第83話 相談2
ルディールがこれからの事の相談を終え少しゆっくりしているとソアレが話しかけてきた。
「……さて、ルディールさんの前にいた世界とこの世界の繋がりがなんとなく分かりましたので、ルディールさんのとんでも魔法を私に何か教えませんか?」
「それもなんじゃよな~。そう言うのって迂闊に教えていい物なんじゃろうか?世界の均衡とか崩れたりしないのか?」
「……それは傲慢ですよ。ルディールさんは自分一人で世界を変えるおつもりですか?友人に魔法を教えた程度で世界は変わりません。川に小石を投げても流れは変わらないでしょう?」
ソアレがそう言ってくれたのでルディールが返事をしようとしたが、カーディフはソアレは魔法覚えたいだけだから駄目よと忠告が入った。
「ルディの魔法は小石じゃ無いでしょうが……さすがに川幅より大きい岩を投げ入れたら流れは変わるわよ。」
「人は新しい力を覚えたら使いたくなるしのう……という訳じゃソアレよ見て覚える事じゃな」
「……くっ、カーディフめ!余計な事を……でも私に魔法を教えるとちゃんとメリットがありますよ?」
「例えば?」
「……私がデレます。……と、冗談は置いといてルディールさんは力を隠したい、私は魔法を覚えたい、覚えると使うので目立つ。隠れ蓑になりませんか?」
「それはそれで友人を利用している様で気が引けぬか?」
「まぁ後はルディしだいよね。ソアレに教えて大丈夫と思うなら教えればいいと思うけど、ある程度にしときなさいよ。こないだソアレが使った雷の球体の魔法もすごい魔法なんでしょ?」
「そこを基準で良いかもしれんのう、過去と他人は変わらないと聞くし、わらわが教えたぐらいでソアレはブレんじゃろ。ライトニングワンダラー以上は教えぬがそれでよいか?」
そういうとソアレも納得し、ではヒュプノバオナスを討伐した時の魔法をお願いしますと言い、こちらの言いたい事があまり伝わっていなかったのうとルディールは大きくため息を付いた。
「ソアレよ。おとなしく雷の転移魔法で良くないか?」
「……それですよ。転移魔法に属性が付いてる意味が分かりませんが?ルディールさんが使うシャドウダイブもそんな感じですよね?」
宮廷魔道士が使っていたノーマルの転移魔法は魔力の消費も少なく確かに使い勝手は非常に良いが、阻害されたり自分を強化したり相手を弱体化したりの効果はないので、ルディールがソアレに教えようとしている転移魔法は雷属性で宙に猫型ロボットが出しそうな扉を作り指定した人間以外が通ると大ダメージをもらうそんな魔法だった。
「……すみません。転移魔法はルディールさんが使えますのでド派手な魔法がいいです。私の二つ名は雷光ですよ?派手に行きましょう。」
「……あんた酔ってるの?」
カーディフが呆れながらそう聞くとソアレは自分の力に酔ってますと無駄にドヤ顔をし、カーディフをかなりイラッとさせ思いっきり頭を鷲掴みさされた。
そして少し冷静? になり自分を見失っていました。と一言謝りルディールに雷の転移魔法を教えてもらう事になった。
「と、偉そうにわらわも言ったが雷の触覚を教えた時のような感じで、わらわは使えぬが説明するだけになるから頼んだぞ」
そう言うとソアレが敬礼の様なポーズを取ったのでその様子がおかしくルディールは少し笑ってしまった。
特に面白い事はしていないのにルディールが笑ったので不思議に思ったソアレが聞くと、前に魔法を教えた時よりさらに砕けたなと思って笑ったとの事だった。
「カーディフにも似たような事を少し前に言われましたね。自覚は無いですが」
などと話ながら体を電子化するとか無駄に門のデザインどうしますか?とか話、説明しながらかなりの時間が過ぎ夜になった頃に普通の転移魔法と雷の転移魔法を覚える事が出来た。
「……では少し試しに王都と灯台の街まで行ってみます」
ソアレはそう言うと覚えた魔法を使いエアエデンから消えていった。
「ソアレに魔法を教える度に思うんじゃが、この世界の魔法使いは皆あれぐらい理解がはやいのか?」
「私も横で聞いてたけどルディの説明がわかりやすいのもあるけど、あの子の自力が強いんでしょ。まぁ魔法学校首席は伊達では無いと言う事ね」
「なるほどの~。それはそうとカーディフも色々と相談に乗ってくれてありがとう。目的の方向性も決まったから楽になったわい」
「どういたしまして、と言うかルディは帰りたいとか思わないの?感じ的に思い人とかいそうな気はするんだけど?」
「さてどうじゃろうな?そこはノーコメントじゃな。ソアレやスナップにも言ったが今はまだええかのう。こっちの世界も好きじゃし何かを犠牲にせねば帰られんとかなら帰らんし、普通に帰られるなら謎が解けたら帰るかも知れんのう」
「へ~なるほどね~。ちなみに誤魔化すなら顔を赤くしない事ね」
無駄に鋭いカーディフに指摘され少し吹き出してしまったがそれ以上は追求されずにソアレを待って居ると、ようやくスティレ達の特訓という名の弄りが終わり三人もこちらにやって来た。
「ルディールどの度々すまない、まずは回復魔法をかけてもらえないだろうか?」
スティレからのリクエストを受け回復魔法をかけると体中の痣や小傷が消えていく。
「うむ、これで良かろう。もうバルケやスナップを二人同時に相手をしても余裕ぐらいにはなったか?」
「ああ、数秒もらえれば十分だ……と言ってみたい所だが、邪神にでも乗り移られない限り無理だな」
