第84話 祝辞会へ
ミーナに貸し出す部屋の片付けが終わり、ルディールは自室で書き物をしていた。
「あれ?ルーちゃん、何を書いてるの?」
「ん?前にリノセス家に行ったらアコットが、お空飛びたい!るーちゃん、教えてっていうから、今ある飛行魔法をいじって子供でも使える微妙に浮く魔法が完成したから書いている所じゃな。今ちょうど書き終わったがのう」
「見せてもらっていい?」
書き終わった、るるる印の小さい魔道書をミーナに渡すと読みはじめ詠唱するとミーナの身長の半分ほどゆっくりと浮き上がった。
「うわ~浮いてるね、この魔法って高く飛べたりしないの?」
「うむ。子供用に改造と偽装してあるから身長の半分ぐらいまでが最高じゃな。かなり改造してあるからほとんど魔力は消費せんし、今ある飛行魔法のつなぎにはちょうどええじゃろ」
「へ~そうなんだってこの魔法、私も使っていいかな?まだ飛行魔法覚えてなくて……」
特に断る理由も無かったが、変に魔法を広めない様に飛行魔法と区別がつかない様にしてあったので、ミーナには学校などではしないように頼み使用許可を出した。
そしてミーナがルディールの机に目をやるともう一冊のるるる印の先ほどより少し大きな魔道書があった。
「ルーちゃん、こっちもアコットさんの?」
「そっちはリージュのじゃな、夏休みの間に魔法教えて欲しいとか言うておったが、わらわはセニアんちの祝辞会が終わったら吹雪の国に旅行に行くからのう。若干宿題込みの何種類かじゃな」
そう言うとミーナは驚いたがすぐに、ルーちゃん夏休みいないのかーと見て分かるぐらいに落ち込んだ。
その姿を見て今度はルディールが驚き、お主行かぬつもりか? と尋ねた。
「宿題や赤点が山のようにあって無理なら仕方ないが何か用事でもあるのか?」
「赤点は無いよ!宿題は多いけど……ついて行っていいの?」
「お主が行く前提で帰って来るの待っておったんじゃが?と言うか空中庭園の時のように大冒険する訳ではないし、馬車でぼちぼち行って向こうで図書館とかで歴史とかを調べたりするだけじゃぞ?」
いく!絶対に行くと元気になり、次はリージュに渡す魔道書を手に取り読んだが内容の半分も理解出来なかった。
「……ルーちゃん、これ学校で習ってない事ばかり書いてあって意味不明なんだけど……後、著者がるるるの花子って書いてあるんだけど……」
「見られた時にわらわと分からぬ方がよいじゃろ? 後、勉強もかねて問題形式で作ってあるからのう、さすがに公爵令嬢に高威力の攻撃魔法を教える訳にもいかぬからのう、解読したらわらわがよく使うシャドーステッチとシャドーニードルと最近作ったシャドーラットを覚えられるぞ。リージュは感じ的に策を弄するタイプじゃろうからな」
そう言うとルディールは自分の影の中から小さいネズミを作り出しミーナの手に乗せた。
「うわ!何これ!ネズミ?」
「うむ、ルディールさんの動物魔法コレクションの三体目じゃな。今回はちゃんと消せるし色々と魔法を組み込んであるからそのネズミの見た物を術者本人も視る事ができる様にはしてあるぞ、言うほど長く視れる訳ではないがのう」
「へ~そうなんだ。リージュさんも影の魔法をよく使うってこの前言ってたよ」
「リージュも生徒会長で自称主席じゃろ?難しいかも知れぬがたぶん解けるじゃろ、まぁ、吹雪の国に行ってもすぐに帰って来るじゃろうし帰ってきたら教えてやるかのう」
「……ルーちゃんのリージュさんへの対応が優しくなってる気がする、前は心臓に毛が生えてるとかうんこくさいとか言ってたのに」
「そりゃそうじゃろ、わらわが勝手に疑っておっただけじゃからのう。ちゃんと謝り許しも貰ったからのう」
ルディールがそう言うとミーナは色々聞きたそうだったがそれ以上は追求してこなかったので笑いながら答えた。
「ミーナよ、変に探りを入れられたくない時は、素直に話すか無言の方がいいと覚えておくとよいぞ」
「うぐっ、さすがはお師匠様。覚えおきます」
その話の流れで学校の世間話になり、リージュには隠れファンクラブの様な物があり、最近その人数がどんどん増加中との事を話し、ルディールがその事について尋ねると前よりとげとげしく胡散臭い感じが消えよく笑う様になったので男子を中心に増加傾向にあるとの事。
「そう言うのを聞くと学生って感じがするのう……」
「後はね。王女様のファンクラブも最近出来たって言ってたよ」
「王女のファンクラブとか手足に使われそうじゃな策士じゃし……お主とセニアは無いのか?」
