第43話 訓練
元ボス猿の白炎毛猿が前に出てきてルディールに今の様子を尋ねた。
「ボス、稽古をつけてもらおうと来たが、何か修行中だったのか?」
「来ておったのも分かっておったし、今日は戦闘訓練じゃな」
元ボス猿は人の言葉を完全に理解し、会話も人と変わりないくらい流暢に話せるようになり、体の炎の体毛も青白くなり新種の魔物を思わせるようだった。
「…この周りの炎毛猿たちがルディールさんが言っていた群れですか……」
「ああ、この前の魔法使いとボスの召使いか」
「そうですわ、先日ぶりですわ」
スナップはルディールの家に住みはじめて、たまに猿達がルディールを呼びに来るので顔合わせをすでに済ませていた。
「さてと、ボス猿とソアレはお互いに思う所もあるじゃろうが、今回は訓練じゃから殺しはアウトじゃぞ。怪我ぐらいなら治せるから無茶せぬように」
そう言ってルディールがスナップとソアレにどちらから行く?と聞くとソアレが手を上げソアレ対元ボス猿の対決が決まった。
「…前はすみませんでしたが、今回は勝たせて頂きます。私も強くなっていますので」
「思う所はあるが、それはこちらも同じだ。ボスの友人だ、手加減ぐらいはしてやろう」
いいえ結構ですと言い、初手から高威力の雷魔法をぶっ放し戦闘が始まった。
「いきなり高威力の魔法とか何を考えとるんじゃろな?わらわもやるからなんとも言えぬが」
「ソアレ様と元ボス猿様は何か因縁がおありで?」
雷や炎が舞い散る中ルディールとスナップは暢気に話しをしている。
「いかずちよ!停滞し敵を討て!サンダーワンダラー!」
「おっ?ソアレも似たような魔法使うんじゃな」
「スプリガンとの戦闘でルディール様も使われていましたよね。数が桁違いですが」
ソアレが唱えた魔法はルディールが使用した魔法によく似ていて、白炎毛猿の周りに十個ほどの雷球が出現しその場で停滞していた。
「ルディール様のように動く訳ではないので躱しやすそうですわね」
「完成前の魔法は可能性か……ソアレのような人間を天才と言うのかのう」
「と言いますと?」
そうスナップが質問してきたので見ていたら分かるわいと、ルディールが言った直後にソアレが動き、先ほど覚えた雷の触覚を雷球に接続し白炎毛猿の動きに合わせ攻撃を開始した。
その魔法の範囲は狭かったが自動で動くようで、ソアレはその間に別の魔法の詠唱を始めた。
「わらわも魔法でニワトリ作ったりせず他の魔法でも勉強しようかのう?」
「あれはあれで村の鶏のボスになっていますから必要ですわ、村の方々も感謝していましたわ。最近作られた水の牛も、他の牛を洗っているようで牛が綺麗になったと言ってましたわ」
「ウォーターモーモーか……あやつら、いつになったら消えるんじゃろな?」
などと話していると白炎毛猿が大きく息を吸い込み自分の炎を爆発させその衝撃でソアレの雷球を吹き飛ばした。
その爆発でソアレが態勢をくずし、その隙に白炎毛猿に接近されルディールの方向に蹴っ飛ばされルディールがやさしくキャッチして決着となった。
「では、次はわたくしの番ですわね」
「今の戦いを見て行くお主も大概じゃな」
「魔物との戦闘経験はほとんどないので新鮮ですわ」
そう言ってスナップがロケットパンチを飛ばして戦闘が開始したので、ソアレに大きな怪我は無かったが、気を失っていたのでルディールは回復魔法を唱えその場に座り起きるまで膝枕をした。
「ほぉ、手が飛ぶ人間は面白いな、手加減はしてやる全力で来い」
「正確には人間ではございませんが、胸を借りるつもりで行きますわ」
スナップは一呼吸おき、体にエネルギーを溜め即座に溜めたエネルギーをかけ声と共に解き放った。
「エデンブラスター!」
「……ロケットパンチといい今の攻撃といいまさにアレじゃな……これで剣とか出たらグレートじゃな。でも雷じゃしソアレとかぶるか?」
スナップの攻撃は直撃したが白炎毛猿の炎を上回る火力ではなかったようで、ダメージを受けた様子は無かった。
次に白炎毛猿が接近し殴ったが、スナップも体を硬質化させ甲高い音と共に攻撃を弾いたが少し飛ばされていた。
「ぱっと見た感じじゃとスナップとソアレは同じぐらいの強さじゃな」
と、ルディールが呟くとその言葉に返事が下から返って来た。
「……そうですか?スナップさんの方が強そうですよ?」
「起きたら起きるのじゃ、近距離でバルケ、中距離でスナップ、遠距離でソアレという感じじゃな。」
「そうですか……負けて傷心なのでこのままでお願いします。セニアの姉なので甘えられますが、甘えるのは何か新鮮です」
そう言うのでルディールは軽くため息を付き、頭をなでてやりながら先ほどの戦いのソアレの魔法とその応用について驚いた事を伝えた。
「……ありがとうございます、まだ神鳴りの杖の性能も出し切れてないので、まだまだいけると思います」
「まぁ、今日のように聞きたい事があれば聞いてくれれば分かる範囲なら答えるわい」
「……ルディールさんは女たらしですか?」
ルディールが軽くソアレの頭を小突き立ち上がると、次は目を回したスナップが飛んで来た。
