第三百八十四話 何かに食い入る時

「君達も初めて見るって事はそれだけ外部に見せたくない施設なのかしら?」

「どうだろうな、あの司令官と長老及び俺達は

特別親しいって訳じゃないからな。

特に知らない事があっても不思議じゃないぜ」


パウがふと呟くとスロープはこう呟く。

その言葉を待つまでもなく、司令官と長老及びセリアン、スロープの仲は

そこまで良くはない事は既に分かっていた。

だがこうしてスロープが明言したことにより、それはより確信に変わる。


「この構造から考えると最も適しているのは、

転移通路を地下に繋げて一気に突入し、

そのまま上に駆け上がって一気に制圧するというパターンだね」

「ああ、明帝が俺と同じ事を考えるとなると

他に妙案が無いんだろうな」


明帝が具体的な動き方を口にすると

クウォスは自分も同じ事を考えていると告げる。

その口調は何処かバカにしているようにも思えるが、クウォスの口調から

そうではない事は明らかであった。


「ああ、これだけ広い施設だといちいち兵士を倒していては

他の場所から敵を呼び寄せられかねない。

かといっていきなり司令室に飛び込むと、

返り討ちにされるリスクも有る。

その点を考慮すると一旦少し離れた所に出現し、

そのまま司令室に向かっていくというのが最も得策だよ」


明帝が特にそれを気にする事も無くこう告げた事もそれを裏付けていた。


「となると左右の部隊が可能な限り入口付近の戦力をおびき出してほしいですね」

「うん、地下エリアは入り口と比較的近い、

通路を察知して入り口に待機していた部隊が

内部に引き返してくるなんて事になれば目も当てられないことになる」


青と里愛が告げた発言により、陽動がどれだけ行えるかで

今回の作戦の難易度、果ては成否が分かれるという事が想像出来た。


「さて、施設のデータはこのくらいでいいかな。

他のデータも色々入手しないとわざわざ此処に来た意味が無いからね」


明帝がそう告げると他の面々も機器を操作し、データを集めていく。

それは片っ端から調べており、

手当たり次第にやっているのが明らかであった。


だがその最中、あるデータを見た青がふと目を止める。


「え?これは……」


ふと目をやった青は何故かそれに食い入るようにじっと見つめ続ける。

他の面々はそんな青の様子に対して全く気付いていないようだ。


「作戦準備が完了しました!!

各員は持ち場について下さい」


その直後に司令官の声が放送で施設内に響き渡る。

それはデータルームに置いても例外ではなかった。


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