第百六十六話 各国が物資を配付する時(後編)
「ええ、私はESBのメンバーであり、又此処の国民でも有るの」
ニーナと名乗る少女の発言により職員は少しの間沈黙する、いやせざるを得なかった。
目の前の少女がESBで有ると言う事は直ぐには受け入れられなかったのだ。
「何故、貴方の様な幼子がESBに……」
「別段不思議な事は無いでしょう?皆さんの代表と会談したエリー様はおばさんでしたか?」
「た、確かに会談に来られていたESB側の代表は何れも若い印象は受けましたが、それでもこれは……」
「確かに私の様な存在が戦場に出ているのは……と思うかもしれませんね、しかしそこまで不思議な事では無いのでは?特にこの地域においては」
職員が動揺しながらも何とか言葉を発していく一方でエリーはそれに対しあっけらかんとしたような、しかし的を得た様な返答をしていく。
「不思議な事では無いと言うのが今此処で起こっている沈黙の配布と関連している、そう考えれば辻褄が合いませんか?」
とエリーの側に立っていた少年も発言しエリーを援護射撃する。
その言葉について職員は
「確かにそうかも知れませんが……しかしそれでも何処か……」
とやはり動揺を隠しきれない様子だ。
それを見た少年は
「因みに自分もニーナと同様の立場です。
名前は川上達、どうかお見知りおきを」
と良い、自身の証明書をニーナと同様に手に持ちながら職員に見せる。
それを確認した職員は
「は、はい……」
とただ驚くだけであった。
「一寸そこ!!何油売ってるんだ、配布担当の職員は只でさえ人手が足りないと言うのに!!」
上司らしき人物に檄を飛ばされ、ニーナと達の対応をしていた職員はその場から離れて持ち場に戻っていく。
「やれやれ、何時も何処でもサボり魔は一定数居るものだね」
「今回の場合、それを誘発したのは私達何だからある意味仕方ないんじゃない?」
「まあ、それもそうだけど。
それよりも俺達の証明書、見せちゃったけど大丈夫か?」
「高御様は遅かれ早かれ判明する事実だから公表する事は別に問題ないとはおっしゃってくれてたけど、それでも休暇中に訪れた状況で明かしたのは流石に不味かったかもね」
「大丈夫よ、そこは既にお許しが出ているから」
ニーナと達が会話していると突然通信機からエリーの声が聞こえてくる。
「え!?エリー様?一体どうして……」
「本部に戻った後今回の一件について報告してから世界の現状をモニターしていたら貴方達が映ったのよ。
まあ、明かしたのは問題ないけど……私はおばさんなの?」
突然入ってきたエリーの通信機越しの声は静かな怒りが感じられた……
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