第131話 奴隷契約解除アイテムと事の顛末
「な、なにか変だとは思ってたんです……ここ最近、冒険者さんに怒鳴られたりした日に記憶が飛んでて、けどなぜかあまり深く考えることがなくて……まさかこんな大それたことをしてたなんて……! ごめんなさい!」
「いえいえ。ユニークスキルの暴走なんて本人にはどうしようもないですし、今回の件に関しては被害に遭った冒険者たちにも少なからず責任があるみたいですから」
大量の精気を叩き込んでユニークスキルの暴走を食い止めた翌朝。
無事に目が覚めたバーニーさんは僕らから説明を聞き、顔を青ざめさせたり涙目になったりと大忙しだった。
ただ、今回の事件はバーニーさんに理不尽なストレスが降りかかったことで開花したユニークスキルの暴走が原因。彼女ひとりに責任を負わせるような話ではないのだった。
暴走が静まると同時、昏睡状態だった冒険者たちは目を覚まして後遺症もなし。シスタークレアによるガチムチ草の投与で体力も順調に戻ってきているということで、今回の件は不幸な事故として処理される手筈になっていた。
「ただまあ、バーニーさんのユニークスキルが危ないのは確かなので。しばらくは魔力制御の希少アイテムで暴走を予防しつつ力の使い方に慣れていってもらうことになるのかと」
「はいぃ。できるだけストレスを溜めないように頑張ります……あ、でも……」
と、バーニーさんがそこでふと言葉を切る。
かと思えば前髪で隠れた瞳を爛々と輝かせて、ぼそりとこう言うのだ。
「うっすらですけど、一発でストレスを解消する方法は覚えてて……」
「え」
「たまにでいいので、また精気を注ぎに来てくれますか?」
「……それは是非……」
もじもじしながら熱っぽく見つめてくるバーニーさんと、横から頷くアリシア。
この流れではとても断ることなどできず、僕は色々と申し訳なくなりながら、「と、当面はこれでストレス解消してください」と分離男根をこっそり手渡すのだった。
*
そうしてギルドルムの異変が解決し、ギルドに早くも活気が戻り始めたころ。
僕たちは改めてギルドを訪れていた。
要件はもちろん、奴隷契約解除アイテムを使わせてもらうことだ。
「いやはや、まさか怪事件の原因がバーニーだったとは……。荒くれ者相手の仕事ゆえ、あまり助けすぎても本人のためにならんと思っていたのだが……私たちが間違っていた」
そう言って反省するように頭をかくギルマス――トーマスさんに連れられてやってきたのは、ギルドの地下。鎮座しているのは幾重もの魔法障壁で守られたアダマンタイトの金庫だ。
仕事ができるほど回復した上位のギルド職員さんたちが魔力をこめれば、その分厚い扉が開いた。中にあったのは、鍵のような形をした希少金属の塊。
奴隷契約解除の力を持つ最上級のマジックアイテムだ。
「では我々は上で待ちます。要件が済み次第またお呼びください」
言って、トーマスさんたちが一度地上へ戻る。
冒険者がこのアイテムを使う際は色々と事情がある場合が多いため、こうしてギルド職員は一度下がるのが慣例なのだった。実績を積んだS級冒険者への信頼だろう。
「それじゃあ、使うね?」
「……うん」
言って、僕は衣服をたくしあげるアリシアにそのマジックアイテムをかざした。
魔力を注ぎ、〈主従契約〉の要となっている下腹部に鍵の先端を触れさせる。
瞬間――バチン!
「「っ!?」」
強大な魔力がぶつかりあうような激しい光が弾けた。
けれどそれはまるで鍵の効果を弾くようなもので――その結果、
「……〈主従契約〉は、繋がったままみたい……?」
なんと、僕の〈主従契約〉スキルは国やギルドの管理する解除アイテムの効果をもってしても強制解除できないのだった。
「うーん、〈淫魔〉のトンデモ具合からしてそんな予感はしてたけど……こうなるとうっかり契約しちゃったキャリーさんやアリシアを解放できる日がくるのかどうか……」
まあこれだけ強力なら、コッコロみたいに凶悪な相手の〈主従契約〉がいつの間にか解除されてしまっていた、なんてこともなさそうだから安心ではあるんだけど。
融通がきかないと色々と困るよなぁ、と思っていたときだ。
「……え?」
股間が熱い。
なんだか新しい力が芽生えたような感覚にまさかと思いステータスプレートを鑑定水晶でチェックしみたところ、
『主従契約:セッ〇スによって繰り返し絶頂させた相手に命令を下すことで強力な隷属状態にする。契約の証である淫紋に口づけすることで解除可能』
「!?」
〈淫魔〉としてのレベルが上がったせいか、強力なアイテムでの契約解除を試みたせいか。
そこには、いままでにない文言が追加されていて。
僕は赤面しつつ、アリシアの足下に膝をついた。
「た、試すね?」
「……うん」
そして僕は先ほどと同じように確認をとってから、アリシアのすべすべの下腹部にキスをした。瞬間――パキィン!
