VS クロノス幹部

 エリザと共に学生寮を目指していると、またしても俺の様子を監視する不穏な視線を感じた。



 ふう。

 この視線、何時もの魔道具ではないな。明らかに生身の人間のものである。



 ようやく俺の行動を監視している連中も重い腰を上げたのか?


 これは好都合だ。

 長らく続いた不毛ないたちごっこから、解放されることになりそうだ。



「エリザ。悪いが、今日のところは先に帰っていてくれないか」


「え。どういうこと?」


「悪いな。少し街の方でやり残したことを思い出したんだ」



 どうやら連中の用事は俺にあり、エリザには特に興味を示していないようだ。


 そうと分かれば無暗にエリザをトラブルに巻き込むこともないだろう。



「分かったわ。アベル。それじゃあ、また明日。学校で」


「ああ。気を付けて帰るんだぞ」



 少しだけ名残惜しそうな表情を浮かべていたエリザは、クルリと踵を返して俺の元を離れていく。



「さてと。いるんだろ。出てこいよ」



 先程から俺の様子を伺っている視線は2人分あった。


 取り立てて優れた魔術師のようには見えないが、この世界のレベルを考えると『それなり』と考えることができるかもしれない。


 少なくとも、俺がこの世界で出会った魔術師の中ではトップクラスの上物のように思える。



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