氷の女王
それから。
セガールに勧められて俺が向かったのは、中央広場の隅にあるブースの一角であった。
「見てごらん。あそこにいる彼女」
そこにあったのは、日傘を差しながらも、机に座り、本を読んでいる1人の少女の姿であった。
ふうむ。
よくよく見ると、異質な光景だな。
周囲の人間たちが1人の少女を避けるようにして移動している。
誰もが『そこにいるはずの彼女』のことを視界に入れようとしない。
結果、人口密度の高い中央広場の中にあって、彼女が開いているブースの周りだけ、人払いがされているような状態になっていた。
「不思議な光景だろう? みんな、彼女、氷の女王を恐れているのさ」
「氷の女王?」
「ああ。準備校上がりの連中に彼女、ノエルの名を知らないものはいないさ。圧倒的な実力を持ちながらも決して他者と慣れ合おうとしない。
誰も彼女が笑っているのを見たことがないんだ。故に付いた呼び方は、『氷の女王』。もしかしたらアベルくんなら彼女と気が合うかもしれないと思ってね」
なるほど。そういう事情があったのか。
たしかにレベルの落ちた現代魔術師の中で彼女の実力は、相当マシな部類であることが伺える。
俺の見立てによるとエリザと同じか、更に少し上回るくらいだな。
それだけの力を持っているのであれば、学園生活が退屈と感じても仕方がない部分があるだろう。
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