第32話 大空へ

 王都でゴタゴタに巻き込まれ、気分的に疲れ切ったルディールはリベット村の自宅で家庭菜園を楽しみに、空中庭園へ行くまで英気を養う予定だったのだが…


 一日目…近所のガキンチョーズの襲撃多数。


 二日目…炎毛猿達と修行プラスそこそこ気合いの入った戦闘…


 三日目…リノセス侯爵から呼び出しプラス王都まで送っていく。


 四日目…前に魔法で作ったフレイムコッコがミーナに負けたのが悔しいから稽古をつけて欲しいと頼みに来る。


「気のせいでは無いがわらわ忙しくないか?ゆっくり出来ぬではないか!」


 自室で行動を振り返り叫び、ふと空を見ると雲の切れ目に空に浮かぶ島々が流れている。


「どうやって浮いておるんじゃろな~…よし!」


 流れゆく雲や浮いてる島々をゆっくり眺めていたルディールだったが、ピコン!と頭の上に電球がつき何かを閃いた。


「せっかく知らない世界におって空も飛べるし、あの高高度までわらわは飛べるんじゃ!冒険者の船で行かんでもええじゃろ!自力で飛んでいくのじゃ!」


 思い立ったら即行動のルディールはまた家を空けるとコボルト達に伝え、大空に向かって飛ぼうとした所で、前に知りあった冒険者バルケが空中庭園に行くなら声かけろみたいな事を、言っていたのを思い出したので先に中央都市に向かった。


 バルケを探すのに冒険者ギルドに行って所在を聞いたが、クエストは受けているが今は何処にいるか分からないと教えてくれたので、礼を言ってから、次に所在を知っていそうな処に向かった。


 その場所に着き気配を探ると、中に一人で何かをしてる気配があったのでルディールはドアを蹴り開き大きく叫んだ!


「ホールドアップ!」


 その場所はミーナの叔父が経営する酒場で、中では叔父が一人で準備していてルディールのいたずらに驚いていた。


「…お前はいくつだよ!ガキのいたずらか!」


「うむ!叔父殿、久方ぶりじゃな」


 ミーナの叔父はルディールのいたずらに文句をぶつぶつ言っていたが、その顔は久しぶりの友人に会ったように少し嬉しそうな顔をしていた。


 ルディールはまだ開店していない酒場のイスに座りミーナの叔父に話を聞こうとすると、叔父もまだ開店していないのにコップに飲み物を入れてルディール前に置いた。


「うむ、ありがとう。少し聞きたいんじゃが、バルケを知らぬか?」


「あ~そういや、少し前に灯台の街に行くって言ってたな…あれがちょっと前で空中庭園行きの船には間に合わすとか言ってたから、今日か明日には帰ってくるんじゃねーか?あいつに用か?」


「うむ。空中庭園に行こうと思っての声をかけに来たんじゃ。」


「ほ~なるほどな、じゃあみたら声かけといてやるよ」


 頼んだと言ってしばらく世間話をして、ミーナが魔法学校のAクラスに入学したと教えたらかなり驚いていた。


「ミーナちゃんがAクラスか~将来安定だな…」


「そうなのか?」


「魔法学校のAクラスってのは、ほんとに魔法が得意な奴しかいないからな~。頑張りしだいじゃ国お抱えの魔法使いにもなれるな、冒険者で有名所だと雷光のソアレか?あいつは主席で卒業したって昔聞いたな」


「おーあやつがな~」


「なんだ?知り合いか?まぁ同じ魔法使いだもんな、知ってるか」


 最近できた友人の顔を思い浮かべながらまたしばらく話をしてから別れ、カフェの様な場所で少し考えながら時間を潰していると叫び声が聞こえた。


「ああーーー!見つけた!」


 そう聞こえたのでその方向を向くとそこには【焼き鳥】のメンバーのカーディフがいた、その姿をみたルディールはおもちゃを見つけた子供のように笑顔になった。


「おお!カーディフではないか!元気にしておったか!まぁ座るのじゃ」


 そこから一歩的にはなしカーディフの初手を封じこめた。


「え?ええ…」


「まずは何か頼むのじゃ、そこのウエイトレスさん、すまぬが注文を頼む」


 かなり戸惑うカーディフを無視して注文を多めに頼ませ、一緒に食事をした。


「あれ?なんで私こいつとご飯食べてるんだろ…」


「それはお腹が減っておったからじゃろ」


 そうなんだけど何か違うというカーディフとご飯を食べていると、ソアレもやって来た。


「…ご一緒させていただいても?」


「うむ、かまわんよ」


 そう言ってソアレも席に着き、昼食を取りながら話を始めた。


「…どうして中央都市に?何かありましたか?」


「空中庭園に行こうと思っての、前にバルケが行く時は声かけてくれといっておったからのう、バルケを探しておるんじゃが、まだ帰って来てないらしい。お主は空中庭園には行くのか?」


