春の日の夢
コンコンコンコンコンコンコンコン
誰かが扉を叩き続ける。
鳴り止まない、その音だけが部屋に響き渡る。
コンコンコンコンコンコンコンコンコン
窓からは夕暮れ時の空が顔を覗かせる。
閉まった窓からは心地よい風が頬を撫で、暖炉の火がそれを台無しにする。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
部屋は薄暗く、夕日だけが部屋を照らす。
質素な、何処にでもあるような部屋の一室。上には豪華な燭台、目の前には朽ちた机。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
僕は一人で椅子に座り、ただ前をじっと見つめている。目の前に映る光景を目にして安堵を覚え、悪寒と共に冷や汗を流した。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
扉の下から血が少しづつ這って来る。
いや、扉の向こうへと戻っていってるのか。
素足に生暖かい液体が纒わり付く。
夕暮れの空が血を流して、窓の縁から元の場所へと帰ろうとしていた。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
天井から、少量の血が床へと垂れる。
天井の左側から垂れる血は、右側の床から下の部屋へと垂れていく。
あぁ、そういう事か。
上も下も左も右も、全部僕のいる部屋なんだ。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
息が荒くなる。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
扉の向こうにはナニが居るんだろう。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
見たくない。
僕は立ち上がった。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
やめてくれ。
僕は扉へと近づく。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
息が荒くなる。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
扉の取っ手へと手を掛けた。
コンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコンコン
「...夢か」
まだ日も昇ってないような時間帯、僕は息を荒くしながら目を覚ます。ベンはまだ寝てるみたいだ。
僕は冷や汗を拭い、洗面所へと急ぎ早に向かう。そこで溜め込んだものを、一気に吐き出した。
あんな感じの夢を見ることは前もあった。
具体的に言うと故郷で初めて人を殺した時ぐらいから。エドガー監査官やロイを殺した時は週に一回、神父を殺した時は週に二回、魔女を殺した今は週に三回ほどこの夢を見る。
このままだと寝れなくなるのかもしれない。
現に僕の睡眠時間は見るからに減って、目の下にはクマが出来るようになった。
今まで感じなかった罪悪感が一気に押し寄せたみたい。
なんというか、吐き気がする。
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