第二百十五話 二人が選択をする時
「協力者として紹介出来る……事が私達にとって何の利点があるのですか?
只紹介すると言うだけでは駄目なのですか?」
首を傾げて少し間を開けてセリアンが問いかけてくる、どうやら協力者として紹介される事の利点、或いはそうしない事による不利益がもう一つ理解出来ていない様だ。
それを聞いた明帝は
「少なくとも現時点では全くの偶然であるとはいえ、異形が僕達の世界を襲撃してきたのは事実だ。
実際被害も出ている、もしそこで異形と関連性がある、或いはそれを示唆する存在が現れたらどんな事になる?」
「そう言われれば確かに……俺達でもそいつらの事を勘繰るだろうな……」
「そう、だけど異形の世界でそれに立ち向かっている協力者として紹介しておけば少なくとも無意味に疑ってくる可能性を抑える事は出来るって訳だよ」
「無論、それでも疑いたがる人物は居るけどね……だけどそれをゼロには出来なくても減らす事が出来るのならそれは大いに意味がある事よ」
「勿論協力してもらうとは言っても僕達の戦乱に手を貸せというのではない、只形式上はそう言う事にしておいてほしいと言うだけだ」
セリアンの問いかけに対し明帝を初めその場にいた面々が説明を行う。
その物腰は柔らかであり、確かに強制していると言う訳ではない、だがスロープの表情はまだ決めあぐねている様子であった。
「そうは言ってもよ……」
「スロープ……彼等の要求を受け入れましょう?」
そんなスロープに対しセリアンは要求を受け入れる事を提案する。
「セリアン?だけどよ……」
「どの道私達だけで元の世界に戻る手段が無い以上、その手段を確保するのに協力してくれる方は居た方が良いわ。
それにピープルがもし此方の世界に対しても侵攻する意思を見せたりしたら……」
「俺達にとっても無関係では居られねえって事か……分かった、此処はこいつらの提案を受け入れるぜ」
それでも尚納得が……と言う表情と声を見せるスロープに対しセリアンはこの問題が既に一つの世界の問題ではなくなっていると告げる。
それを聞いたスロープは漸く納得がいったのか提案を受け入れる事を決める。
そしてそのままセリアンと顔を合わせてからミスティの方へとその顔を向け
「皆さんの提案を受け入れさせて頂きます」
そう告げると深々と頭を下げる。
ぞんざいな言動が目立つスロープだがこうした礼節はわきまえているようだ。
その言葉を聞いたミスティは
「此方こそ感謝するわ、そして二人が一刻も早く元の世界に戻れる様に尽力する」
と返答し、改めて協力する事を告げる。
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