第29話 最強のペア
「久しぶりの再会で積もる話もあるけどそろそろやめといた方がいいよな?なんか相手っぽい人達はまだかまだかってイラついてるぞ?」
「ほんとだ。じゃあ、玲音。お願いしてもいいか?」
「おう。2vs2だろ?ところで何でこうなったんだ?」
「それが何だけど、俺は少し前までバスケがトラウマであって、ボールも触らないくらいだったんだけど花蓮さんが一緒に克服しようと言ってくれてから克服できるように頑張ってたんだ。今日もやってて俺がトイレに行ってる間にあそこにいる二人組の連中が花蓮さんと茜にしつこくナンパしてたのを止めたらって感じよ」
「幸也にそんなことがあったなんて…気が付かずに悪かった!」
「気にすんなって」
「それで克服の方は?」
「もうほとんどトラウマは消えたと思うから伸び伸びとできるはずだ」
「じゃあ、あの腐った奴らをボコボコにぶちのめすぞ!」
「おっ、おう!」
ー玲音がメチャクチャキレてたー
玲音が理由を聞いてここまでキレる訳はここにいる妹の茜だ。
何たって彼は妹の茜のあまりの可愛さに一目惚れしたそうだ。こいつに何度茜が好きな物や、タイプを聞かれてきたことやら。一時期、練習会でも聞かれて、Rheinでは毎日としつこいぐらい聞かれたから『直接聞け!』って俺に怒鳴られるくらいに我が妹にぞっこんだ。まぁ、茜も茜で玲音のことをよく聞いてくるし、異性として好きらしいけどな…
「やっときたか。それで、俺達にボコボコにされる可哀想なお仲間は彼かな?」
「こいつは本当に可哀想だな。そいつが俺達に喧嘩を売ったせいで君まで可哀想な姿を晒されるんだ」
「それはやってみないと分かんないだろ?」
「コイツもなかなか生意気だな」
「まぁいい。もう一回ルールの確認だ。ルールは基本1点でスリーポイントシュートは2点の15点マッチだ。オフェンスは得点を取ったらそのまま連続でオフェンスをできる。まぁ俺達市選抜に勝てるとは思えないけどな」
「なぁ幸也。コイツら市選抜ごときで威張ってんの?」
「そうだよ。ホント残念な奴らだよな〜」
「「なんだとゴラァァァア」」
「すごく短気だし幸也の言う通りだな」
「そんなことよりさっさと始めようぜ?」
「絶対に恥をかかせてやる!俺らが先にオフェンスすると一瞬だからお前らに先攻は譲ってやるよ」
「へぇ〜随分と余裕だね」
「じぁあ遠慮なくオフェンスをさせてもらうか」
「なぁ、久しぶりにアレやらないか?」
「アレかぁ〜。多少のパスミスは見逃せよ?」
「もちろん」
「じゃあ…」
「「勝負だ!!」」
最初にボールをもらうのは俺だ。ポジションもここだしな。とりあえず左手でボールをカバーするようにしながら右手でドリブルをつく。これで余程のことがない限りドリブルカットはされない。
相手もディフェンスを詰めてこない感じだから俺は玲音にアイコンタクトを取る。
ーそろそろいけるか?ー
ーいつでもだぜ!ー
俺はU15の時から使っていた空いた手で首元のシャツを摘む合図をだす。瞬間、玲音はリングに向かって勢いよく走りだす。急なことにより玲音に付いていたマークは外れフリーとなる。
今度は俺がドリブルをつきながらタイミングを図る。この感じだとフロントチェンジをした後にビハインドドリブルで右手にボールが戻ってきたタイミングで良さそうだ。
ーここだ!ー
俺は右手で下から上に放り投げるようなパス、アンダーパスを玲音とリングの間ら辺にリングよりも少し高いパスを放つ。
「ドンピシャだぜ相棒!」
ガゴンッ
「「なっ!?」」
ザワザワザワザワザワザワザワザワ
「ナイスシュートだよ、いや、この場合はナイスダンク!」
「多少のパスミスがとか言っておきながらナイスパスだぜ。現役と間違われるぐらいだぞ?」
「まだまだ現役だった時よりは劣ってるよ」
「ちょっ、ちょっと待て!今のはまさかア、アリウープ?」
「あ、ありえねぇ」
「なんだよ。市選抜だって威張ってたくせにそんなに驚くもんか?市選抜の中にもできるやついるだろ?なっ、幸也」
「あぁ、市選抜だったらこんぐらい出来て当然かと思ったし、なんなら今のプレーは俺達にとって挨拶代わりのもんだしな」
「「いや、ありえねぇよ!!」」
玲音のダンクによって1ー0。そして次も俺達のオフェンスとなる。
「今から宣言してやるよ。俺と玲音のオフェンスだけでこの試合は勝負が付く。お前達がオフェンスすることは無い!」
そこからはもう、一方的と思われるようなプレーの連発だった。
再びボールをもらった俺はそのままスリーポイントシュートを打ち、綺麗に決め3ー0となり、その次に玲音がレッグスルーからのシュートフェイク、相手が飛んだところで俺にリターンパスが回り、玲音はダッシュ。そしてもう一度アリウープ。これで4ー0だ。やけくそとなったナンパ野郎達は簡単なフェイクにすら引っ掛かり、あっさりと抜かれ、ヘルプに来ればパスを出し、外からの特点。ヘルプに来なければそのままレイアップとシュートを外すことなく14ー0まで来た。
「幸也!最後はよろしく〜」
「分かった」
最後の1vs1となるオフェンスが始まった。
俺は普通にドリブルをした。そして相手は呆気にとらわれる。
そりゃそうだ。ずっと高難易度のプレーをしていたのだから。だからだろう、ナンパ野郎は俺が油断してると思ってドリブルカットに来た。これが罠だとも知らずに…
俺はビハインドドリブルであっさりとかわし、ヘルプで来たもう一人とも勝負を始める。
フロントチェンジすると見せかけて同じ腕でドリブルするインサイドアウトから、ドリブルでボールを斜め前に大きく突き出し、逆の手で引っ張ることでサイドチェンジする高等技術であるシャムゴット、最後にビハインドドリブルをしたらアンクルブレイクの完成だ。盛大に転んだ相手を見下しながら最後にゴール下からシュートを決め、15ー0で俺達の完全勝利だ。
「ば、化け物だ」
「市選抜であるのに何故だ!」
「「お前らは一体何者なんだ!!」」
「なんだ?俺らのこと知らないのか?市選抜だと言うのに?」
「こんなこと言うのもアレだけどこれで市選抜かぁ〜。そんなことより俺らは何者かだって?」
「俺の名前は米谷幸也。元U15のPG、背番号7番だ」
「そして俺が幸也な相棒である桐谷玲音。元U15のF、背番号4番でキャプテンだ」
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