第109話 唯一王 精霊クリムと出会う

「では皆さん。巡礼祭の方、無事に行うことができるように頑張りましょう」


「──そうだね」


 全員が意気投合する。ぜひとも、役に立てるように頑張りたい。


 そんないい雰囲気で街をしばらく歩く。


 ほどなくして俺たちは大聖堂「ミーミル」へとたどり着いた。

 この神秘的な雰囲気の街でもひときわ存在感を放っている白亜の建造物。


 金銀などの派手な豪華さこそないものの、神秘的で大天使が持っている権威を感じさせられるつくりの建物だ。


 そして建物の上には女神の銅像。

 手を合わせ祈りをささげているポーズ。


「おおっ、なんか大きくて神秘的フィッシュ。綺麗フィッシュ」


 ハリーセルがぴょんぴょん飛んではしゃぐ。確かに、女神の銅像に、白い建造物。

 整備が整っているのか、伝統を感じさせながらも古びた感じは全くない。


 その光景が、この大聖堂が国民たちに愛されていることを強く感じさせていた。


 その後、門番の兵士が警備をしている。場所へ。


 メイルが兵士たちに説明をする。説明をする事数分ほどで、クリムが俺たちの方へと戻ってきた。


「大丈夫みたいよ。さあ入って」



 そして俺たちは入口の警備の人に頭を下げ、中へ。


 天井や壁には見たことがない文字や神秘的な幾何学的模様の絵が描かれている。

 床には赤いじゅうたんが敷かれており、それをオレンジ色のランプが照らす。


 今まで見たことがない不思議な雰囲気その光景に俺達は



 それから俺たちは待合室のような場所に案内される。そこにはソファーがあり、長旅の疲れからか俺たちは一息ついて腰かけた。



 それから少しの時間がたったのだろうか。





 コンコンとノックの音が聞こえた。直後にドアが開き、誰かが入ってくる。


「誰フィッシュか?」


「あなたがフライね。私がクリムよ、よろしくね!」


 そこに現れたのは腰に手を当て、挑発的な目で笑っている女の子。

 ハリーセルと同じくらいの小柄な体系。

 クリーム色でくるりとウェーブがかかったかわいらしい髪形をしている。


「クリム。あなただったんですか?」


 驚くフリーゼ。それ以上に俺も気になったことがある。


「フリーゼ、名前を知っているみたいだけど、彼女のこと知っているの?」

「はい、彼女、クリムは精霊の一人です。昔は、よく会話をしたりしていました」


 その言葉に驚く俺。俺が驚いている間、フリーゼはクリムに話しかける。


「あなたも解放されていたんですね、よかったです。こちらは私を解放してくれたフライさん。あとはレディナ、ハリーセル、レシア。精霊たちです」


「ふ~~ん」


 そしてクリムは俺に向かって接近時、顔をまじまじと見てくる。

 俺は、容姿に優れているわけではない。なので、そんな風に見られてドキドキしてしまう。


「クリムさん。どうしたんですか?」


 そしてクリムは再びフリーゼに視線を戻す。気のせいか、フリーゼはクリムが俺を見ている姿を見て、どこかむっとしているように見えた。


「なるほどねぇ」


 クリムはそれを見て何かを察したせいか、にやりと笑みを浮かべ、フリーゼに質問した。


「どこまで行ったの。交尾はもうした?」


 その言葉にフリーゼはココアを噴き出してしまう。ゴホゴホとむせ返り、真っ赤な顔で言葉を返す。


「そ、そ、そ、そんなハレンチなことはしていません。それに私達は、恋人同士ってわけではありませんし……」


 クリムの思いもよらない挑発的な質問。フリーゼは両手を振って否定する。

 当然だ。確かにフリーゼの本心は理解しているし、大切な仲間だと思っている。けれど俺たちはそんな関係でない。


 しかし否定しているフリーゼの姿は心なしか、動揺しているように見えた。


「え~~っ。あなたの顔が嘘だって言っているわ。白状しなさい。どこまで行ったの? キス?」


 さらに問い詰めるクリムに、フリーゼは顔を真っ赤にして言葉を返す。


「そ、そんなことはありません。そもそもなぜ付き合っている前提なのですか??」


 あわあわと、完全に動揺している。

 そしてそれを見たクリム、俺のほうに接近して強引に腕を組んできた。


「だって、フリーゼ、あなたに興味ないって」


「そ、そういうわけでは──」


「じゃあ、私と付き合いましょう。男の人って、若い女の子の方が好きなんでしょ。私の方が、フリーゼよりも若いし、外見だってそう見えるわ。さあ、どうする?」


「クリム、フライさん、嫌がっています。辞めたらどうでしょうか?」


 フリーゼの冷静な返しに対して、クリムからかうような笑いでさらに言葉を返す。


「あら、嫉妬しちゃってるの? ごめんねフリーゼ、フライが、私のものになっちゃうかも」


「そんなこと、絶対にありませんから」


 そんなことないから。そしてフリーゼに視線を向ける。

 いつもは冷静なフリーゼの表情に、ピキピキとひびが入っているのがわかる。


「おい、そろそろやめないとフリーゼが傷つくだろ。やめてくれクリム」


 観念したのか、クリムはため息をついて俺から腕を話した。


「──まあ、仕方がないわね。いじめるのはここまでにしておいてあげるわ」


 しょんぼりしているような、むっとしているような表情をしているフリーゼ。俺は彼女にそっと近づき、慰める。


「フリーゼ、その……、ごめんね」


「──ありがとうございます、フライさん。しかし……、もっと早く否定してほしかったです」


 フリーゼの頬が、ほんのわずかだがぷくっと膨れているのがわかる。安心してくれフリーゼ、そんな趣味は俺にはないからな。

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