断水

9月はいつになく断水が多かった。月初と月末に。以前から断水のお知らせをもらっていたけど、記憶がどこか旅に出ていたようだ。



9月初旬のある日、朝、お皿を洗っていると水の出が悪くなった。誰かシャワー使いだした?とイラっとしつつも、まあ、しょうがないかと思って諦めた。しばらくすると家族が、「水が出ない。」と言っている。思い出した。今日は断水の日。いつもだったら、湯船に水はって、鍋やヤカンに水入れてと準備していたのに、何もしていない。家の中で大騒ぎが始まる。「トイレどうするの?」「風呂場でやればいいんじゃない?」「流れないじゃん。」「手洗いはどうする?」私は内心焦りながらも、落ち着いているように見せかけて、「トイレは近くのコンビニに借りに行こう。」と提案した。風呂場でやるって誰が掃除すんじゃいと思いながら。




何とか午前中は持ち堪えて、お昼になった。短縮授業の厨二病君が帰ってきたので、「コンビニ行こう。」と誘った。「一人で行ってきて。」と言うから、「〇ちゃんをトイレに連れて行かないといけないから、一緒に行くんだよ。」と言ったら、「赤ちゃんみたいな言い方するな!」と怒られた。なんとか説得に成功し、コンビニへ。お店へのお礼も兼ねてジュースやらお弁当やら色々買い込んできた。夕方まで何とか持ち堪えて、ホッとした。



今回は2回目。私、また記憶が旅に出ていて、家族が思い出した。前回の教訓が効いたのか今度は自分たちで色々準備している。「手洗いの水はこれ。」とか「飲み水はこれ。」、「うがい用は。」とか。

断水の当日になった。今回はお昼までだから、楽勝だ。私は必殺技に出た。体のあらゆる機能をすべて停止する。そう、夢の世界へ旅立つのだ。三、四時間なんて一分くらいで終わる。二回目の断水は難なくクリアした。水も、夢の世界のおかげで一切使わなかった。「断水に勝った!」とガッツポーズしたいくらいである。



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