「と、謙遜なさっていますが、スティレ様はかなり目がいいので私達の動きなら目だけは追い付いていましたよ?体は全く付いていて来れてませんでしたが」
「それが弱点にもなってるんだよな~目が良すぎて簡単なフェイントにすぐ引っかかるからな」
「なるほどの~スティレは剣士というより魔法で身体を強化する魔法剣士とか聖騎士とかが合っているのかも知れんのう」
ルディールがそう言うとスティレもそう思っていたようでルディールに少し相談していた。
「そういえば、ソアレ様はどうしたんですの?」
ルディールがスティレと話しているとさっきまでいたソアレの姿が無かったので尋ねると、カーディフが転移魔法の事などを伝え、まだ帰って来ないと話した。
さすがに少し遅いので皆が心配になっていると地上にいるスイベルが一枚の手紙を持ってルディール達の所にやって来た。
そして手紙を受け取り差出人を見るとソアレだったので皆で内容の確認すると一言書かれていた。
「灯台の街にいます。魔力が尽きました迎えに来てください……と」
そしてその手紙を見た全員の心が一つになり、あいつは何をやってるんだ。となった所でルディールはソアレを迎えに行った。
灯台の街から少しだけ離れた街道に飛びすぐに街に向かうとそこにはソアレの姿があったが何故か大量の荷物を抱えルディールを見かけると声をかけて来た。
「ありがとうございます。灯台の街にきたのでお土産に海鮮物を買うと、調味料も色々欲しくなりドワーフの国やら砂漠の帝国まで飛んで戻って来たら魔力が尽きました」
「まぁええんじゃが。魔力がなくなるとアイテムバッグの中にアイテムは直せんのか?」
「はい、私のやつは魔力が尽きると物が入らないタイプです。取り出すのは可能ですが……さすがにこれで魔力回復薬を使うのはもったいなくないですか?」
「別に何も言っておらんじゃろ……別に迎えに行くぐらいええわい」
そしてルディールはソアレの荷物を手に取り、転移魔法でエアエデンに戻って来た。
お土産で買ってきた大量の海鮮物や調味料を使いエアエデンの庭で簡単に調理をし楽しげな宴が始まり、ソアレに礼をいい皆は楽しんだ。
そして宴の最中にルディールはふと大事な事を思い出したのでソアレに尋ねた。
「リノセス侯爵が公爵に昇格するじゃろ?あれは参加した方がええんじゃろうか?」
「はい、王都での国王陛下からの任命式には出なくてもいいと思いますが、中央都市の本宅で祝辞会は出た方がいいと思いますよ。ルディールさんはリノセス家の護衛ですし」
「いつまでその設定は続くんじゃろな?」
「ルディールさんが嫌がらない限りは続きますよ。お互いにメリットありますし国王陛下の前でリノセス家の護衛って言ってますからね」
「まぁリノセス家が嫌がらぬ限りは良いか……セニアにも世話になっておるしのう」
「そうですね。ミーナさんはいつ頃リベット村に戻ってくる予定で?そろそろ夏休みですよね?」
「リベット村に飛空艇の発着所が出来たからそれで戻って来たいと言っていたからのう、一週間ぐらい先じゃな、まぁ帰ってきたら準備してリノセス家まで行くがのう」
そうして話してる内に酔っぱらったバルケやスナップに絡まれながらその日は過ぎて行き、次の日にはソアレは覚えた転移魔法でバルケを連れて中央都市に戻っていった。
そして落ち着いた時間が流れ、ミーナが夏休みになりリベット村へ帰って来る日が訪れた。
麦わら帽子を被り家庭菜園をしていたルディールに空に浮かぶ飛空艇の影がかかり到着を静かに伝えた。
特に迎えに行かなくても良かったのだが、ルディールは発着場に足を運びミーナが降りてくるのをのんびりとロビーで待っていた。
するとミーナが降りてきたが自分が思っていた発着場よりかなり豪華な出来映えにかなり戸惑っている様子が窺え、ルディールは少し笑いながら声をかける。
「ミーナよ。お帰りじゃな」
「あっ!ルーちゃん。お迎えありがとう!……こう思ってたより凄い発着場だからかなりびっくりしたよ」
「うむ、村長と国王陛下とシュラブネル公爵に感謝じゃな」
ルディールはミーナの手荷物を持ってやりミーナの実家の宿に向かうと繁盛している宿にかなり戸惑い、痩せて美人になった自分の母を見て叫んだ。
「おっ!お母さん!どどどどどどうしたの!?病気!?」
「魔法学校に行って少しは立派になったかと思ったけどやっぱりウチの子だね……あんまり変わって無かったよ」
そう言って少し残念そうだが嬉しそうに戻ってきた娘の頭をなで、奥にいる父親に帰った事を伝えに行ったので家族団らんを邪魔しては悪いとルディールも自分の家に戻った。
戻って三十分もしないうちにミーナが走ってやって来た。
「ルーちゃん!ごめん。今日から泊めて!」
「それはいいが何かあったのか?」
「えっ?何も無かった……私の部屋もお客さん用の部屋に戻されて、部屋にあった物はマジックボックスに全部入れられてた……私の部屋が無かった……」
「まぁ、お主の実家は繁盛して居るからのう。最近、従業員も雇ったと言っておったからのう」
「それで夏休みは手伝おうと思ってたけどいらないって言われたよ……」
その様子を見てルディールは少し笑いながら荷物を空いている部屋に運び、夏休みの間ミーナの部屋になる部屋を二人で片付け始めた。
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