ルディールがこんなものかの? と言うとソアレがまだ行けますと言ったので、次は群れの炎毛猿達と戦う事になり、起きたスナップと交代交代で戦闘が始まった。
ソアレと炎毛猿の戦闘が始まるとルディールに元ボスの白炎毛猿が近づいてきた。
「お主には少し物足りなかったか?」
「いや、そうでもないぞ。魔法を使う奴は森にもいるが数を使う奴は少ないから勉強になった。ありがとう」
「しかし、お主も群れの炎毛猿も流暢に話せるようになったのう」
「そうだな、この森に迷い込んだ雑魚の冒険者を追い払う分には楽だ。」
「なるほどのう、後でわらわと一戦やるか?」
「いや、今回は止めておこう。せっかくボスとは違う戦い方をする人間がいるのだ、俺よりは弱いが勉強にはなる観察しておこうと思う」
「……その内負けそうな気がするのじゃ」
「安心しろそれは無い」
ルディールがそんな事わからんじゃろ、と言うとソアレが勝ったようでルディールの方に炎毛猿が飛ばされて来たのでキャッチして回復魔法をかけ別の炎毛猿とスナップの戦いが始まり日が暮れていった。
それから炎毛猿達に礼をいい、村まで反省会を含め歩いて帰っているとソアレが変な事をいいだした。
「……ルディールさんは軍隊でも作るおつもりで?」
「そんなつもりはないぞ?何でじゃ?」
「……群れの炎毛猿達が流暢に人の言葉を話しますし、個体差はありましたがかるく二~三種類の魔法を使ってきますから、炎毛猿達が賢いのは分かっていましたが魔法まで覚えるとは思いませんでしたよ……」
「鍛えてくれと言われたからのう、鍛えておっただけじゃな」
「……あまり気にしてないようですが、Bランクがこの事を報告したらAランクに上がれるぐらい凄いことですよ」
「冒険者にあまり興味はないからのう~」
「……ルディールさんとスナップさんが冒険者になったらすぐに勧誘しにいきますよ」
「それはありがたい事ですわ、あの元ボス猿様にはリベンジしたいので冒険が必要ですわ!」
「近い内に灯台の街まで行くんじゃから、冒険者にならずとも冒険はできるじゃろ」
灯台の街にはソアレ達【焼き鳥】もイオード商会から護衛の依頼が来ているので、ルディールが商会長から聞いた話を合わせると同じ日だった。
「灯台の街とはどういう所なんじゃ?」
そうですねとソアレが少し悩み考えてから教えてくれた。
「やはり灯台の街というぐらいなので船が多いですね、あと普通に海賊もいたりしますね」
「そういえば新聞に海賊多発とか海の魔物多発とか書いてあった気がするのう」
「……ですね、あとは伝説の海上都市とかですね」
「あーそれは前にバルケに聞いたのう、幽霊船を追いかけて行くんじゃったかな?酔っ払っておったから合っているかはどうかは不明じゃがな」
「……それは灯台の街に昔からあるおとぎ話ですね」
俺たちは海賊~死んでも海賊~お宝は死んだら行ける海の上~♪
「……と言うような感じの童話のようなおとぎ話の歌があるのでその事かなと思います」
「幽霊のような非科学であり得ない物は無いと同じですわ」
と、スナップが言ったのでルディールとソアレが、大賢者が作ったオーパーツの塊みたいなお前が言う?みたいな顔をしてスナップになんですの?と言われていた。
後は灯台の街の近くに出てくる魔物は、何故かアンデットが多いとも教えてくれそれは海にも出てくるのだと教えてくれた。
「海はあの世と繋がっておると言うから出てくるんじゃろか?」
「そんな事はないはずですわ!幽霊とかはいませんわ!」
とスナップが過剰に反応するので、ルディールは自分の影からシャドウハンドを伸ばし気づかれない様にスナップの後ろに回り込ませ肩に手を乗せた。
きゃーー!とスナップは女の子らしい悲鳴をあげルディールの後ろに隠れた。
「……正直すまんかった。そこまで怖がると思って無かったのでな」
「ちっ違いますよわよ?驚いただけで怖い訳ではないですわよ?」
「……スナップさん見えないと言うことは素敵なことですよ、私は魔眼持ちなので」
「なっ何がですの!」
「……今、貴方の……隣に……これ以上はかわいそうなので止めておきます」
「ソアレ様!余計に気になりますわ!」
そうこうしてる内にルディールの家に着いた。
「……ミーナさんの実家に泊まっていて、スティレもカーディフも居るので良かったら遊びに来てください。夜這いはバレると思うので別の機会にお願いします」
「お主、ちょいちょい変な事を言うようになったのう。まぁ何かあったらよろしく頼むわい」
わかりましたと今日の礼を言ってソアレは戻って行き、ルディール達も家に入り夕食を取り、やたらついてくるスナップの相手をしていると夜も更けて寝る時間になった。
「なんでお主がわらわのベッドの上におるんじゃ」
「いえ、ルディール様が怖くないようにと思ってですわ」
追っ払おうとも思ったが、前に変な怖い夢を見た時にミーナが一緒に寝てくれた事を思い出し、怖いものは怖いし仕方ないかと諦めスナップと一緒に寝る事に決めた。
「そうじゃな……では一緒に寝るか?」
追い払われる思っていたスナップが笑顔になり、ご一緒しますわと言ってその日は過ぎて言った。
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