思い出の百貨店
昨今、百貨店が続々と閉店している。時代の流れとはいえ、とても寂しいものを感じる。
子供の頃は百貨店は楽しい場所だった。屋上には遊園地があり、おもちゃ売り場、サンリオショップ、子供服、レストラン街のファミリーレストラン、地下食堂街。特に私は屋上遊園とおもちゃ売り場、サンリオショップが好きだった。なかなか買ってもらうことは出来なかったけど、売り場に行き色々見て、サンプルで少し遊んで行く。少し見てから親の買い物の階に移動する。洋服のコーナーはあまり好きではなかった。自分の服は興味あるけど、親の試着は時間がかかって退屈さを紛らわすのが大変だった。店員さんの、商品を紙で包む技術に圧倒され、家で、買ってもらったおもちゃを同じように包み直したりして真似してみるなんて事もあった。
ファミリーレストランは何か所かあり、安い方に行く。時々、祖母が一緒の時があり、その時は高い店が選ばれる。お子様ランチを頼み、丸く固まったライスに刺さった旗にワクワクする。おまけのおもちゃにその日の特別感を感じたものだ。紙でできた飛び出す絵本みたいなちょっとした仕掛けのあるランチョンマットと、爪楊枝で出来た旗を持って帰りたかった。店員さんに「もらっても良いですか?」と聞いた時の店員さんの「どうぞ。」の笑顔。大事にバッグにしまう。祖母が一緒の日はおもちゃを買ってもらう事が出来たので、特にその日は嬉しかったのを憶えている。
大人になってからはデパ地下が好きだった。商品券をもらう機会が結構あったので、月末の金欠の時やお祝い事、クリスマスなどのイベント、子供の行事などでもお世話になった。デパ地下のお惣菜は凝った味付けだったりして、やはり美味しい。お菓子も美味しい。今は近所の百貨店が無くなってしまったので、デパ地下ロスだ。
百貨店最後の日に行ったことがある。今までになく、駅のラッシュ時のような混み様で、商品があっという間に売り切れて、いつもこのくらいだったら無くならなかったのになと思った。夕方の館内放送の音楽がまた物悲しさを誘う。今までの思い出が走馬灯の様に流れて、涙が出そうになった。写真を撮りまくっている人たち。馴染みの店員さんと名残惜しそうに挨拶しているお年寄り。閉店時の店長挨拶の時は、泣いているお客さんが結構いた。消えることのなかった屋号の灯りが消え、店の電気が落ちる。みんな何度も何度も振り返りながら、その場をあとにした。
楽しい思い出をありがとう。
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