第二百十九話 二人を迎え入れる時

「部屋には僕が案内するよ、他の皆も今日はそれぞれ戻って休んで欲しい。

アデル君達もそれで構わない?」

「ええ、僕達が出撃した訳ではありませんが今回の一件で彼等の言うピープルと言う存在が場合によってはマルティーの驚異になる可能性も大いに有り得ると認識しました。

僕達の方でも備えを進めておきます」


二人の緩んだ顔を見たのか高御が自ら案内役を買って出る事を告げ、アデル達にも今日は休息を取る事を勧めるとアデルはそれに同意する。

それに同意が取れた事を確認した後、一同は七宝の部屋を後にしてそれぞれの部屋に戻っていく。

そして最後に高御とセリアン、スロープは通路を移動し突き当りにある一つの部屋に到着する。


「一つの部屋は此処になるよ、もう一つは……」

「いや、俺達の部屋は一つで十分だ」


高御が部屋の前に到着し、もう一つ部屋がある事を告げようとするがスロープは部屋は一つで十分であると告げる。


「ええ、私達は元々二人で一つの戦いをする存在、部屋が同じなのはこれまでもそうでしたから」


セリアンもそれに同意する辺り、どうやら彼等は今までずっと共に行動して来た様だ。

それを聞いた高御は


「なら部屋の扉を開けるよ」


と言って部屋の扉に手を掛けてその中に二人を案内する。

部屋の中は一人用にしては広い印象があり、寝具も大きめの物が設置されていた。

その様子は初めから二人共同じ部屋を希望している事に気付いていた様にも思える。

更に室内には機器やESB構成員に貸与されている端末も置かれており、至れり尽くせりとすら言える状態であった。


「客間だから独自の鍵は用意出きないけど室内にある物は自由に使ってくれて構わない。

何かあったら連絡するからそれまでは自由に過ごしておいて」


此処までを告げると高御は部屋を後にしていく。

それを確認したセリアンは


「私達の為に此処までやってくれるなんて……ね……」


と言うとその直後に部屋に用意されていた寝具の上に倒れ込んでしまう。


「そうだ……な……」


その言葉に続けたスロープも同じくこう呟いた後に寝具に倒れ込んでしまう。

そしてそのまま二人は寝息を立てて深い眠りへと落ちていく。

一方その頃、此処とは全く違う場所において


「妖術のみであっても異世界への扉を開く事が出来たか……」

「ええ、しかしこれは逆に言えば妖術通路がより不安定になったとも言えます。

他の世界に侵攻するにしてもこの世界の制圧に支障をきたすようでは……」

「ならば両方を並行して……と言いたい所だがそれには戦力が必要だからな」


と言う不穏な会話が行われていた。

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