第1話 プロローグ
アフリカ大陸の西の上空を、高速で飛行する物体があった。
鋭角的な鋭さを強調したような外見はまるで中世の騎士が身に纏う甲冑を彷彿とさせ、しかし見方を変えると、それは甲殻虫の外殻のような非常に生物的な姿をしていた。
燦々と輝く太陽の光に照らし出された半透明の体は、まるで丁寧にカットされた純白のダイヤモンドのように光輝き、七色に太陽光を乱反射させていた。
そしてそのすぐ後ろには、同じような姿をした物体がもう一つ、前方の純白の騎士を追うように飛行していた。
漆黒の闇のように深い黒色の鎧を身に纏ったもう一つの物体は、さながら中世暗黒時代に存在していたような黒騎士そのもののようである。
黒の騎士が純白の騎士の背後に追いつくと、両肩の装甲を開いた。
内部には砲門が内蔵されており、前方を飛行する純白の騎士に照準を合わせると真紅のビーム粒子が放たれる。
より貫通力を増すために収束されて発射された真紅の粒子は純白の騎士のすぐ真下を通過……いや、純白の騎士が寸でのところで微妙に上昇し回避した。
回避されることを予め予測していたのか、黒騎士は気にも止めずに手に持っていた巨大な大剣、グレートソードを前方へ突き出した。
突き出されたグレートソードの刀身が左右に割れ、中に収納されていた二門のビームキャノン砲が純白の騎士に狙いを定める。
躊躇なくビーム砲を連射する黒騎士に対し、純白の騎士は体を上下左右に揺らしながら高速で飛行し、ビームを紙一重で回避する。
純白の騎士の、その一瞬の減速の隙を突き、黒騎士が一気に加速、砲門を閉じ、再び巨大な剣に変形させて斬りかかる。
「終わりだ、比呂弥!」
純白の騎士――「比呂弥」と呼ばれた個体は咄嗟に危険を察知し、腰に装備された二本のロングソードを上半身の前で交差させて黒騎士の一撃を防いだ。
重い金属同士がぶつかり合う轟音が鳴り響き、摩擦で火花が散る。
「昇兄貴……俺は、あんたたちを止めなきゃいけない……止めなきゃいけないんだよ!」
「昇」と呼ばれた個体は口端を歪ませて笑う。
「口で言うだけなら容易いが、それ相応の実力が伴っていないことを死んで悔やめ、比呂弥」
言い切り、一旦離れると、再び切っ先を比呂弥に定めた。
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