「…冒険者ギルドでも最近見ませんでしたね。空中庭園ですが私達は行かない予定です、リーダーのスティレが少し用事でこちらにいないので、大きなクエストを受けるのは控えています」


「なるほどの~」


 カーディフがルディールとソアレが話をしているのを見て、あんた達ってそんな仲良かったっけ?と聞いてきた。


「色々あったからの~」


 ソアレも少し考えてから、頬を赤く染め、少し血の出る事もありましたからと言うと、カーディフがへぇー何処かで戦闘でもしてたんだと言っていた。


「…おこちゃまじゃな」


「…おこちゃまですね。ボケて伝わらないのは地味につらいです」


「誰がおこちゃまか!」


 それから少し情報交換などをして、ソアレが少し用事があるのでと席を立ったのでルディールもソアレに別れをいい、カーディフにも別れの挨拶をした。


「うむ、カーディフよ、今日は楽しかったぞ、ありがとうではまた何処かで会おう!」


 そう言ってまだ一人イスに座るカーディフを残して二人は去っていった。


「あっ、また名前聞くの忘れた……あれ?あの二人お金払ったっけ?……あああーーーーー!」


 カーディフの叫び声が聞こえる頃には二人の姿は見えなかった。


 それからしばらく本屋などを巡りうろうろしていると、目的の人物の方から声をかけて来た。


「おっ!ルー坊じゃねーか、元気にしてたか?」


「肉体的には元気じゃが精神的にはお疲れじゃな、ようやく見つけたわい」


「なんだ?俺をさがしてたのか?」


 お主が空中庭園に行くなら声かけろというような事を言っておったんじゃろが…と言うとそういや言っていたなといい、またミーナの叔父の酒場に向かった。


 酒場は先ほどより混んでいたが席に座りバルケが、音消しの水晶というマジックアイテムを出し、聞かれたくない話をする時はこのアイテムだと言っていたので、ルディールはその効果について聞いた。


「音消しのミサンガとほぼ同じだ、これは置くと狭い範囲だが周りの音は聞こえるが、こっちの音は外には漏れない代物だ、で?空中庭園にいくのか?」


「うむ、行くぞ、わらわはイオード商会の傭兵と言う形で行く事になるが、別にええじゃろ?」


「問題ないな…じゃあ、冒険者ギルドが募集かけたらPT組んでいくか」


「いや?遅くても明後日には行くぞ?」


「ん?冒険者ギルドのステイシスで行くんじゃ無いのか?」


「なんじゃい、そのメインブースターが原因で水没しそうなのは…」


 その事を聞くと、冒険者ギルドが所有している最新型の飛空挺だと答えてくれ、空の魔物の討伐の時などはそれに乗って運んでくれたりすると教えてくれた。


「まぁルー坊にも考えがあるか…わかった明後日の朝に出発しよう、灯台の街から帰ってきたばかりだからな、準備させてくれ」


「了解じゃ、では明後日の朝ここに迎えに来ればよいな?」


 それで頼むとバルケはいい、灯台の街の情報を仕入れてルディールは一旦そこで分かれて自宅に戻りその日は終了した。


 次の日


「そうじゃ。遠出じゃしな、ミーナに声をかけとくか」


 自宅から王都のリノセス侯爵家の貸して頂いている部屋に飛び、メイドを呼ぶ鈴を鳴らしてメイドさんに飛んできた事を伝えると少し驚かれ、自由に出入りしてもらって大丈夫ですよと言われたが流石のルディールもそれは無理と断り、仕事の邪魔になるだろうがここに飛んで来た時は、鳴らすのですまぬが来て欲しいと頼んでおいた。


 それから外に出ようとしたところで、セニアの母に見つかり、まだ学校ですよと言われしばらくお茶会に付き合い話しをしていると、セニアの母も昔は魔法使いだったらしく思った以上に話が弾んだ。


