第百三十二話 不安が口に出る時

「ええ、先程の映像に出現した異形の身柄を拘束し地下牢に投獄してある。

この報告が終わった後、七宝も交えて異形の分析を行い、今後の対策を立てるつもりだよ」


高御は淡々とそう言ってのけるが、アデルとその側近達はその淡々とした物言いに言い知れぬ不安を覚える。


「身柄を拘束出来たとは言っても大人しくしているわけではないのでしょう?

それを調べる等並大抵の事では無いのでは?」

「確かに七宝が居なければ少し調べるだけでも命懸けだろうね、だけどそんな調べるのも命懸けな存在を生み出している連中がいる可能性もあるんだ、決して放置は出来ない」


次にアデルが口にした言葉、それは現在アデルが内心で抱いている不安を外に出す為の言葉であった。

それに対し高御は警戒心は抱いている事、然しかと言って放置も出来ないと言う事を告げる。


「それはそうですが……それでも不安です」

「流石にこの本部で死傷者を出させはしないわ、最も今現在も暴れまわっているという点は特筆に値する存在なのかも知れないけど」


アデルが明確に不安である事を口にすると次はミスティがこう返答し、この本部内で死者が出る様な事にはさせないと語る。

その顔や口調から実際そうなのだろう、特に口調からはそう思わせるに十分な強い決意を感じさせる。


「ああ、既に異形が出現してから半日以上が経つ、にも関わらず一向にその暴れ方には衰えが見られない。

少なくとも単なる野生動物ではないというのは明らかでしょう」

「ええ、これは正真正銘、新たな脅威でしょうね。

場合によっては星間連合の偵察部隊よりも異形への対処を優先した方が良いのかも知れない」

「星間連合よりも異形への対処の方が優先ですか?しかし……」


明帝とエリーの発言からアデルの側近は星間連合への対応が後回しになると思ったのかそこに口を挟もうとする、だがそこにアデルが


「いや、構わないさ。

あの異形が星間連合の兵士にも襲いかかり、且つ苦戦させたのだとすればそれを放置しておく事は危険過ぎる。

それに万が一ワープゲートを潜って、或いはワープゲートと繋がった何らかの手段が作用してマルティー本星に繋がるなんて事になれば本星の方にも危険が及ぶ可能性だってあるんだ」


と兵士を諭す。


「しかし皇子……」

「星間連合が送り込んできているのはあくまで偵察部隊だ、少なくともその人数で大規模な大立ち回りをしてくるとは思えない。

仮にワープゲートを開いて増援を送り込んでくるにしても直ぐには来ないだろう。

それよりも未知の脅威の方が問題だよ」


兵士はそれでも食い下がろうとするがアデルが更に諭した事で言葉を中断する。

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