第五十三話 言葉の真意を探る時

女性にそう問いかけられた一同は言葉に詰まる。

当然正直に自分達の事を伝える訳にはいかず、かと言ってこのまま黙ってしまうのも不自然に思われてしまうからだ。


だがその女性は一同の予想に反して


「まあ、何でも良いのですけど、ではそろそろお暇させて頂きますね」


とだけ告げて去っていく。

女性のその様子に一同は安堵するものの、同時に内心に何処か違和感を抱いてもいた。


「今の女性……こちらを追求してこなかったのは助かりました、助かりましたが……」

「ああ、あの去り際、何処か違和感を感じるな……それも此処まで来る時に感じてきた違和感と同種だ。

何処か冷たさと言うか、距離感と言うか……いや、初対面なのだから距離感はあって当然だが……」


小鳩夫妻のこの言葉に舞桜夫妻、優嫌夫妻も黙って首を縦に振る。

一方代表者は


「皆さんがそこまで違和感を覚えると言う事は嘗てはそうでなかったのですか?」


と問いかけてくる。

代表者が問いかけてくると言う事はつまり、件の違和感はマルティー人には感じられない類の物であると言う事なのだろう。


「ええ、自分から聞いておいて何でも良いという、此処までは起こり得ました。

ですがあの女性はそれでは終わらない何かを……いえ、此処に来るまでに車両から目撃していた人達もそれで説明出来ない何かを内心に抱いている、そんな気がするのです」


と告げる。


「それに戦争で~と言う発言をあの女性が言っていたのも不可解ですね……確かに昔戦争があったとは聞きましたがその後それがきっかけとなって団結したという話は無かった筈です、寧ろその後国内は……」


戦争の部分に引っかかりを覚えたのか、舞桜夫妻の妻がこう発言すると他の面々も同様の疑問を抱いていたらしく、再び首を縦に振る。


「閉ざされている間に日本に相当な影響が出ていると言う事なのかも知れませんが……その間に再び戦争を行ったのでしょうか?」

「その可能性は考えられるけど、一体何処と行ったの?」


舞桜夫妻の夫がふと呟いた疑問に対し、妻が言葉を重ねると代表者は


「こちら側の反逆者と戦争を行い、敗戦し支配を受け入れた……と考えますと辻褄は合いませんか?」


とその疑問に対し一応の回答を出す、だがその回答に対し舞桜夫妻は


「いえ、そうだとしてもその戦争で少なからず犠牲が出た筈……それが一年少々で完全に復興されるとは……」


と疑問を更に呈するが代表者は


「その復興にも反逆者が手を貸したのかも知れません」


と新たな可能性を指摘する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る