 少ししてセニアの母と別れ、ルディールは国王の生誕祭の前で熱気が凄い王都の街中を一人のんびりと歩き時間をつぶした。


 また本屋に行き魔道書などを買い漁っていると、数人の魔法学校の生徒達が帰宅しているのが見えたので、ミーナもそろそろ帰ったかと思い魔法学校の寮に向かった。


 寮に向かい受付のような処で説明しミーナを呼んでもらった、しばらく待っているとミーナが寮の玄関にやって来た。


「あれ?ルーちゃんどうしたの?」


「お主に会いに来たに決まっておるじゃろう」


 そういうとミーナは少し嬉しそうにしていた、受付で入寮のサインをしてミーナの部屋に向かった。


 途中、すれ違う人達が入寮者以外のルディールが珍しいのか、ちらちらとこちらを見ていたが気にせず進みミーナの部屋にたどり着いた。


「ここが私の部屋です!ルーちゃんどうぞ!」


「おじゃまします!」


 中にはいると思った以上に広くベッドは二段ベットで下をミーナが使っていて上は荷物置きになっていた。


「お主、一人か?」


「そうだよ、家から直接通う人も多いし、私、村娘だから一緒の部屋は貴族様は嫌がるみたいだよ」


 そう言って一人を気にすることも無く楽しんで居るようだった。ルディールは部屋の中を見渡すと、前にミーナにあげた風の精霊の小箱や竜鱗華草などが飾ってあった。


「まだこれ持っておったんじゃな」


 そう聞くとミーナが私のお気に入りだからね、と嬉しそうだった。


「学校はどうじゃ?貴族にいじめられたりはしておらぬか?まぁ、されておったら隕石ぐらい落としてやるぞ?」


「大丈夫だよ!…でもちょっと大変だよ~ちょっとじゃなかったかなり」


「ん?何かあったのか?セニアがおるじゃろ?」


 くわしく話を聞くと、セニアと一緒に昼食を学食で取るが、王女様が毎回ついてきたり、学食で会う度にリージュが混ざって来るとの事。


「リージュは追っ払ってよいが、王女様は流石にだめじゃしな」


「いや、リージュ様でも駄目だよ!」


「ご飯の味がしないじゃろ?」


「うん…セニアさんも慣れてるけどやっぱり気を遣うって言ってた。他の人に絡まれなくていいんだけどね、他の地方の子とかはやっぱりあるって聞くし…でもなんでだろね?」


「この前、ソアレが言うておったじゃろ?考えすぎるとドツボにはまると。お主は学生、王女もリージュは別じゃが、お主と友達になりたいから近づいたと思っておけば良いわい」


「そうなんだけど、でも最近色々ありすぎて…」


「まぁ分からんでもないがのう、じゃが本当にお主と友人になりたくて近づいて来てたら相手は悲しいぞ?」


 そうなんだけどねと、少しため息をついて明日から王様の生誕祭で二日ほど学校休みだから、空でも飛んで冒険したいね~飛べないから無理だけどねと、とても余計な事を言ってしまった。


「うむ。ならばちょうど良いわい。バルケも行くから明日は冒険じゃな、先にお主を迎えにくるので準備しておくのじゃ」


「えっ?どこいくの?」


「着いてからのお楽しみじゃ、持ち物は一切れのパン、ナイフ、ランプ、鞄に詰め込んでおけばよいぞ」


「わかったじゃ、じゃあルーちゃん楽しみにしてるね!」


 任せておけと言って、少しミーナと話してから寮を出て、セニアの家に行きそこから自宅へ飛んだ。するとソアレから生誕祭でセニア達の護衛をしたいので送っていただけますか? と手紙が届いて居たので、また中央都市に飛び、ソアレの家に行き、また王都へ戻った。


「…ルディールさん、本当にすみません」


「いや、別にかまわんが何か、やる事が多いのうと思っての」


「…ありがとうございます、さっき会った時に言おうとしたんですが、カーディフが居たので、信用はしていますがたまに口が滑るので…」


「あやつらしいのう…では戻るぞ、わらわは明日から空中庭園に行くのでな、もしかしたら数日はおらぬかもしれぬ」


「…今は深くは聞きませんが、戻ってきたら教えてください。気をつけて」


 家に戻り準備をしてその日は早めに休んだ。


 次の日の朝ミーナを迎えに行って、中央都市まで戻りバルケと合流し中央都市から出て、人目の着かない所でルディールは翼を生やし、シャドーステッチで二人をしばり大空を目指しすぐにミーナの絶叫が聞こえてきた。


「空を飛びたいって言ったけど!言ったけどーーーーああーー!高いーー!」


 ルディール達は大空に浮かぶ島々に向かって飛んだ。

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