第21話 砂漠の街
ルディールが魔道書や書物を買い漁り友人達のお土産なども購入し終わったので、また外に出て街の散策を始めるとテテノとタリカのルディールを見る目がかなり変わっていた。
「ルディールさんって何処かの国の貴族か王族ですか?」
「どこをどう見たらそう見えるんじゃ?貴族や王族が人前でう○ことか言わんじゃろ」
ですよねーと二人は勿体ない人を見るような目でルディールを見た後に大量に買った本について尋ねる。
「ルディールさん。あれだけ大量に本を買ってどうするんですか?」
「ん?村の図書館に寄贈じゃな。家に置いておくには流石に多すぎるからのう」
ルディールの持つ指輪のお陰で読むと一発で内容を理解し覚えてしまうので立ち読みなどはしない様にしているので気になる本は片っ端から買うのだが、テテノやタリカにその事を言う必要はないので少しの嘘を混ぜつつ答えた。
「リベット村の図書館って凄い事になってるらしいですね。王都の教会でも噂になってましたよ。と言うかルディールさんお金持ちだったんですね」
「欲しい物は多いが高くないものが多いのと、たまに頼まれる依頼がありがたい事に高額なものが多いから金銭ではあまり困る事はないのう」
「ううっ羨ましい……私なんか借金まみれなのに……」
話が変な方向に向かい始めたのでルディールは流れを変える為にテテノに王子とどんな内容を話していたのかを尋ねる。
「え?王子様との会話ですか?そうですねー……授業の事とか世間話ですね。あとソウ・パーチ先生はいないのか?と気にしていましたよ」
「なんじゃい。浮ついた話とかダンスに誘われたとかそういうのではないんじゃな」
「何を言っているんですか……一国の王子だから選びたい放題なんですから私みたいな地味子を選びませんよ。それこそルディールさんがアタックしてみては?」
「ん?そうじゃな~怒りの王子や悲しみの王子ぐらい強くかっこよければいいんじゃが……今のままじゃと何か匂うからパスじゃな。」
「その方々は知りませんが……ルディールさんが格好いいって言うぐらいですから気になりますね」
「テテノさん面食いなんですね」
「違いますよ!」
ルディールやタリカがテテノをからかいながら街を観光していると、街の中央にあたるであろう場所にたどり着いた。
そこにはルディール達の背丈の何倍もある巨大な噴水があり、そこから水が止めどなくあふれて水路を伝ってサンファルテに広がっているようだった。
その噴水の近くでは子供達が遊んでいたり大人達も足をつけたりして気持ちよさそうに涼んでいた。
その噴水に三人は圧倒されたが、約一名が二名の感動をぶち壊すような事を言う。
「まさかあの水がそのまま飲み水にならんよな?あの子供とかあそこでおしっこしたらどうすんじゃろな?あの人達も足をつけておるし……」
テテノとタリカが色々とげんなりした後に噴水に近づくと案内板の様な物が近くに立っており色々と細かくこの噴水の歴史などが書かれておりルディールが危惧していた事もちゃんと書かれていた。
「ほー。飲めない事も無いが人が飲んだりする水は別の場所で作っておるんじゃな~」
「ルディールさんよかったですね……恐れていたことが現実にならなくて」
うむ! と力強く頷くとテテノとタリカが残念な人を見る視線でルディールを見た。
視線が気になったので何か言ってやろうと二人の方向を向くとルディールの視界にローレットの司祭や僧侶といった聖職者達が着る服によく似た服装に身を包んだ人が映った。
ルディールが視線でその人達を追いかけたのでテテノやタリカもその視線を追ったのでルディールが二人に質問する。
「聖職者関係じゃよな?ローレットの教会とかそっち方面か?」
テテノはルディールと同じような感想だったがタリカは分かった様だったのでその質問に答える。
