第67話 検証、ヤリ部屋生成


 ダンジョン都市サンクリッドが擁するダンジョンは数百年前に出現したとされる地下洞窟型の大ダンジョンだ。

 ダンジョン都市と呼ばれる街は大陸にいくつかあり、サンクリッドダンジョンはその中でも比較的若い部類に入る。


 けれどその広大さは他の大ダンジョンと変わらずかなりのものがあった。


 階層は公式に確認されているだけでも70以上。

 出現するモンスターの数や強さ以前に、踏破に何十日もかかるようなその広大さが食糧不足などの点から冒険者の下層域進出を拒んでいるとのことだった。


 しかしまあ、その人を寄せ付けない広大さが僕たちにとってはかなりありがたい。

 なにせダンジョン内で一番人口の多い浅層でも他の冒険者とすれ違うことはあまりなく、僕とアリシアは自分の力を隠すことなく全力で戦えたから。


「……身体能力強化【極大】……剣戟強化【大】」 

「「「グギャアアアアアアアアアアアアアアッ!?」」」」


 魔力のこもった壁が淡く光る中、アリシアがぼそりと呟く。

 途端、ただでさえ高いアリシアの身体能力が急激に強化され、道の奥からやってきた大量のモンスター達が一瞬で切り刻まれた。


「……エリオ、左右の通路からモンスターが来る。右はお願い」

「うん、わかった!」


 万が一にでも僕らの戦闘を他の冒険者に見られないよう、アリシアは常に〈周辺探知〉スキルを展開している。そのおかげでモンスターから奇襲を食らうこともなく、僕たちはダンジョン浅層をなんなく進むことができた。


 まだ浅層ということもあり、出現するモンスターはブルーウルフの群れや武装ゴブリンなど、最大でもレベル20程度のもの。僕たちの敵じゃない。

(ちなみにここでは男根剣を封印し、僕自身の剣技上達とアリシアのレベルアップを優先している)


 と、そうして僕らは順調にダンジョンを攻略していたわけなのだけど……実は今日のダンジョン攻略では、ひとつ確認しておきたいことがあった。


 なんの確認かといえば……女帝ステイシーさんとの一件で新しく出現した頭のおかしいスキル〈ヤリ部屋生成〉の性能チェックだ。


 発現した当初はあまりに頭のおかしいスキル名と効果に深く考える余裕がなかったけど……鑑定水晶で確認したスキル効果にははっきりとこう書かれていた。


 生物以外の出し入れも可能、と。


「……これ、まさかあのバカでかい容量で普通にアイテムボックスとして使えるってことはないよね?」


 セッ〇スしないと出られない、なんてふざけた条件もあるわけだし、なにかしら制約はあるはず。そう考えながら、僕はバックパックに集めておいたモンスターの素材をいったん降ろし、スキルを発動させた。

 

 すると僕の手元を中心に、人一人が入れそうな大きさの空間がぐにゃりと歪む。

 セッ〇クスしないと出られない異空間への出入り口だ。


 どうも魔力を込めれば込めるほど入り口は広くなるらしい。けど入り口を広げた際の魔力消費は豪魔結晶の補正込みでもそれなりに大きいみたいなので、ひとまず最小サイズのままモンスターの素材を放り込んでみた。すると、


「き、消えた……」

「……アイテムボックスに物を入れるときと同じだね」


 アリシアの言う通り、通常のアイテムボックスと同じように素材が空間に吸い込まれて消えてしまう。それから僕はアイテムボックスを使うときの要領で歪んだ空間に手を突っ込んでみた。すると、


「う、わ……出すときも普通に出せちゃった……」


 これまたアイテムボックスを使うときと同じだ。

 僕が取り出したいと念じた物が勝手に掌に収まり、なんの制約もなく空間から取り出すことができたのだ。


 つまり新しく獲得した〈ヤリ部屋生成〉は、普通に大容量のアイテムボックスとしても使えるということだった。

 しかもこれ、中にモノを入れて運ぶ際の魔力消費量も多くないみたいだし……セック〇しないと出られないって致命的な欠点を除けば、アイテムボックス兼どこでもセーフハウスとして機能するらしかった。

 モンスターの群れに囲まれてもこの空間に避難すればやり過ごせる、と言えばその優秀さがわかるだろうか。


「なんだこのスキル……とんでもなさすぎるぞ……」


 と、僕が〈ヤリ部屋生成〉のぶっ飛んだ性能に目を見開いていたときだった。


「……異空間の中で素材がどう保存されるのか。血まみれのモンスターをそのまま中に入れたらベッドや絨毯はどうなるのか。……しっかり確かめないといけないね。スキル検証のために誰かが中に入って確かめないといけない……だからこれは仕方ない……」


 言いつつ、アリシアがスキルによって生成された「セッ〇スしないと出られない異空間」の出入り口に頭から突っ込んでいった。ちょっ、アリシア!?


「そんなこと言って、仲良しの口実が欲しいだけだよね!?」

「……そうだよ?」


 開き直った!


 けどアリシアの言う通り、1部屋しかないヤリ部屋の中に素材を突っ込んだらどうなるかというのは確認しておかないとけないことで……。

 ダンジョン攻略の最中だとういのに、僕はアリシアと一緒に「ヤリ部屋」の中へと入るのだった。


――――――――――――――――――――

前回の仲良し24時で「ご飯はどうしたんだ」という指摘がありましたが、事前に買いだめしていたor〈現地妻〉スキルを利用して女帝ステイシーに食料を運ばせ仲良しの様を見せつけるだけ見せつけたあと送り返した、のどちらかということでお願いします!

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