第185話 唯一王 衝撃の事実を知る
「……スキだらけです。策がはまったと思って、油断しましたね」
「貴様っ、この野郎!!」
アズレイルは慌ててフリーゼを追うが、すぐにフリーゼは後方に下がる。
そして、二人の間に彼が立ちはだかった。
「アズレイル。相手は僕に任せて!」
そこにいたのはレシアだ。
「大丈夫か、レシア」
「アズレイルとは、因縁があるんだ。だから戦わせて」
「わかった。信じてるよ──」
レシアの、真剣な目。覚悟を決めているというのがわかる。それなら、任せる以外に選択はない。
「待て、また一匹いるぜ!」
アズレイルがピッと指をはじくとミノタウロスが襲い掛かってきた。
「いくらレシアでも、こいつら同時は無茶よ」
レディナの言う通りだ。
「僕が行くフィッシュ!」
すると、ハリーセルがミノタウロスに立ち向かっていく。
「ハリーセル、大丈夫か?」
ここにハリーセルが得意な水中はない。陸では動きが制限されるはず。
しかし、ハリーセルの表情に不安はなかった。
「大丈夫フィッシュ。任せろでフィッシュ」
強気な表情を向けるハリーセル。その間にもフリーゼはスワニーゼとソルトのところへ向かい、奪い取った鍵を渡す。
そしてスワニーゼは再び鍵穴に鍵を差し込む。
ガチャリ──。
鍵は、開いた。
「フライさん、行きましょう」
「わかった」
俺は振り返って、二人に言葉をかける。
「二人とも、信じてるよ──」
「ありがとうフィッシュ!」
「任せて──」
二人とも、
そう強く願い、俺達はこの場を後にしていった。
そして俺たちは道をさらに進む。
再び、さっきのような大きな部屋にたどり着く
石造りの建物があって、それが破壊されたような、荒廃した雰囲気の部屋。
倒壊した石壁や石柱が所々に目につき、神秘的な雰囲気を醸し出していた。
俺達は足元に気を付けながら前に進み、大きな扉の元へ。
「ここは、ソルトの力で開けられるはず。お願い」
スワニーゼがそういった時、フリーゼが話しかけた。
「敵の気配はありません。ここでいいでしょう」
フリーゼが、真剣な表情でスワニーゼに話しかける。
スワニーゼは、言葉を返すが、その中に動揺の感情が混ざっているのが理解できた。
「な、何よ──。早く行きましょう、先へ」
「今度は、どんなミスのふりで私達を分断させるつもりですか? 体力を消耗させるつもりですか?」
フリーゼは、じっとスワニーゼを見ている。何があったのかわからない俺は二人に目線を交互に配った後、フリーゼに話しかけた。
「どういうこと? フリーゼ、理解できるように教えてくれ」
しかし、フリーゼは俺に目も合わせずスワニーゼをにらみつけてる。
「ほらフリーゼ、フライさんも戸惑ってるわ。早く次の場所に行きましょ」
「わたしの目は、ごまかせませんよ。先ほど、ミノタウロスがソルトに襲い掛かり、あなたがかばった時──」
「うっ──」
その瞬間、スワニーゼの表情が引きつり、一歩足を引いた。
「一瞬だけ、力を解放しました。私は見逃しませんでした──自分の正体をばらすリスクを踏んでも、ソルトを救ったのを。そして、その行いで、あなたは正体をさらしたことにもつながります」
そして、フリーゼはピッとスワニーゼを指さす。
「貴方は、熾天使。そして、全ての黒幕ですね、スキァーヴィも、裏で操っていた。違いますか?」
フリーゼの、問い詰めるような言葉。スワニーゼは両手をぶんぶんと振って、引き攣った笑みを見せて否定する。
「フリーゼ、さん。冗談はよしてよ。そんな訳ないじゃない! 私は人間で、スキァーヴィの侍……」
「すべて嘘なのでしょう。あなたの生い立ち、全て。さっきも言いました。全員にわかるようにはっきりと言います。とっさにソルトさんを守ろうとしたとき、あなたの体は強く光りました」
「仕方ないじゃない。彼女を守るため──」
「隠していたんですね。熾天使の気配を、しかし、ミノタウロスの攻撃を受けよう押したとき、あなたは障壁を作ろうとして、一瞬だけ熾天使の力を解放しましたね。見逃しませんでしたよ」
フリーゼの、強気な表情。ハッタリではない、確信しているというのがわかる。
俺は、その事実に圧倒されてどう言葉を返していいかわからない。
俺から見たスワニーゼは、暴君であるスキァーヴィに人質を取られ、けなげに政務をこなしている人だった。
誠実で優しいが、スキァーヴィの暴挙っぷりに精神を病んでいる。
……そんな印象だった。
「そうですか……」
スワニーゼはボソッとつぶやいてソルトの方へ向かった。
ソルトは、突然の事態に状況が読み込めないのか、オロオロしている。
「させないわ!」
事態を察したレディナとフリーゼがソルトに向かうが、すでに一歩遅く、スワニーゼはソルトのそばによると、右手で首の根っこを掴んだ。
「一歩、届かなかったわね」
「あんた──どういうつもりよ」
レディナの質問にスワニーゼはニヤリと笑みを浮かべた。
それは、今までの清楚で不遇な印象の彼女ではない。
熾天使としての本性をあらわにし、俺達に敵意を向けている表情だ。
「どうって、決まっているでしょう。あなた達を消すのよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます