第三十八話 見続ける時
呼び出した移動車両に乗り込んだ一同はその場から素早く立ち去り、周囲を移動する車に紛れ込む。
「この移動車両は運転手が不要なのですか?」
「ええ、全自動で移動出来る様になっています、戦場では人材は戦いの為に全力を尽くして貰う必要がありますから。
移動で余計な体力を消耗し、肝心要のタイミングで足を引っ張る等と言う事があってはなりません」
小鳩夫妻の妻がそう質問すると代表者はこう返答するが、その顔はどこか冷たさを感じさせた。
戦場を潜ってきたが故なのか、それとも……
そうこうしている内に車両は大阪方面と中国地方に行き先が別れる道路に到着し、代表者は一旦そこで車を停止させる。
「さて、移動車両は一台しか無い為、当初の予定の様に二手に分かれてそれぞれ情報を収集すると言う訳には行きません。
そこでどうするかですが……」
「人口の規模から考えると情報収集が目的であれば大阪方面に向かったほうがいいのではないでしょうか?
そちらの方が何か掴める可能性は高いでしょうし」
「この国の土地勘はあなた方にあります、そうした方が宜しいというのであればそうしましょう」
社内の会話で今後の方針が決まり、一同は大阪方面へと進路を取る。
だがその光景をどこかで見ながら不敵な笑みを浮かべている高御が居る事等その時の彼等は知る由も無い。
「あら、奴等が中に入ってきたというのに観光させてあげるなんて随分気前が良いのね」
その背後に居たミスティがそう告げると高御は
「まあ、観光位はさせてあげてもいいだろう。
勿論そこで何かの問題を引き起こされたりしたら全力で取り締まるけど」
と返答する。
その顔はミスティの言う通りどこか余裕がある顔であった。
「それよりもまだ見つから無いの?次の目的地は」
「ええ、まだ手掛かりが不足しているわ、我々の国だけでなく外の国にもその範囲を広げているものの、やはり現状の情報と機器の制度ではコンマ単位で正確な位置を割り出すのは厳しい」
「技術革新が起こるのが先か、それとも見つかるのが先か……って所か」
高御とミスティが会話をしているとそこに何者かからの通信が入ってくる。
「この通信、彼からか……」
どうやら高御はその通信相手を知っている様だ、それ故に躊躇する事無く通信に対応する。
「皆さん、こうしてお話するのは……」
「久し振りっていう程期間は空いていないでしょう、それより一体何の用事?交流会の打ち合わせならまだ時間があるでしょう?」
その通信相手に対しミスティがこう返答するとその相手は
「ええ、その点は承知していますよ。
ですがそちらに……」
と言葉を続ける。
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