合格発表

 それから、波乱の入学試験から翌日のこと。

 近くの宿で一晩を過ごした俺たちは、合格発表を見に行くことにした。



 と言っても俺がやることは特にないのだけどな。



 アースリア魔術学園の合格発表は、各家の代表者が受付窓口に行って、合格通知の入った封筒を受け取りに行く形式だった。


 つまりは俺から動くべきことは何もない。

近くの喫茶店でコーヒーを飲みながらテッドの報告を待つだけだった。



「師匠―! お待たせしましたー!」



 どっがーんっ、と快音を響かせ扉を開けて喫茶店の中に入って来たのは、俺より少し背が低いべっこう飴が焦げたような金髪の少年、テッドである。



「見てくださいー! オレ、合格していましたよ! どうですかー!? オレ、頑張りましたよー!?」



 赤色の文字で大きく『合格』と描かれたという紙切れを広げながらもテッドは言った。


 ふう。騒がしいやつだな。

 せっかく都会のコーヒーの味を楽しんでいたというのに野暮な男である。


 200年前の時代ではコーヒーは『悪魔の飲み物』などと呼ばれており、一部の愛好家のみが嗜むものであったのだが、現代においてはすっかりと世間に浸透したようである。



「ふふふ。師匠も結果を確認したいッスよねー!?」



 ニヤニヤと俺の顔色を伺いながらもテッドは言った。



「必要ない。どうせ受かっているんだろう」


「え?」



 何がなんだか分からないという表情を浮かべるテッドに向かって、推理の一部を聞かせてみせる。



「簡単なトリックだ。その封、僅かにだが開封された形跡があるな。お前の性格を考えて、不合格なら、わざわざそんな質問をしないだろう」


「うぐっ。さ、流石は師匠。何から何までお見通しッスね」



 やれやれ。お前が俺と駆け引きしようなんて200年早いんだよ。

 俺に図星を突かれたテッドは、分かりやすく動揺しているようだった。



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