第37話 フリーゼの、かわいい服装

「そうよ~~、こいつをメロメロにするの」


 マジかよ。しかもフリーゼの奴、その言葉を聞いてちょっと悩んでる。

 戸惑いつつも、二人の必要な押しにだんだん乗り気になっていくのがわかる。


「──了解しました」


 とうとう首を縦に降ってしまった。

 そしてハリーセルがフリーゼの腕をつかんで試着室へ。



「とりあえず、フリーゼは、この服を着て見るといいフィッシュ」


 そう言って服を試着室へ持ち込み、フリーゼが着替え始める。

 数分もすると彼女が出て来る。


「フリーゼ、その服装は──」


 出て来たフリーゼの来ている服装に驚く。


 ホワイトプリムに、灰色と黒を基調とした普通のメイド服だが、衣装が少しアレンジされているようで、スカートが短めに調整されている。


 それだけでなく、大きな胸が強調され、かなり魅力的な恰好になっている。


「年頃の男性に喜んでもらうためには、どうすればいいか考えてみましたがこのような服装になるのが一番だと考えました」


「どうフィッシュ。かわいい服装でしょフィッシュ」


「フライさんに、喜んでもらうには、こういった色っぽい服装をするのが一番だと感じました」


 確かに、とても色っぽい。とてもかわいいと思う。

 フリーゼも、そのかわいい服装を恥ずかしがっているようで、恥ずかしげに目をそらすフリーゼの姿を見て、思わずドキッとしてしまう。


「あの、多少はいやらしことをしてもかまいません、流石に二人の愛の結晶を作る──とまではいきませんが」



 親指を噛みしめ、色っぽい目で見つめてくる。どこで覚えて来たんだこいつは。


「どう、フリーゼに欲情した? フリーゼ、最初は嫌がっていたけど、服を着た途端乗り気になっているでしょ。もともとそういう子なのよ、彼女は」


 確かに、フリーゼはそういう所がある。冷静な性格に見えて、来るときはグッと迫ってくる。

 しかし──、そのイタズラで考えた服装では──。


 どう反応しようか数秒ほど考える。

 よし、こう話せばフリーゼは理解してくれそうだ。


 俺はフリーゼに優しく語り掛ける。


「フリーゼ、確かに今のお前はとても色気があってかわいいと思う。けれど、その服装でダンジョンに行くわけにはいかないだろ。動きにくいし」


 フリーゼは自身の姿を身をよじり、まじまじと見ながら痛感する。戦闘のように、身体を動かすには向いていないと。


 おまけにダンジョンに行けば服は絶対に汚れる。だから、勝負服を着せるには不向きすぎる。


「確かに、そうですね……」


「だから今回は普通の服装にしてくれ。お前がかわいいのは認めるから。頼むよ」


 その言葉にフリーゼは少しだけ残念そうな表情をした後、言葉を返した。


「分かりました。残念ですが──、もっと機能的な


「その服装じゃ、フライの理性が持たないみたいよ」


「断じて違う」


 レディナのからかうような言葉に、冷静に返す。

 そしてレディナは俺をじーっと見てくる。


「最後はフライよ」


「お、俺? 別に困ってなんか──」


「たまにはかっこいい服装して、私達をドキッとさせて見なさいよ!」


 俺の言葉を遮る物言い。これは、半端なものを選ぶわけにはいかない。



 変な服を選べば突っ返されること必至。下手なものは選べない。

 かっこよくて冒険に支障が出なさそうな服。


 俺はハンガーにかかっている服を一つ一つよく見る。


 これは、サイズが合わなさそう。

 このシャツは──俺には明るすぎて合わなそう。


 そしていくつかの服を見ると、一つの服が視界に入る。

 これだ。俺は目の前のハンガーにかけてある服を手に取る、黒を基調としたローブだ。


「これ、どうかな……」


 レディナが腕を組んで俺をまじまじと見る。おいおい、そんなに見つめられると緊張するだろ。


「まあ、五十点ってところね。合格点はあげてもいいわ」



「私も、いいと思いますよ」


 フリーゼも、納得してくれた。じゃあ、これにしようか。

 そして俺はサイズが合っているか試着室で着て見る。うん、サイズはぴったりだ。


「マスター、この服が欲しいんだけどいいかな?」


「あいよ。お会計ね」


 そして店主のおじさんにお金を払う。

 俺たちは会計を済ませて店の外へ。






 そして俺たちは今日から拠点として泊まるホテル探しとなった。


 繁華街から歩いて十分ほど。ホテルや大きな商店などが集まる場所へとたどり着く。


「とりあえず、このホテル、空きがあるか試してみようか」


「そうですね、行ってみましょう」


 そして俺たちはホテルの中へと入っていく。こじんまりとした、あまり高級感がなさそうなホテルだ。


 あまり資金に余裕があるわけではないので、高くなさそうなホテルを選んだ。

 フロントにいるおじさんに、部屋の空きがあるかどうかを聞く。


「ああ、一室空きがあるけど。それならいいよ」


「一室、ですか…」


 流石に男女一緒の部屋でしばらく一緒に生活するというのは気が引ける。

 もし欲情してしまって間違いが起こるなんてあってはならない。


 仕方がない、別のホテルを探した方が──。


「了解しました。その部屋、しばらく借りさせていただきますね」

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