「……解けた」
アリシアの下腹部に刻まれていた淫紋が消失。
〈主従契約〉が完全に破棄されていた。
「や、やった!」
僕は思わず拳を握る。
〈主従契約〉はかなり強力かつ便利なスキルだったけど、事故で契約してしまった相手も隷属させっぱなしな状態がどうにも気になっていたのだ。
これならもし今後契約の上限数が判明しても、凶悪な敵を優先して隷属させておくとか、契約相手の取捨選択ができる。スキル運用の選択肢が広がるし、教会との戦いが終わったあと、うっかり契約してしまった相手を解放してあげられる!
と、僕が舞い上がっていたところ、
「……む~」
アリシアが淫紋の消えた自分の下腹部とソフィアさんを交互に見比べる。
そしておもむろに、僕をその場に押し倒してきた!?
どうしたの!? と戸惑っていると、
「……私がエリオの一番なのに……私だけ契約の証がないのは、嫌。……いますぐ契約しなおして」
「っ! わ、わかってる! わかってるから少しだけ我慢して!?」
〈主従契約〉の利便性を考えたら、刻み直さないなんて選択肢はないんだから!
そうして僕たちは速攻でギルドの地下をおいとまして宿へ。
「……っ❤ ……っ❤ ……命令して❤ 何でもいいから早く、命令して❤」
そう言って僕の上に馬乗りになったアリシアに、僕は再び〈主従契約〉の淫紋を刻み込むのだった。
……なんでだろう。
せっかく理想的なかたちで〈主従契約〉が解除できるようになったのに、あんまり意味がないような気がするのは。
*
それから最後に。
ユニークスキルが暴走しないようにと僕にストレス発散のお手伝いを頼んできたバーニーさんのことだけど――実はもうひとつ語るべきことがあった。
〈主従契約〉を解除できるようになった翌日。
街を出発する前に周辺地域の情報収集をしようとギルド本部へ顔を出したところ、賑わいの戻っていたギルドに荒々しい声が響く。
「ああ!? だから買い取り価格が安すぎるっつってんだろうが! てめえ復帰直後だからって優しくしてもらえると思ってんじゃねえぞ!」
「え、ええと、そのぉ」
元気を取り戻した猪獣人の女性が、性懲りもなくまた受付でバーニーさんに詰め寄っていたのだ。周囲の冒険者が止めに入ろうとするが、その直後。
「っ!? ぎゃあああああああああああっ!?」
「あ、あ、ごめんなさい」
猪女性が顔を真っ白にして倒れ込み、拷問でも受けたような絶叫を漏らす。
それを見たバーニーさんは慌てたように謝りながら、こんなことを言うのだ。
「実はイラっとするとスキル制御アイテムを超えてドレイン能力が発動しちゃうので……だからあんまり、理不尽なことは言わないでくださいね? ……今度こそ、殺しちゃうので」
「わ、わかった! わかったからもうやめ――あああああ! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ!」
おどおどした口調のまま、どこか目に怪しい光を宿して語るバーニーさん。
事件から短期間で職場復帰した彼女は良くも悪くも新たに目覚めたユニークスキルと上手く付き合えているようで、
「……ふぅ。色んな意味でスッキリして落ち着きました。あ、じゃあ次の方どうぞ~」
「は、はい!」
冒険者集団昏睡事件の真相をある程度知っている冒険者たちは泡を吹いて動かなくなる猪獣人の女性を救護しつつ、まるで訓練された下級兵士のように整列していた。
――そんなこんなで。
バーニーさんは絶対に怒らせてはいけない名物受付嬢として、ギルドの平和な運営に長く貢献することになるのだった。
エリオ・スカーレット 14歳 ヒューマン 〈淫魔〉レベル310
所持スキル
絶倫Lv35(前回から5up)
主従契約(Lvなし)
男根形状変化Lv20
男根形質変化Lv20
男根分離Lv10
異性特効(Lvなし)
男根再生Lv10)
適正男根自動変化(Lvなし)
現地妻(Lvなし)
ヤリ部屋生成Lv15
精神支配完全無効(Lvなし)
自動変身(Lvなし)
眷属生成(Lvなし。威力は本人のレベル依存)
射精砲Lv3
????
―――――――――――――――――――――――――――――
というわけで、教会の陰謀とかまったく関係ないところでヤバイ能力と露出性癖とストレスを秘めていた一般受付嬢ちゃんのお話でした。めでたし!
※と、キリの良いところで次回の更新はこれまでのまとめになります。
ちょっと今月はずっと体調が悪くて書きためが滞っておりまして……汗
(現在は快復してます)
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