第百九十九話 新たな何かが現れる時

「ガアアアアアアッ」


出現した異形はそれと粗同時に荒々しい雄叫びを上げ、目の前に居たアデルに爪を振り下ろしてくる。


「アデル君!!」

「そんな大振りな動きではね」


異形の不意の攻撃を受けた様に見えたのか神楽はアデルを心配する声を上げる、だがアデルは楽々とその攻撃を躱し空振りした爪は地面に突き刺さる。

その為に一瞬動けなくなった異形に対しアデルはすかさず銃を構えその目を狙って弾丸を放つ。

その狙いは正確であり両方の目を確実に射抜く、だがそこから血が滴る様子は無く直様元通りになってしまう。


「目を射抜いたのに再生した……」

「どうやら細胞の再生能力も高いようね、明らかに今までの異形より上位の存在だわ」


アデルが少し困惑した様子を見せるとその背後から七宝が今の状況をこう解説する。


「七宝、渦の解析は終わったの?」

「ええ、だから早く渦の閉鎖を……」


七宝が異形について解説した事を受けて神楽は七宝に対し通路の解析は終わったのかどうかを問いかける。

それだけ七宝には渦の解析に専念してほしいと言う事なのだろう。

それに対し七宝が渦の解析は終わったと返答するがその直後に再び渦の中から何かが出現する。


「まだ異形が!?先程まで熱源反応は無かったのに……」


突然の何かの出現に七宝が困惑した様子を見せる辺り、先程までその存在は確認出来て居なかったのだろう。

そしてその何かが出現する。


「あれは!?」


だがそこから出現したのは明らかにこれまで出現してきた異形とは違う存在であった。

出現したのは白い髪に熊のような手足、猿のような尻尾を持つ人間に近い存在、いわば獣人のような存在である。

それが二人同時に渦の中より現れたのだ。


「う……ここは……」


獣人の片割れが顔を押さえながら起き上がり周囲を見渡すと先に出現していた異形はアデルからその獣人へと攻撃対象を切り替えたのか直様爪を振り下ろす。


「危ない!!」


アデルはそう叫ぶと獣人の爪に対して手に持っていた銃弾を連射し何とかその攻撃を止めようとする。

だが爪が堅いのか銃弾で貫通させる事が出来ない。


「アデル君、爪を直接狙っても駄目、爪と指の付け根を攻撃して!!」


必死に攻撃するアデルに対し七宝がこう助言らしき声を送る。

するとアデルは


「七宝さん……分かりました!!」


と言ってその助言を聞き入れ直様狙いを爪と指の付け根部分へと変える。

すると助言通り効果があったのか異形はたじろぎ、獣人へと振り下ろそうとしていた爪を止める。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る