第二百六十七話 アデルが宣言する時

アデルの言葉通り、星間連合の部隊は全滅した訳ではなかった。

誘爆の中を掻い潜り、地球側部隊の母艦へと接近しようとする数機が視認出来た。


「くっ、こいつら母艦に特攻を仕掛けるつもり!?」

「その可能性は十分に有り得ます」


あまりに躊躇いが無い突進に瑠璃花が思わずこう呟くとアデルはその言葉を肯定する。

不意を突かれた形になった地球側部隊の面々が対応に遅れを取る中、アデルは特攻をかけようとする星間連合部隊に接近し


「お前達の標的は僕だろう!!地球の人々に手出しはさせない」


と声高々に宣言する。

その宣言を聞いた星間連合の兵士は


「この声…先程の動きからもしやと思っていたが、やはりそれに乗っているのか!!アデル・マルティー!!」

「その通りだよ、その言葉遣いから考えると僕が乗っているとは確信していなかったみたいだね、あれだけ分り易く見せてあげたのに」

「ええい、お前には何度も辛酸を舐めさせられたからな、上司の血族と言う事で本星では甘んじていたが、此処では……」

「標的を前に無駄口、それが君達の敗因だよ!!」


とアデルと激しい口論を交わす。

兵士の罵倒は勿論だがそれに対するアデルの反論も何時もの彼からは想像出来ない程に強い言葉であり、双方に強い怒りが渦巻いている事が伺える。

その言葉の強さは相が


「私達も……加勢した方が良いのでしょうか?」


と一瞬関わりたくないとも解釈出来るような口調で発言する程である。

それを聞いた瑠璃花は


「少し様子を見たいわね……双方共に火が付いている様な印象だわ」


と少し様子を見る様に告げる。


「この場に高御様がいらっしゃったら絶対に出来ない選択肢ですけどね……」


亜矢もこう言葉を続ける。

その場に居た全員の心理は


「今だけは高御がこの場に居合わせていなくて良かった」


であった。


「新型に乗り込んだ所でお前の癖は!!」

「それが敗因だと先程いったでしょう、行くよ、サーディラ・アンファート。

ユナイテッド・フラッシャー」


兵士が先に動きを見せ、アデルに接近しようとするがアデルはそれを完全に予測していたのか両翼から無数のビームと非実体スピアを出現させ、ビームで周辺の星間連合兵器を撃墜しスピアで目の前に居るエンブレム塗装の兵器のあちこちを貫く。

だが貫かれた兵器は爆発はせず、その場で動きを止める。


「ええい!!その様な華奢な機体にこの様な武装があるとは……」

「敵を侮るその悪癖、未だに健在みたいだね。

皆、此奴の身柄を拘束して!!」


アデルの指示により、兵器に側近の兵士が乗り込む機体が接近していく。

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