第75話 唯一王 ゴブリンたちと決戦
そして、この場から撤退をしようとしたその時──。
「ウギャァァァァァァァァァァァァァァァ──」
ダンジョンの奥から耳をつんざくような音が聞こえだした。それも複数。
「ゴブリンたち」
小柄ながらも筋肉質な体系。褐色の肌。
恐らくミュアたちを襲ったゴブリンだろう。
ゴブリンたちは俺達の方へと足を進めてくる。
俺達をギッとにらみつけながら──。
「返してほしいって言っても、聞いてくれないようね」
「レディナの言う通り戦うしかないフィッシュ」
ゴブリンたちの数は大体十数体。かなり多いな。
二人の言う通り、明らかに俺たちに敵意を向けているのがわかる。
どうやら、俺達をただで返す気はないらしい。
俺達はそれぞれの武器を召喚し、戦う準備をする。
詳しい強さはわからない。しかしミュアやキルコが歯が立たないということはそれなりの強さはあるということだろう。
とすると、キルコをどうするかだが──。
「ミュア」
「フ、フライ……、そいつら強いよ。戦うの?」
ミュアは、ゴブリンを見た時からとても震えている。おそらく戦力にはならない。よほど怖いのだろう。
「キルコを頼むぞ」
「──うん」
そしてミュアにキルコを渡す。
振り返ると、棍棒を持ち、今にも襲い掛かろうとしているゴブリンの姿。
「フライ、こんなやつら、すぐに倒すわよ!」
俺は精神を集中させフリーゼたちに魔力を供給する。正直四人に供給し、自分も戦うとなると苦しい。
しかし甘えたことは言ってられない。自分だけ安全なところにいたら、彼女たちとの関係にひびが入るかもしれない。
レディナも苦戦しているようだ。
一人のゴブリンがレディナの胸を鷲掴みをする。
「何よこいつ、わざとやっているでしょ」
うらやまs……じゃなかった。
素早い動きで攻撃をかわし、別のゴブリンが背後からレディナに襲い掛かる。レディナもそれに対応し、有効打にはならないものの、苦戦を強いられている。
一人一人の強さはそうでもないが、集団で連携して襲い掛かってくる。
「こいつら、すばしっこいし嫌なところをついてくるフィッシュ」
ハリーセルも、ゴブリンたちに苦戦している。パワーもスピードもハリーセルは勝っているものの、ゴブリンたちは巧みにその攻撃をかわす。
そして同時に四方八方からハリーセルに反撃。ハリーセルは体を後ろに投げて何とか反撃をかわした。
「こいつら、コンビネーションがすごいフィッシュ」
おまけに天井があるせいで外よりも身動きがとりずらい。その影響もあり苦戦を強いられているようだ。
そして、フリーゼ。彼女もゴブリンの連携した攻撃に苦戦を強いられている。
四方八方から攻撃を受けるフリーゼ、何とか有効打を防いでいるものの、やはりてこずっている。
そしてしびれを切らしたのか、フリーゼは叫ぶ。
「だったら、こうすればいいのです」
するとフリーゼは驚愕の行動に出始めた。
なんと目をつぶり、両手を広げ、無防備になり始めたのだ。
「フリーゼ、危ない!」
いくらフリーゼでも四方八方から殴られたら致命傷になりかねない。俺も、フリーゼのところに向かおうとしたが、俺もゴブリンと戦闘を行っているせいで向かうことができない。
そしてその瞬間、チャンスだと思ったゴブリンたちが集団で一気に襲い掛かる。
するとフリーゼはぱっと目を開けた。
「甘いです!」
フリーゼの眼前まで棍棒を持ったゴブリンが急接近。
するとフリーゼは力任せに剣を振り一回転。ゴブリンたちはすぐにガードの体制をとる。
「その程度で、私の攻撃を防げるとでも──」
フリーゼは襲い掛かってきたゴブリンたちをパワーではじき返す。
ゴブリンたちがガードしようとその上から彼らを切り裂く、背後から襲ってきたゴブリンには回し蹴りを食らわせた。
パワーでごり押しという表現がふさわしい。しかしそれがゴブリンに致命傷になっている。
ゴブリンたちはガードした場所を貫通して切り裂かれ、回し蹴りをくらったゴブリンは大きく壁にたたきつけられた。
その様子を見てゴブリンたちが震えあがっているのを感じている。
「さあ、覚悟してください! あなたたちがどれほど連携をとろうと、その上から力押しで叩き潰して見せます」
フリーゼが真剣な表情でゴブリンたちをにらみつける。
フリーゼは、一人でもSランク時代の俺たちを圧倒していた強さがある。こんなゴブリンたちに負けるわけがないのは明白だ。
ゴブリンたちは八つ裂きにされたゴブリンを見るなり、互いにきょろきょろと目を合わせ始める。
それだけじゃない。両足ががくがくと震えていて恐怖に震えているのがわかる。
それを見たフリーゼ、追い打ちをかけるように彼らに剣を向け、言葉を進める。
「さあ、次に身体を切り裂かれるのは誰ですか?」
そして次の瞬間──。
ウギャァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!
フリーゼと戦っていたゴブリンたちは尻尾を巻いて逃げていく。
俺やレディナと戦っていたゴブリンも、その姿に釘付けになる。
「さあ、その体を切り裂かれたいものは私の前に出てきなさい。私の仲間を傷つけたものも、かならず同じ運命をたどらせます」
その言葉にゴブリンたちはとたんに動揺しだす。そして──。
ウギャギャギャァァァァァァァァァァァァァ!!
ダンジョンの奥の方へ尻尾を巻いて逃げていった。
その姿を見て俺たちはフリーゼへと近づく。
「ありがとうフィッシュ」
「さすがねフリーゼ、あの厄介なゴブリンを。やるじゃない」
「レディナの言う通り、す、すごいなフリーゼ。さすがだよ」
俺たちはいっせいにフリーゼをほめたたえる。しかしフリーゼは謙遜しているためかフッと笑い、冷静に言葉を返す。
「どういたしまして。こういうやつらの攻略法は心得ていますから」
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