チームの戦力

 チーム分けが終わった段階で、改めて俺はこの自分のいるチームの状況を分析してみる。


 俺と、テッド。エリザ。それから先程、体育教師の指示に異議を唱えた黒髪の少女。

 そこにあまり見覚えのない男女3人を合わせた合計7人のチームである。


 ふむ。

 俺たちAクラス30人の中に外部生は7人しかいなかったんだな。


 なるほど。

 道理で内部生たちが教室の中で幅を利かせているはずである。



「ど、どうしよう……。わたし、昔から運動が全くダメで……」


「ボクも苦手だな。頭を使うのは得意でも体を動かすのはどうにもね」



 やれやれ。

 まだ戦いが始まってもいない内から随分と情けないことを言ってくれるな。


 たしかに頭を働かせることも重要ではあるが、魔術師の資本は体だろうに。



「大丈夫かな……わたし、みんなの足引っ張っちゃうかも知れない……。それに怪我するかもしれないって……」


「大丈夫! アタシがフォローするわ!」



 大きな胸を張ってエリザが言った。


 ふむ。 

 こちらのチームで戦力になりそうなのは、せいぜいエリザ、テッドくらいのものか。

 

 エリザはともかくとして、テッドまでも戦力としてカウントしなければならない日が来るとは、夢にも思ってもいなかった。



「エリザさん。で、でも……内部生の人たちって、わたしたちのこと……良く思ってないから」



 怯えたような様子で黒髪の少女は相手のコートを見る。

 向こう側のチームの、昨日俺を待ち伏せした男たちが、ニヤニヤとした笑みを浮かべている。



「それこそ大丈夫よ。曲がりなりにもハウントは伝統あるスポーツだし、今は授業中。いくらアイツ等でも不正なんてしてくる筈がないわ! 正々堂々、あんな奴らぶっ倒して、ギャフンと言わせてやりましょう!」



 エリザが黒髪の少女を元気づけている。


 ふう。

 エリザはこう言っているが、果たしてどうだろうな。


 昨日の一件からも、奴ら内部生が目的のために手段を選ばない方針だということは分かっている。


 十中八九、勝負の最中にも何か仕掛けてくると考えていた方が良いだろう。



「とにかく! やるからにはベストを尽くしましょう! さ、行くわよ!」



 勇んで指揮を執るエリザ。


 対戦相手とのコイントスで後攻の|防御側(ラビ)から始まることになった。


 俺たち7人は、20メートル四方のコートの中に入った。



 敵対する攻撃側(シューター)は3人。

 ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながらも手袋型の魔道具を構えている。


 ふう。

 俺はともかく他のメンバーがどれだけ成果を残してくれるかが心配だ。


 今回に限らずスポーツというものは大抵、個人の成績よりもチーム全体のパフォーマンスが勝敗を分けるようになっている。


 俺1人がどんなに頑張っても、他のラビが全滅してしまうと1ポイントしか入らない以上、最後まで気を抜くことができなそうだな。


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