第四百十五話 子供達について聞く時

「情報源が不明?エリー、それは……」

「どうやら事実みたいよ。

まあ、そんな眉唾ものの情報をどうして信用する気になったのか、

その点は正直気掛かりだけど」

「いえ、こちら側が劣勢である以上、

例え疑わしい情報であったとしても調べてみる意味はあると思いまして……」

「確かにその考えにも一理あるとは思いますよ。

しかしその情報を僕達に共有しなかったのはどういう意図があるのですか?」

「確かに、儂にも言えぬ理由があるというのであれば聞かせてもらおう」


エリーの能力により、司令官が嘘をついている訳では無いことは分かるが、

それは司令官に対する疑念を更に深めることになる。

この問いかけに対し司令官は


「その理由は……」


とどもった話し方をするがそこでエリーが


「あなたに聞いているとまどろっこしいから私が代わりに言いましょうか?

司令官は知っていたのでしょう、

あの場所にルルという存在が封印されている事を」


と衝撃的な発言をする。

その話を聞いた周囲の面々は、

今回の一件で救出に向かっていた兵士を除き困惑した表情を浮かべる。


「……ええ、知っていました。

あの施設は元々は我々のものだったのですから。

まあ我々が建てたわけではなく、昔の大戦時に建造された場所を

そのまま使っているというだけなのですが」

「その件は私も知っているが、それでも今回ルルという存在が封印されているのは、

初めて知ったぞ」

「実を言うと私も何が封印されているのか、

という点については把握していなかったのです。

ですがピープルに制圧される少し前にあの部屋の存在を知り、

そこに何かが有るのではないかという予測はずっとしていました」

「だから子供達が連れてこられた事について知った時、

そこに何かが有ると思って救出を命じたと?」

「ええ、それに子供達を救出するのは、

ここに居る兵士達たっての希望でもありましたから」


問い詰められた司令官が自白すると、

長老や高御は更に追求し、司令官は更に話を続ける。

だがその言葉を聞いた周囲の兵士が明らかに同意した表情を浮かべている辺り、

兵士達が子供獣人の救出を願っていたのは本当なのだろう。


「そもそもあの子供達は一体何があってあの場所に?」

「それは他でもない私共の失態です。

ピープルに拠点を制圧された際に連れ去りを許してしまいました」


青が子供達について問いかけると司令はこう返答する。

その表情はこれまでに無い程に神妙な顔つきであった。

恐らくは強い悔恨を抱いているのだろう。

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