「あー……ルディールさんはあまり見ない方が良いですね。聖都ホーリスフィアの神官です。服装からしてもそこまで高位の人達ではないですが……」とタリカに言われたのですぐにルディールは視線を神官達から外して噴水の近くに座り話を続けた。
「さっきのが聖都の神官なんじゃな?ローレットの神官の服装とかなり似ておるのう」
「歴史的にみるとローレットにも昔からの宗教はありましたが、数百年前にホーリスフィアと統合して今の形になったと言われています。その時に角狩り信仰などの考えもローレットに入って来たと言われています」
「ん?ローレットは聖女信仰じゃったよな?ホーリスフィアは何の信仰なんじゃ?」
「女神信仰ですね。たしか……大昔は女神シャウナスを信仰していましたが、今は無く女神信仰になっていますね」
「慈愛の女神じゃな」
「よく知ってますね。教会でも知らない人の方が多いんですが……今はシャウナスの名は語られておらず古い本などに載っているだけでホーリスフィアは女神信仰という形になっていますね。ローレットの聖女信仰も女性だったので教会どうし馬が合って統合したみたいですね」
そんな話をしていたのでやっぱり聖職者達が気になるルディールは見ないように視界に収めながら話を続ける。
「遠いと言えば遠いが隣国じゃしサンファルテにおっても不思議ではないんじゃが……なんでおるんじゃろな?」
「多分ですけどホーリスフィアの神官とは言いましたけど中の人はサンファルテ人ですよ。サンファルテもそこまで盛んではありませんがメインの宗教は女神信仰なので」
「それ……わらわの様な角突きがサンファルテにおって大丈夫なんじゃろか?」
ルディールがその事を少し心配そうに言うとタリカが笑いながら大丈夫ですよ言って辺りを見渡すと帽子の様な物で隠してはいるがルディールの様に角のある人達も普通に生活していた。
「角の生える病気とかもあったりしますし、ホーリスフィアが馬鹿なだけで角が生えてるぐらい人と何も変わりませんよ。そんなので差別したら人間なんて毛の無い猿ですからね」
ルディールとテテノがタリカの事を聖職者に初めて見えたが……次の台詞でそれは気のせいと気付かされる。
「角が生えてるぐらいで追い出すなら一人でも信者を増やす方が遙かに儲かりますし役に立ちますからね」
「まぁ……神は人間の創作物とも言うしのう……」
タリカが誰が言ったか知りませんが良い事いいますね~と頷いた後に聖職者達は見えなくなったのでルディールは先ほど少し考えた後にここで休憩しようとテテノとタリカに言った。
二人も慣れて無い土地で疲れたようだったのでルディールの提案を聞いて休憩する事にした。そしてルディールが喉が渇いたのでテテノとタリカの分も出すので飲みものを買ってきて欲しいと頼むと二人は快く了承してその場を少し離れる。
その間にルディールは先ほどの本屋で買ったサンファルテの生物が載った図鑑を開いた。そしてその図鑑に載っていた体に砂を纏った小さなネズミのページを見ながら魔法で影で出来た真っ黒のネズミを一体ほど作る。
そしてそのネズミに足元のある砂を取り込ませると図鑑に載っているネズミとかなり似たような姿へと変わった。
「さてと……何も無ければ良いが何かありそうじゃし着けさせてもらおうかのう。仮に見つかってもわらわとは分かるまい。では頼んだぞ」
と言ってネズミの鼻を指でつつくとネズミも敬礼した後に聖職者達が消えた方向へと走っていった。
ネズミが駆けていった方向からテテノ達が丁度戻って来たタイミングだったのでタリカがいきなりそのネズミを踏みつぶそうとしたがネズミがすんでの所でかわし事なきを得た。
「お主、絶対に聖職者ではないじゃろ……」
「あ……見てましたか?ネズミには教会で働いている時に苦渋を味わわされたので……」
ルディールがタリカに対して苦笑いをしているとテテノも同じような顔をしながら買ってきた氷の入った冷たい飲み物をルディールに手渡した。そしてその飲み物の感想をお互いに言い合って休憩しているとネズミが先ほどの聖職者を見つけた。
