第九話 息を切らす時
「私も皆さんと同じく、この事件で息子が行方不明になっています。
ですが皆さん、日本は他の国とは少し事情が異なっているのです」
神楽の母がそう告げると背景のモニターに1枚の写真が映し出される。
それを見た日本以外のサミット参加国から来場されている人は明らかにどよめきを見せていた。
「これは……一体……」
参加国の一人が何かを母国語で発し、通訳がそれを日本語に訳したのを確認すると神楽の母は
「これは日本で起こった事件の現場と思わしき写真です。
見ての通り被害者と思わしき子供が紫の何かに包まれ、その背後には巫女装束を身に纏った少女らしき人間が映し出されています」
と写真の説明を行う。
その言葉の通り、写真の手前側には紫色の何かに包まれる子供達が映し出され、その背後には巫女装束を身に纏った少女らしき存在が立っていた。
だがその雰囲気は何処か異様な部分があり、何処か不可解な印象を受ける。
「この巫女装束の人物が映し出された写真はこれ一枚だけではありません、同じ日に幾つも撮影されているんです」
神楽の母がそう告げると同時に写真がスライドされ、その何れもに該当の巫女装束の人物が映し出されているのが確認出来る。
「つまり、この巫女装束の人物がこの事件に深く関わっているとお考えなのですね?」
「ええ、この状況を見る限りそうとしか考えられませんので」
恐らくはこれが日本の参加者が重用されている理由なのだろう、写真を見た時に日本以外からの参加者が一斉にどよめき始めたのがそれを裏付けている。
「まだこの少女が何者なのか、果たしてこの事件に本当に関わっているかどうかは全く分かっていませんがこの状況から考えて何らかの関連性がある可能性は極めて高いと思います。
しかも同様の人物が複数の写真に映り、且つ同時に映って居る子供が全員事件の被害者である子供達である事を踏まえると……」
神楽の母がこう言いかけたその時、会議場にバタバタと凄まじい足音が聞こえてくる。
そして会場の扉をバンと勢い良く開けると
「皆さん、会議中申し訳ございませんが至急外に出て下さい!!大変な事になっています!!」
という声と共に会議スタッフらしき女性が中に駆け込んでくる。
「大変な事だと?一体どういうことなんだ!?」
「と、兎に角外に……空を見て下さい!!」
神楽の母達日本人をここまで連れてきたスタッフが女性スタッフに問いかけると女性スタッフは息を切らしながら返答する。
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