「セニアはその内出来るだろうってリージュさんが言ってたよ。私は村娘だからね!」
「見た目と知識なら劣ってはおるまい。身分とかそういうのもあるのかのう」
ルディールがそう言うと、ミーナは少し赤くなり聞き取れない声でルディールに礼を言った
「そうそう後はね。たま~に学校の図書館に出現する角の生えた謎の美女のファンクラブもあるね。謎すぎて誰も正体が分からないから本当かどうかも不明なんだって」
「わらわもたまに学校の図書館いくが、見た事は無いのう。わらわの様な角つきの学生はそれなりに見かけるからその内の誰かの事かも知れんのう」
「ルーちゃん、たまに学校にいるもんね。前もお昼休みに図書館いったらセニアの声でだーれだとかやるから本当にびっくりしたよ」
「当てられた時はまさか!とは思ったがのう」
そう言ってその時の事を思い出して二人で笑い角の生えた謎の美女の事は分からないまま、明日のリノセス侯爵家の祝辞会への準備を進めた。
準備を始めて分かったのだが、ミーナは村娘だったので貴族が参加しそうな宴などに着ていくドレスなどを持っていなかったので急遽ルディールの持つドレスから貸し出す事になった。
「セニアは制服でいいって言ってくれてたし、よかったらドレス貸してくれるって言ってたよ?」
「他の貴族もくるんじゃろ?未来の旦那を寝取るぐらいの格好で行かなくてどうする!勝てば将来は安泰じゃぞ!」
「寝取らないよ!ルーちゃん何言ってんの!」
などと話ているとその声を聞きつけスナップがやってきたので、ルディールがゲーム中から持ってこれた数あるドレスの意見を尋ねた。
「ドレスとか着る機会は無いと思っておったがちゃんとあるんじゃな」
「ルーちゃん……いっぱい持ってるけど何処かの国の貴族様でしたっけ?」
「そんな訳あるかい。さてとスナップよ少し意見が欲しいんじゃが、どういうの着ていけばいいんじゃ?好きなのでええんじゃろか?」
「はい、それでいいとは思いますが、主役はリノセス家なのでそれ以上目立っては駄目ですわ。ルディール様が言うようにミーナ様が未来の旦那様を見つけるのであれば目立っても良いと思いますけど……」
そういうのまだいいですよ!とミーナが言ってからルディールの洋服ダンスの中にある色々なドレスをスナップに意見をもらいながら選んでいった。
ドレスの中には胸元や背中が大きく空いた物やかなり奇抜な物もあったのでそういうのは選択肢から外し、ミーナは淡いオレンジのドレス、ルディールは濃い青のドレスを選んだ。
「流石にここで着替えて行くわけにも行かぬじゃろうし、セニアの家で着替えさせてもらうかのう」
そう話し簡単に準備をしルディールは中央都市のリノセス家まで飛んだ。
リノセス家に着くとすでにメイドが待っており、ルディールとミーナを応接室に案内してくれ、そのメイドと世間話をしながら案内された。
「あれ?ルーちゃん、メイドさん達と仲良かったっけ?」
「仲が悪いという事も無かったと思うがのう。最近、果実酒とか作っておって来る時にお土産で持ってくるから餌付けに成功したんじゃろ」
そう言ってアイテムバックの中から一本取り出しメイドさんに渡すと礼を言われ、確かに餌付けされたのも有りますが、ルディール様はリノセス家の護衛として戦ってくれたのでその事も関係ありますねと言っていた。
詳しく話を聞くとルディールが国王の御前で天井まで蹴り飛ばした宮廷魔術師とリノセスのメイドの誰かが知り合いだったらしくその話が伝わったとの事、そんな事もありメイドの業界でもあそこの護衛はやばいと一目を置かれるようになったとかなんとか。
「わらわもメイド服着た方がええんじゃろか?」
「あー……似合うとは思うけど護衛の人達が全員メイド服着てるわけじゃ無いと思うよ」
そういうとそのメイドさんがどこからとも無くメイド服を取り出し、果実酒のお礼ですとルディールに手渡した。
「……どこからだしたんだろう?」
「まぁ、メイドと言うのは出会ったら冥土へと送られると言うの語源じゃからのう。何が出来ても不思議には思わんわい」
「えっ?そうだったの!?知らなかった……」
「うむ、学校行きだして変わったかな?と思ったがすぐに人を信じる所は変わりなく安心したわい」
騙された! と話していると目的の応接室に着き、ノックをしてから中に入るとセニア、アコット、ソアレ、リージュ、と何故か王女様までいた。
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