第31話  唯一王 フリーゼと間接キス

「そういえば、フライさんにお伝えしたいことがあるんでした」


「──何があったんですか?」


「ここから遠い地方に、フリジオ王国という国があります。そこの商人がこのギルドにやってきて先日武器の紹介をしている中で話しかけてきたのですが──」


 そしてリルナさんが話してきた内容に俺たちは驚愕した。


「精霊がいたって?」


「はい。あくまで噂ですが、精霊と名乗る人物がギルドに登録されていて、活動しているとか──。信憑性は、定かでなはいですが」


「一人で行動しているということですか?」


「はい、フリーゼさん。以前は仲間がいたそうですが、今は一人だと──」


「そうですか──、確実に精霊かどうかは不明です。しかし他に手がかりがない以上行ってみる価値はありと思います」


「遠い場所。行ってみたいフィッシュ」


 理由はどうあれ、二人とも行くことには賛成している。だったら、答えは一つだ。


「分かりました。フリジオ王国ですね、ぜひ行かせていただきます」


「了解しました。それでは馬車の手配など、準備の打ち合わせをしましょう」


 そして俺たちは遠征のための打ち合わせを行った。

 精霊がいると確証があるわけではないが、いい情報があるといいな……。


 その後、俺たちはギルドを出た。

 街を歩きながら、二人に話しかける。


「とりあえずさ、何か食べながらゆっくりこの後のことを考えよう?」


「そうですね」


 ということで近くにある喫茶店に俺たちは移動。


「おおっ、なんかかわいい店だフィッシュ!」


「──ですね、全体的に先日来た喫茶店よりかわいい雰囲気です」



 二人とも、この店の雰囲気を好意的に見ている。嬉しい限りだ。

 店の中の壁はピンクを基調としていて、可愛い小道具やぬいぐるみなどがちらほらと飾られ、おしゃれな雰囲気をしている店。

 若い女性が多くて自分がここにいることに違和感を感じるくらいだ。


 このおしゃれな店、うわさでは聞いていたが、この店に俺一人で入るのは恥ずかしい。

 でも二人なら喜んでくれると思ってこの店を選んだんだ。

 だから喜んでくれてとても嬉しい。選んだかいがあった。


 そして俺たちは屋外にあるテラス席に腰かける。


 店員の人がメニューを渡してきた。


 俺はコーヒーとケーキを頼もう。二人はこういう店に来るのは始めてなせいかメニューをまじまじと見ている。


「何を頼めばいいかよくわからないフィッシュ」


 確かに、ハリーセルにとってはお店なんて初めてだ。ハリーセルが喜びそうなものは──、これがいいな。


「この、パフェなんていいんじゃないかな」

「パフェって?」


「クリームとかがあって甘くておいしい食べ物のことだよ」


「はい、私違う店で食べたことがあります。えーと、あの席で女の子が食べているやつがそうです!」


 その光景を見たハリーセルは目をキラキラとさせながらそのパフェを指さした。


「おおっ、おいしそう。私あれが食べたい!」


 そして俺が手に持っていたメニューを強引にとる。


「じゃあ~~~~、私一番大きそうなハイパー特製超大盛フルーツパフェが食べたい」


「俺は、コーヒーとケーキでいいや。そこまでお腹空いていないし」


「そうですか。私も同じのをお願いします」


 そして店員の人に注文を頼む。



 これからの生活のことなどを話しながら、料理が出て来るのを待つ。それから十分ほどするとやってきた。


「お待たせいたしました。ハイパー特製超大盛フルーツパフェ一人前とコーヒー、ケーキ二人前です」


 その姿に俺とフリーゼは唖然となり言葉を失ってしまう。

 理由は、パフェにある。

 まるで金魚鉢のようなサイズにたっぷりとクリームが入っている。そんな特大なパフェ。


 見ているだけで胸焼けしそうだ。

 正直一人で食べられる分量とは思えない。


「──俺も、少しくらいなら手伝ってやるよ」



「その時は、よろしくお願いします。私も、手伝おうとは考えています」


「すごいフィッシュ。本当に一人で食べきれるのかフィッシュ」


 二人とも人の顔と同じくらいのサイズのパフェに気圧されている。


「とにかく、食べるフィッシュ。味は……おいしいといいフィッシュ」


 そしてハリーセルが意を決してスプーンを口に運ぶと、その瞳がきらめいた。



「おおおっ、味はすっごいおいしいフィッシュ。皆も食べてみるといいフィッシュ」



 しょ、しょうがないな……。

 俺は生クリームを崩してのっかっているフルーツと一緒に口に運ぶ。


 た、確かにおいしい。

 生クリームの濃厚な甘さと、フルーツのさわやかな酸味がとてもマッチングしていてたまらない。



 フリーゼにも、食べさせてあげたいなぁ。きっと、喜ぶと思うから。

 そして俺はスプーンでクリームとフルーツを救ってフリーゼの口元へ。


「ほら、フリーゼ、もっと食べて」


「──わかりました。ではもう少しだけ」


 そしてフリーゼは俺が差し出したフォークを口の中に入れた。


「どうフリーゼ、おいしい?」


「……これ、おいしいと思います」


 うっすらとだが、彼女が喜びの表情をしているのがわかる。フリーゼが喜んでくれて何よりだ。


 すると、フリーゼがとある事実に気付く。


「間接キス──になってしまいますね」

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