第百二十九話 観念する時

「……分かった、そちらの指示に従いましょう」


少し返答に間をもたせるものの、部隊長と呼ばれている人物は観念した表情と声でこう呟く。

その様子は何処か項垂れている様にも諦めている様にも見える。


「た、隊長、それは……」


周囲の人物の一人が部隊長に何か言いたげな様子を見せるがその直後に別の人物が


「あの異形にすら翻弄された俺達がそれを軽々と拘束したこの少年に勝てると思うのか?隊長はその辺りも考えているんだ」


とその人物に対して諭す様にして話す。

その言葉にその人物だけでなく周囲に居た全ての人物が言葉にこそしないもののその評定が暗く沈んだ物に変わった事がその心境を物語っていた。


「さて、では付いてきて頂けますか?付いて来て頂ければ危害は加えません」

「……分かった、そうさせてもらう」


高御がそう言いながら転移通路を出現させてその中に入っていくと部隊長を先頭に移動していく。

その途中に足掻いたり抵抗したりする様子は見られず諦めている様子が見て取れる。


「さて、到着しましたよ」


高御はそう告げると通路を繋いだ先に部隊の面々を到着させる。

その直後


「お前達も捕まったのか……」


という声が何処かから聞こえてくる。

その声を聞いた部隊長が周囲を見渡すと部屋の右側に米国でミスティに身柄を拘束された部隊の構成員が居た。


「我々だけではなかったのか……身柄を拘束されたのは」

「しかも偵察部隊のTOP1・2が揃って拘束されるとはね……これは流石に本部に戻れ無い話だ」


部隊長と米国で拘束された部隊の構成員が会話を交わした直後に高御が転移通路を消滅させ


「さて、貴方達には此処に居てもらいますよ。

尚、食事については此方で用意致しますのでご安心を」


と告げる。


「おや……拘束は手荒ですが扱いは丁重なんですね」


米国で拘束された部隊の構成員がこう告げると高御は


「ミスティが貴方達をどの様に拘束したのかは現時点では僕には分かりませんが貴方達をみすみす消す気は有りませんよ。

ですが逆に自ら消させるつもりも無いと言う事はご了承下さい」


と言いその場から何処かに転移通路を開く事無く移動する。


「ワープゲートを出現させずに移動した!?一体何処に……」

「此方に動いただけですよ、皆さん」


いきなり高御の姿が消えた事に動揺する構成員達に対し、高御の声が聞こえて来る。

その声が聞こえた場所に目を向けるとそこには透明な壁で区切られた通路の先に立つ高御の姿があった。


「何時の間に?それに……」

「短距離であれば通路無しでも移動出来ます、では今回の一件を話し合う必要がありますので」


驚く構成員達に対し高御はそう告げるとその場から移動していく。

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