第八話 サミットが始まる時

「つまり、それだけ多くの人が今回の行方不明事件の被害にあっていると言う訳なのですね……」

「ええ、しかし世界中で一斉に同様の事件が起こるとは……何か大きな陰謀が動いているのではという説も飛び交っています」

「強ち陰謀とも言い切れないのが恐ろしいな……」


神楽の両親と案内してきたスタッフがこう会話を交わした後、スタッフは連れてきた人達を座席へと案内する。


「あら、私達は全員この会議場に椅子が用意されているのね。

他の国の方々は分散して待機してもらっているというのに……」

「日本では他の国とは異なる重要な情報が入手出来る可能性がありますからね、その為の配慮という事です。

他の国の方も特に初期の頃に被害にあった地域の方を中心にこの会場に集ってもらっています。

他の会場に待機して頂いているのは主に遠方の親族に当たる方や議員の代表として参加されている方達ですね」

「議員よりも直接の被害者の方が重要という訳か、まあ当然な気もしなくも無いが」


座席に集められた人々が席に付き、それから暫くすると

マイクが置かれた議場の台の前に先程のスタッフが向かってマイクを口に当てる。

そして


「皆さん、この度は現在全世界で発生している行方不明事件に付いての対処を話し合うサミットにお集まり頂き誠にありがとうございます。

全世界で同時に子供が行方不明になるという異様な事件に対し我々はどう立ち向かうべきなのか、このサミットがその方向性を決める場になると言っても過言ではありません。

お辛い気持ちもあるかもしれませんが、どうか皆さん持ちうる限りの情報提供を宜しくお願いします!!」


とサミットの開催を宣言し、続けてその会場に居る人々が入れ代わり立ち代わりにマイクの前に立ち、その思いの丈を吐露していく。

だがそれらは主に急な事件で家族が行方不明になったと言う感情が主であり、事件そのものの解決に繋がりそうな話は聞かれない。


「事件そのものの解決に繋がる話は今の所出ていないわね……だとすると他の国はまだ手掛かりすら掴めていないという事なの?」


神楽の母が一抹の不安と彼等の思いに応えようという気持ちを胸に秘めながら只ひたすらに時は流れて行く。

そして遂にその時は来た、神楽の母がスピーチを行う順番がやってきたのだ。

その名前が呼ばれ、神楽の母は決意を胸に議場のマイクの前に向かっていく。


「皆さんの現状は良く分かりました、そしてそのお気持ちも」


こう話を切り出すと神楽の母は日本の現状について説明を開始する。

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