第三百八十七話 通路を潜る時

「今のお言葉から考えると大体この辺りですね」


長老の発言を聞き、明帝はそのエリアをすぐさま特定する。

その場所を特定した端末の画像を見たセリアンは


「通信機越しなので長老に確認を取る事は出来ませんが、

確かにこの辺りだと思います。

他に該当しそうな場所はありませんから」


と言葉を続け、明帝の予測が的中している可能性は高いと告げる。


「可能な限り早くこの世界にも衛生を打ち上げたいですね」


現状の通信手段に不満があるのか、明帝がふとこう呟く。


「失礼ですが、その衛星というのは?」


聞き慣れない言葉であったのか、司令官と長老が同時に質問してくる。

セリアンとスロープも困惑した表情をしており、

どうやら彼等の世界では衛星という言葉は存在していない様だ。


「それを知りたければ今回の作戦を成功させてからですよ」


衛星という言葉への引っ掛かりを見た明帝は

此処でその返答について焦らす。


「じゃあ、そろそろ私達も行きましょうか」


明帝の言葉に続けてパウもこう話し、

手元から何かの機械を取り出す。


「それは?」

「通路を開く機器よ。

今此処には任意で通路を開ける人がいないからね」

「そう言われればそうですね、だから機器で代用すると?」

「ええ、使い捨てと言う訳ではないけど、

装置を遮断しない限り通路は開きっぱなしになるから

万が一作戦に失敗した場合、此処が攻め込まれることになる」

「つまり本部も危険にさらされるというわけですね。

我々にも相応のリスクが有るというわけですか」


セリアンが機械について質問するとパウはこう解説し、

機械を用いる覚悟とリスクについて述べる。


「だとすると作戦の最中にも

此方が襲撃されるリスクも有るのでは?」

「ええ、だから此方にも迎撃する戦力は必要になるわ」


パウがこう告げると同時に装置は起動し、

目的地への通路が開かれる。


「さて、俺達も行くぞ」

「あ、はい!!」

「じゃ、長老、行ってくるぜ」


クウォスがセリアンとスロープに呼びかけると、

二人はハッとした様子で通路の中に入っていく。


「二人共、無事で帰ってきてくれ」

「では、我々の兵士も向かわせます」


長老が二人の身を案じた発言をした直後、

司令官は兵士を送る事を告げる。

その言葉の直後に事実兵士は後をついて通路の中に入っていく。


「しかし、異世界の通路に突入して大丈夫なのでしょうか?」

「セリアンとスロープが入っていった所を見る限りでは問題ないだろう。

それよりも念の為迎撃準備を整えるぞ」


兵士の心配を余所に司令官は警戒を強める。

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