第17話 覚悟
ヒロトはベッドの上で上半身を起こした。
隣の女が今丁度起た。
「今回の傷は少しキツかった、いくら吸血鬼とは言え、高出力のお前の攻撃は、天敵だ」
今更、弱音を吐くとは。それも独り言。
「この世界は良い触媒の育成場だ。それを潤滑に進めるために、この世界を支配してしまおうと考えている。また来てくれるか?」
「聴くまでも無い、もちろん付いていくとも、私はマスターのものだからな。だが条件がある。たまには、相手をして貰うぞ?」
「あ、ああ、検討しておこう」
ヒロトはそう言って立ち上がり、寝室から出ていった。食事でも取りに行ったのだろう。
ヴィクトリアは裸のままベッドを降りて、水槽を眺める。草や岩の隙間を見ると、宝石で出来た観賞魚がその身体模様には似合わなく、ひっそりと優雅に泳いでいた。奥行きが深い所には、他の魚とは一風変わった魚が、際奥の中央を浮かんでいた。
料理の生活音を聴きながら、彼の強さは孤独の裏返しなのでは無いか、と考える。ヒロトは独り、まったく独り、いつまでも独り。
人間的見地から見た場合の
彼は孤高なのだ、常に同じ高さに、対等な者は居なかった、私達が居たから孤独ではなかったが、独りだった。
それは彼の強さは、卓越=差異なのだ。平等があるからこそ、卓越を測定することが出来るのだ。故に卓越が依拠する根本的経験は、あらゆる者が持っている独自性ユニークネスの経験であるのだ。つまり彼は独自過ぎ、卓越過ぎて周りとの差異が大きく、どうのしようもなくなってしまったのだ。私が出会った時には、既にそれだった。
──私は、あの人を変えれるだろうか。
自信はなかったが挑戦してたかった。この気持ちは決意となった。
──あの人を、私の物に出来るだろうか。
そう言って彼女は、シャワー浴びた後、少しシワのついた何時ものドレスを着て、ヒロトと一緒にご飯を食べることにした。
「はー疲れた」
情けない声を出したのはヒロトだ、今ヒロトが居る場所は自分の寝室だ。
ヒロトの部屋は日本で読んでいたSFから推理ものまでありとあらゆるジャンルの小説が本棚にズラリと並べられている。
そのうちの一つにいつも目が動いてしまう『The Man in the High Castle』日本はまさしく、これの様になった。広大な支配地域、覇権国家、強大な軍。しかし決定的に違う点があるとするならば、日本が皇道派を選んだ事。そしてヒロトが日本側に肩入れしたことが大きく違うところである。
この問題は元の世界に帰った時に、存分に話そう。
話を戻してちょっとした料理を作るためのキッチンがあり最新のダイニングキッチンで広さは八畳ほど。そしてリビングには、大きめのソファーがあり部屋の大きさは六十畳の広々とした部屋だ。色は白と黒を基調としている。そんな、豪華な部屋の寝室にあるキングサイズのベッドの上でゴロゴロしていた。
今日は色々な魔法も使い魔力もあまり残っていない。その為ヒロトは部屋でゴロゴロしている。
ヒロトはふと思い出し、紙切れを懐から出した。
今宝物庫から取り出したこの紙切れはヒロトが事前に『ある事』が書かれた単なる紙切れだった。
記載された内容を見てもう何度目かの疑いをかけて、紙をを破りゴミ箱に捨てたのち、捨てたそれを眺めているとリビングの方から扉が開いた音が聞こえた。
このヒロトがいる生活をする為の部屋は、一つ手前にある執務室の本棚に隠し扉を付けている。まずそこを開けないと開かないし、スイッチを押さないと開かない。その上この場所は先程までいたヴィクトリア以外誰にも言っていない。
ヒロトは部屋に入って来た者を確かめるべく気配を断ち寝室に置かれたライティングビューローから銃を取り、ゆっくりとドアノブに手をかける。
この地下基地に敵が潜入するのはキーパーを配置した今、ほぼ不可能に近い、しかしヒロトがここを作って入って行った直ぐに入ることが出来れば隠れることは容易だ。
ヒロトはその可能性を考えていた。
そしてヒロトは慎重にドアノブを回しドアを開けるとそこに居たのは────
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