第六十五話 訪れた理由を語る時
「その詳細を調べる為には施設に近付く、更に言えば中に入る必要がある、そういう事ですか?」
「ええ、ですが現状それを行うのはリスクが高すぎるでしょう。
先程の怪物が施設を警護すると発言していました、その事を踏まえると現在施設には防衛戦力が集まっていると考えてまず間違いないでしょう。
そう考えると今近付いたら私達の身柄が確保されてしまう可能性が高いです」
「それじゃこのまま手を引くしかねえってことか、くそっ、タイミングが悪い」
「仕方ありません、此処まで来られただけでもまだマシなのですから」
車内で一同は色々と話し合い、その結果施設への接近は断念せざるを得ないという結論に行き着く。
一方その頃神楽は勇矢を連れて地元住民達の元に戻っていた。
「此方に侵攻してきた連中の身柄は全て彼等に引き渡しました。
後は勇矢さんが身柄を拘束しているその怪物のみです」
住民の代表者らしき獣人がそう話しかける、どうやら口調から察するに彼等も勇矢の事は知っているようだ。
それを聞いたアルタイルは体を光らせ、その体を勇矢の姿に戻していく。
「で、身柄を拘束した連中について何か報告は有りましたか?」
「いいえ、どうやら詳細については彼等も良く分かっていない様です。
今回使用された転移魔術が誰の手によって齎されたのかも分からないと、最もこの辺りは徐々に明らかになってくると思いますが」
「転移魔術は元々奴等が用いていたもの、此方の拘束の手を逃れて何者かが未だに持ち込んでいたとしても不思議ではありませんね」
「神楽さんの心配通り、転移魔術を用いている存在が居ると思われますが、現状では検討も付いていないというのが現状です。
最も、黙って只待っているという訳では無いと思いますが」
現地の住民と神楽、勇矢が会話を行い現状を整理する。
「ところで勇矢さんは一体どうして此処に?この地域は貴方の出身地、故郷であると聞いた事はありますが、それだけの理由で此処を訪れていたのですか?」
「う~ん、確かにそれだけじゃないけど。
まあ、偶の里帰りでもしていたっていうのは事実だしその辺りでも間違いじゃないかな」
代表者が問いかけている辺り、彼等も勇矢が此処に来た事を不思議に思っているようだ。
それに対して勇矢はどこかはぐらかしたような回答をする、何か知られたくない事でもあるのだろうか?
「さて、そろそろ戻らないといけませんね、勇矢も来てくれる?」
「ええ、どの道僕もそろそろ戻らないといけませんから」
そう告げると勇矢が目の前に手を翳し、紫色の渦を出現させる。
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