第九十一話 託される時

「皆さん……」


高御達の発言が予想の斜め上を行く物だったのか、アデルは困惑した声を引き続きだしているものの、その中には少々であっても嬉しさが感じられる。


「只、先程も言った様にまずは此方の戦力を整える事が先決だ、戦力が整わない内に向かっても全滅がオチだからね。

せめてそれが終わるまでの間は君を送り出した面々に抑えておいてもらうしか無い」

「彼等ならきっとそうしてくれます、僕はそう信じています」


高御が今後の方針を告げるとアデルははっきりとそう断言する。

その顔に迷いは無く、既に覚悟を決めているようだ。

そしてその中には間違いなく希望も感じられた。


「では、今日の所はお休みになった方が宜しいのでは無いかと思います。

長旅で疲労されているでしょうから」

「お心遣いに感謝します、ですがお休みの前に皆さんにお渡ししておきたい物があります」


ミスティが彼等を労う言葉をかけるとアデルはそれに対して感謝の意を示しつつもその前に渡す物があると告げる。


「渡す物?一体何?」


パウがアデルに聞くとアデルは


「それをお渡しする為に皆さん、私に付いてきて頂けますか?」


と聞くと入り口の方へと顔を向け、その足を進めていく。

どうやら渡したい物と言うのは今ココにあるという訳ではない様だ。


「分かった、付いていくよ。

皆もそれで良いね」


高御がそう告げるとその場に居た全員が首を縦に振り、足を入り口に向けて進め始める。

そのままアデルが向かった先は先程の作戦でパウ達が使用していた移動戦艦、更に言えばその中に格納されていたアデル達が乗って来た機動兵器のある場所であった。

そこまで一同を連れてきたアデルはそのまま機動兵器に乗り込むとコクピット内で何かを探し始める。


「ええと、確かこの辺りに……あった!!」


そう言って何かを見つけ出したアデルは思わずなのか故意なのか分からない大きさの声を上げる。


「何があったの?この兵器の中に」


神楽が問いかけるとアデルが


「此方が皆さんにお渡ししたかった物です」


と告げてその探しだした物を見せる。


「これは?」


一同がアデルが差し出した物を覗き込んだ後、それについて明帝が問いかける。

それは何かの通信端末のように見えた。


「現在までに入手出来ているベルマーの、そして我がマルティー星の技術のデータ全てです。

皆さんに協力して頂く以上、この位はさせて頂かないと。

後、僕達が乗ってきた兵器についても自由に調べていただいて構いません」


端末を差し出しながらアデルはこう返答する。

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