第九十六話 無から有を生み出す時

「施設の中も色々あって目移りするだろうけど、まずは私達に付いてきてね。

他の場所はご要望があれば後で案内するから」

「分かっていますよ、流石に初めて来た場所で勝手な事をして恥をかくというのは皇族としてマルティー全体の品位を落としかねませんから」

(いや、それ以前の問題だと思うのだけど……)


始めてくる施設に目移りしそうだと思ったのか、神楽はアデルに対し柔らかめでは有るものの釘を指す様な口調で話し、アデルがそれに返答すると高御は内心で突っ込んでいたものの口に出すのは避けた。

自身も組織のトップであるという自覚故の思いだからだろうか。

そのまま神楽に案内されるままに移動するとそこには施設内に有る広大な空間が広がっていた。

円形に広がっており、それは観客席の無い闘技場の様にも見える。


「ここは……??只何もない部屋のようですが……」

「そう、その発言はある意味正しいよ、ココはなにもない部屋。

いや、正確に言えばこれから何かを生み出す部屋だね!!」


アデルが部屋についての疑問を口にすると神楽はこうアデルに対して返答する。

だがアデルは


「何かを生み出す部屋……?」


とさらなる疑問が増えただけに終わったようだ。

その様子を見たエリーは


「アデル君が疑問に思うのも無理はないと思うわ、私達も初めはそうだったから」


とアデルの疑問に対し共感と理解を示している様に思える発言をする。

その発言を受けたのかミスティが


「さあ、頼んだわよ神楽!!」


と告げると神楽は


「はい!!」


と言って目の前に手を翳す。

すると目の前に一瞬で機動兵器が出現する。


「何もない所から機動兵器が出現した!?」

「しかもこの外見、皇子が搭乗していた機動兵器と全く同じ物です!!」


アデルとその周囲の兵士が困惑した様子を見せるが、その直後に神楽は


「それだけじゃないよ、ほら」


と言うと更に同じ機動兵器を出現させる。


「これは……一機だけなら我々が持ち込んだ物を此処に瞬間移動させただけとも思えますが、これだけの数を……」

「皇子が乗ってきた上位機種は此処までの数はそもそも用意出来ていなかった筈です、それがどうして此処に……しかも一瞬で……」


兵士達が更に困惑した声を上げると神楽は


「さっきも言ったけど、生み出したんだよ。

今此処で私が」


困惑するアデル達に対し、神楽はそう告げる。

それを聞いた神楽は


「……つまり、貴方達にはこの様な芸当を可能とする力があるという訳なのですね」


という絞り出した様な解答を行う。

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