第二百三話 獣人が水晶に触れる時

その中には高御や神楽達に力を与えた謎の水晶が置かれていた。


「あれが……奴等の力の源……」

「かも知れないけど違うかも知れない、だけどあれを手に出来れば……」


二体の獣人はこう呟くと水晶に触れようとする、だがその直後に室内に転移通路が出現し、そこから高御達が現れる。


「ちっ、奴等も移動してきやがったか」

「ええ、急ぎましょう」

「その水晶に触れては駄目!!」


獣人に追いついた高御達は獣人に呼びかけるがこんな所まで来た獣人がその言葉に耳を貸す筈も無く二体の獣人は水晶に手を触れてしまう。

するとその瞬間水晶が激しく輝き始める。


「水晶の輝きが!?どうして……」

「あの水晶に触れたからでは無いのですか」

「僕達があの水晶から力を受け取った後、青達他の面々が触れてもあの水晶が何らかの反応を見せる事は無かったんだ」


水晶が輝き出した事に困惑した声を上げるミスティにアデルが問いかけるが、それに返答を行ったのはミスティではなく神楽であった。

ミスティが動揺、困惑する程の出来事なのだろう。


「ああっ、この力が……」

「この力があれば……」


二体の獣人の言葉から獣人に何らかの力が与えられているのは明白であった。

それを証明するかのように紫色の靄のような物を纏い始め且つ巨大化していく。


「ああっ……ううっ……あああっ……」


だがその直後に二体の獣人が苦しむ様な動作を見せ始める。

その表情は険しく、明らかに異常な印象を受ける。


「あの獣人達の様子が可笑しいです!!」

「七宝、直ぐに……」

「既に分析開始してます、ですが全く前例が無い状態になっています」


アデルが獣人の様子を指摘するまでもなく七宝は分析を行っていた、だがそれでも何が起こっているかは分からないという。

その直後に獣人の片割れが目を激しく光らせ、その腕を払って衝撃波を放ってくる。


「神楽!!」

「分かってる、空間創造」


明帝が叫ぶと神楽は直様能力を発動させたのか辺り一面が帳の様な黒い空間に包まれる。

その黒い空間は衝撃波を吸収し被害を抑えるがその直後に神楽の表情に苦痛が浮かぶ。


「神楽、大丈夫?」

「ああ、何とかね……だけどあれを放置する訳には行かない」

「この空間を維持する必要がある以上神楽はこのまま居てもらうしか無い、僕達が止めるよ!!」


エリーが神楽を心配する声掛けを行う一方、高御達は獣人達に対して交戦体制を取る。

獣人もそれに気付いたのか、交戦体制を取り、敵を剥き出しにした表情を浮かべる。

そしてそのまま腕を振り翳す。

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