(しばらくは付かず離れず見させてもらうかのう……何も無かったら教会に寄付して帰ろうかのう)
何かあればすぐにネズミに連絡するように言ってからルディール達は街の観光へと戻っていった。そして陽が少し傾き始めたのでルディール達は一度ホテルへと戻る。
ホテルへ戻るとロビーには装備を外した冒険者達がくつろいでいたり情報交換などをしていた。そしてその中にいた冒険者がルディール達を見かけると話しかけてきた。
「お前達、今まで外に行っていたのか?ピラミッドのアタックの日程が決まったが聞いたか?」
ルディール達のパーティーのリーダーはタリカになっているので、その質問に今戻ってきた所なので知らないと答える。
「細かい説明は後であるみたいだが四日後に決まった。体調を砂漠の気候に合わせておけよって話だな。あとは……サンファルテの王宮で歓迎会を開いてくれるらしいがその一時間前に話し合いをするんだと」
「何時から歓迎会ですか?」
「七時からだったかな?参加しねー奴はいないと思うが強制では無いから好きにしろって言ってたぞ」
そこで話が終わったのでタリカは教えてくれた冒険者に礼を言ってからルディール達と部屋に戻った。
タリカとテテノが王宮での歓迎会が楽しみと言うような話をしていたが、少し思う所があったルディールは少しホテルの中を散策してくると言って部屋をでてSランクの冒険者の部屋へと向かった。
高位の冒険者と言う事もありその部屋があるフロアにたどり着くとルディール達がいる場所とは比べものにならないぐらいに広くとても綺麗で美しい場所だった。
そして目的の部屋にいきノックすると中から返事が返ってきたので失礼すると言ってから中へと入っていく。
中はSランクの冒険者パーティーの五人がそろっており皆が皆好き勝手にくつろいでおり、ルディールを見ると手を上げるだけの人もいれば丁寧に頭をさげる人もいた。そしてロビーで話した男が出てきてルディールと向かい合って席に着く。
「ルディールさんどうしましたか?」
「うむ。大丈夫と思って堂々と来たが……盗聴とか大丈夫じゃよな?」とルディールが心配するとソファーに寝転んでいる魔法使いと少し酔っぱらっているシーフが大丈夫といったので頷いてから話を進める。
「お主達ならわらわが魔法学校でソウ・パーチという名前で臨時講師をしておるのを知っておるじゃろ?」
「はい。王女様から聞きましたし歩き方とか体のバランスがルディールさんですからね。見る人が見れば分かりますね」
「それでなんじゃが……歓迎会とやらにわらわが参加しても大丈夫か?バレた所でというのもあるが、何のための偽名と言う話になるからのう」
「確かにバレる恐れもありますが……王子では気づきませんし、護衛の方も私達が気づく程度の実力なのでバレないとは思いますよ」
「六人ほど影に潜んでいるからのう」とルディールが言うとSランクの冒険者PTのリーダーは笑いながら七人ですよ言ってルディールの引っかけを見抜いたのでそのまま話を続ける。
「実力的にはSに届かない程度なのでルディールさんとソウ・パーチさんが同一人物だとは思いませんよ」
「流石はSランクの冒険者PTのリーダーじゃな、お主がそう言うなら大丈夫っぽいのう。出ない方が目をつけられそうじゃし……」
「そういう事です。王子から話がありましたが国のお偉いさんも結構出るみたいなので出た方が色々と探れますよ。表情だけでも情報の塊ですからね」
疑ってばかりも嫌なんじゃがな~とルディールはため息をついてから歓迎会やピラミッドの事などを話し合った。そして部屋へ戻ってから少し時間が経ち歓迎会が始まった。
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