第39話 化物式身体測定


検査室の奥にあるのは、巨大なパンチングマシン。

 部屋を構成する壁は厚さ五メートルの鉄筋コンクリート、殴打力測定器が在る壁の対面にはガラスで仕切りがされている部屋がある。

 その部屋でパンチの数値などを測定する。


「それじゃあ、始めるか」とヒロトはリラックスして、言う。

『ヒロト様、先ずは単純な筋力だけのパンチを行なってください』


 ガラスの向こうからマイクで話す研究員に指示を受けそれを了承する。

 高さ四メートルは在るパンチングマシンの前に立って構える。

 呼吸を整え、腕を力ませる。

 一気に放つ。


「────!」


 計測機器が勢いよく後退する。

 猛烈な音が部屋中に響き渡る。

 結果が気になり研究員に質問した所、直ぐに帰ってきた。


『20トンです』


 やはり小さい、こんなのでは漫画やアニメばりの、パンチが繰り出せない。

 ま、どうでも良いけれど。


『次は、何を使っても使っての、測定します…………どうぞ』


 次は、何を使っても使っても良いらしいのだけれど、俺は自己強化系統の魔術はあまり持ってないので、簡単な強化しかできないが、良いだろう。あとは、特製のガントレットを腕につけるだけ。

 時間停止を使えば実質、光速以上の速度が出るはずなので威力は計り知れない。観測的に言えば、光以上の速度は存在し無いが。しかし計器を破壊する訳にも行かないのでその技は使わない。

 腕に嵌めた、ガントレットは俺愛想武器の一つ。ガントレットと言うよりは大きなメリケンサックと言えば分かりやすいかもしれない。これは俺が現代における、超至近距離における戦闘に使うために考案した武器である。見た目とは裏腹に、多機能的でCQCを補助する。ナイフや数回限りの針飛ばしができる。何が一番すごいかそれは重さである。


「フンッ!」


 先ほどよりも豪快な音。

 パンチングマシンは先ほどよりも大きく後退し威力の違いを称している。

 さっき言っていた時間停止を使う場合、あまりの速度を出し空気の摩擦で超高温に加熱する。この現象を空力加熱というだが、これは航空機、ロケット、などが、空気中を高速度、マッハ6以上の速度で運動するとき、物体の前端のよどみ点付近における断熱圧縮と、境界層内部における粘性摩擦とによって、物体の構造の温度が上昇する。こうした空力加熱による材料の強度低下で、物体の構造に及ぼす影響は超高速飛行に対する重大な障害となっている。高速飛行に対して、かつては音速突破時の衝撃波による抵抗増大や振動の発生の障害を「音の障壁」とよんでいたのと同様、極超音速飛行時では空力加熱を「熱の障壁」といっている。そんなことをしてはリアルに腕がロケットになって飛んでいきそうなので、やるにやれないのが現状である。


 この結果に誰もが驚きはしていたが、それはただ社交界で主催者が何か大きな善業の発言をした時例えばスティーブが言った時のような、関心混じりの、驚きで在る。


 有り得ない、とは誰も思ってすらいないので在る。恐ろしい。

 結果、俺の最大のパンチ力は130トン。

 結果的には、こっちに来る前から変わっていない。


 100m走2秒83 握力3271kg 走り幅跳び33.75m 重量挙げ5200kgと言ったもの。何も変わっていない、結果これに、身体機能向上に“願い事“が消費されてないことが判明した。

 これは好都合、これ以上身体機能が上がっても意味がないと思っていた。しかし、問題となるのが、何に願いを使ったか、アテナは願いを叶えたあとは、叶えた内容の記憶がなくなると、話していた。

 追々分かると思うが、何か心配だ。




 午後十時 地下基地第九階層廊下

 小さな人形の兵隊が警備に当たっている。

 身長が一寸程、手には玩具にも見える、アサルトライフルを装備している。


 第一印象は生まれおちてより後、背一寸ありぬれば、寸法におどろききと、言った感想であった。


 兵隊の横と通ると敬礼し後また行進を始めた。地上の防衛兵器には、泥で作られた人間大の兵士が巡回し基地を防衛している。

 一寸の兵士は隠密行動での敵排除を目的としている。正面戦闘は本業ではないが、攻撃ヘリなども保有しているので、万が一の場合は、それで対処する。

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