第四十五話 報告する時

「高御様、只今帰投しました」

「ありがとう、無事に戻ってきてくれたんだね。

それじゃあ」

「はい、只今より報告を開始します」


里愛がそう告げると四人は早々に高御に対し報告を開始する。

それを聞いた高御は


「成程……つまり今回の一件は単なる脱走という訳ではなさそうだね。

先に地球に向かった奴等が合流を呼びかけたのか、或いはその逆か……いずれにしても連絡手段を持っている可能性がある以上、単なる一部の部隊が網を逃れたというわけではなさそうだ」


と話し、里愛もそれに続けて


「ええ、僕も同意見です。

それに単なる脱走者にしては数が多いですし、戦艦を用意出来たのも不手際だけが要因であるとは思えません」


と言葉を続ける。

里愛の言葉を聞いたエアが


「それがさっき艦内で里愛が言っていた引っかかる部分なのね」


と話すと里愛は


「ああ、単なる一部の脱走者だとしたらそう簡単に戦艦なんて用意出来ない。

それを何処に用意して隠してあったのか、その点が非常に気になる」


と話し、青がそれに続けて


「だとすると、逆に言えばその戦艦の出処を探れば脱走者の件についても色々調べられそうね。

まあ、その辺りは現状彼等に任せる他ないのでしょうけど」


と話すとその場に同席していた神楽は


「それもそうだね、只、この見解については彼等にも連絡しておいた方が良いかも知れない。

彼等も範囲が広いからね、どうしても網目に解れが生じると対応が遅れてしまう部分がある」


と口にする。

それを聞いた高御は


「それについては後で僕がやっておくよ。

今は皆休んで」


と告げると報告を打ち切り、四人に対して休息を取るように告げる。


「宜しいのですか?現在地球には……」


応味がそう返答すると高御は


「ああ、地球の中にいると行っても常に監視の目は届いているからね。

それに今の所積極的に動いている部隊は日本にしか居ない、それも恐らくは偵察目的だと思う」


と告げ、それを聞いた里愛は


「分かりました、では」


と四人を代表して言ったと同時にその場を後にしていく。

そして他の三人も揃ってその場を後にしていくと神楽が


「日本の事を口にしたか……やはり彼等も気になっているみたいですね」


と高御に対して話し、それに対して高御は


「ああ、一応動いている連中が連中なだけにね。

だけど彼等にそこまで気にさせる訳には行かないよ、それが僕の責務なんだから」


と少し顔を険しくしながら口にする。


「責務……ですか、それは分かりますが……」


神楽はそう言いかけるが途中で口を噤んでしまう。

余程言い辛い事なのだろうか?

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