リバベール内に広がったとか、いないとか。
――――
あとがき
イケメンからの好意だけではなく、ついに女性陣からも狙われ始めたラン……!
隕石も迫ってきているし、いったいどうなってしまうのか。
次回からは新キャラも登場の三章『隕石! 阻止! ラン!』です。
お楽しみに!
(あとまだ一度もランキングに載せて試すことができていないので、ブクマや評価などしてくれると嬉しいです)
面白い!
続きが気になる……。
作者がんばれー。
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