第27話 厄介事

 ルディールの近くには雷光のソアレと生徒会長で大公爵の娘のリージュがおり、見た目だけは抜群のルディールは好奇の目で見られていた。


「そういえばルーちゃん。父に伝えましたが礼を言っていましたよ。それと一度会いたいとも言っていましたよ」


「リーちゃんよ、普通に考えて何もしてないのに行く訳ないじゃろ」


 その台詞にソアレは普通に考えたら行きますよ?と言い二人のやり取りを見守った。


「リーちゃんですか……それいいですね、次からはそれでお願いします。そう言うと思ってその辺りも伝えておきましたから大丈夫です。まだ動かないと言っていましたよ」


「まぁ、わらわはどちらの味方でもないしのう。勝手にしてくれとしか言えぬのう」


 その事が少し気になったソアレが聞いて来たが、友人を巻き込むつもりは無いとルディールが止めた。


「…そうですか。私はルディールさんの友人でしたか」


「なんじゃい、冷たい奴じゃな」


「なるほど、ソアレさんも私と一緒ですね」


 お主は違うとルディールに言われ、どうしたら友人になれますか? と聞いてきたので、二度と会わなかったら親友じゃなと答えていた。


「ルディールさんは照れ屋なんですね」


「うむ、じゃからお主を見ると照れてまともに話ができぬから帰れ」


「では、少しずつ慣れましょう」


 特に空気が悪い訳でもないしお互いに笑顔なのだが、大公爵の娘に帰れ、とか言う新しくできた友人に、ソアレは内心ハラハラしながらクラス分けの結果を眺めていると、水晶が黒く光りやっと一名ほどAクラスが決まった。


「ほー、なかなかおらぬものじゃな、見た目は巻髪ドリルじゃな」


「ちなみに私も入学してからずっとAクラスですよ?」


 リージュがそう答えたのでルディールは聞いてないと返したが、気にもせず今聞いたので褒めてくださいと会話をしてまたソアレをハラハラさせた。


 それから数人がAクラスに選ばれ、他の生徒とは少し毛色の違う魔法を使う生徒の番になった。


「ん?聖属性の魔法か、また珍しい魔法じゃな」


「…はい、そうですね。あの生徒は神官達が聖女と呼んでいます。よく聖属性とわかりましたね、使える人は少ないのに」


「わらわがおった国(ゲーム中)ならたまに居たからのう。まぁ便利じゃが光魔法の方が覚えるのも楽じゃし威力も上じゃからネタ魔法で有名じゃしな」


「ルディールさんは何処の国の出身で?」


「黄泉の国」


「なるほど、死者の国から私を助けに来てくれたと…ありがとうございます」


 リージュを無視して聖女を見ていると水晶が黒く光りAクラスになった、その後に第一王女の番になり王女の魔法でも水晶は黒く光った。


「まぁ…当たり前じゃが、八百長がないと言うのはありえぬな」


「…それはしかたないですね、王女がC、頑張ってもBでは王族のメンツが立ちませんから、魔眼も無いのによく分かりましたね」


「魔法みればある程度はのう」


「ルディールさんもソアレさんも、今の話を王族の人達に聞かれたら普通に首が飛ぶと思うので注意してくださいね」


「それぐらいわらわも分かっておるわ」


「…えっ?分かってたんですか?大公爵の娘に帰れって言ってますよね?リージュ様は場所が場所なら王女様より格上ですよ?」


「私が雑に扱われるのは新鮮でいいですね。まぁ王女様の実力を隠すのに、今年からは地方の村や町から平民を大量に入学させてますから。後、神官の犬の隠れ蓑にもなるでしょうしね」


「なるほどの~馬鹿にしてる訳では無いが、地方組の方が魔力は低いが応用が利く使い方しておるから見ていて面白いのう」


「…ですね。絶対に余所では言えませんが、戦闘になったらAクラスは壊滅しますね」


「リージュから見て王女とその周りはどんな感じなんじゃ?」


「やっと話を振ってくれましたね。王女様はいい子ですが取り巻きの犬、ゴホン、聖女達はなかなか癖の強い産廃、ゴホン、後輩ですね」


「お主が嫌いだと言うのはよくわかったわい」


「いえいえ、嫌いではないですよ、嫌いではないだけですが。ちなみに王女様はいいですが、犬、ゴホン、聖女と仲良くするのはおすすめしませんよ」


「友人はちゃんと選べと親に教えて貰ったからのう」


「…では友人のソアレちゃんがプラスでルディールさんと聖女の相性の悪さをお伝えします」


 それからソアレが、神官達がいる神殿には角狩り信仰という風習が権力を持った神官ほど未だに根強く残っていると教えてくれた。その角狩り信仰について聞くと、ルディールのような角を持った人は魔族の生まれ変わりであり、力をつけるといつか魔人になる人類の敵であり、角を切り落として神に謝罪しなければいけないという事だった。


「なるほどのう、何処にでもそういうのはあるんじゃな。聖女というぐらいじゃし、その手の話の英才教育は受けてそうじゃな。どちらにせよ、こちらからは近寄ることはあるまい」


「…私も神官ではないので忠告ぐらいしか出来ませんので後の判断はお任せします」


 それから少ししてやっとセニアの番になった、セニアはマジックバッグから二つの魔石が輝く杖をとりだした。ルディールはその魔石に心当たりがあり、入学祝いが億超えか……と呟きソアレに不思議そうな顔をされた。


 セニアの実力は他の生徒達とは一線を画しており、魔法を唱えると周りに稲妻が発生し目標の水晶に飛んで行き落雷のような轟音と共に全ての水晶を破壊した。


「セニアはストレスでも溜まっておるのか?そこまでせんでええじゃろ…」


「…私が全力でやりなさいと言いましたからね」


「周りの反応と二人の温度差が面白いですね」


 ルディールがセニアを褒めていると少し前までは、魔法が少し苦手だったんですが、ある日から人が変わったように魔法に打ち込みここまできたとソアレが教えてくれ、魔眼もまだ使えないのにあそこまでできるので、近い内に抜かれますと嬉しそうに答え、ルディールにだけ聞こえるようにセニア達をありがとうございましたと言っていた。

 

 水晶を交換するのに少し休憩になり、その間セニアは関係者に頭を下げてまわっていた。Aクラスが決まり水晶の交換も終わり次はミーナの番がやって来た。リージュが、あれだけの魔法を見せられたら次の人はやりにくいですねと言ったが、ソアレが大公爵の娘に帰れとかいう魔法使いの弟子ですから大丈夫ですよと言っていた。


 ミーナが魔法を唱えると、拳サイズの水の玉がフヨフヨと周りに数個ほど空中に漂い、攻撃の合図と共に高速で動き、ルディールのクリスタルビットのように四方八方からオールレンジに圧縮された水を打ち出し水晶に風穴を開けた。


「…えぇと、ミーナさんはストレス溜まっていますか?」


「うむ。村に残してきた両親が気になってしかたないんじゃろ」


「9割ほどはルディールさんが原因でストレス溜めてそうですね。ちなみに私も入学の時に壊しましたよ。凄くないですか?」


「はいはい、凄い凄いのじゃ」


「ふふっソアレさん、聞きましたか?ルディールさんに褒められましたよ」

 

(ミーナの奴やるではないか、教える時にクリスタルビットは数回は見せたが自分の魔法で応用を利かせたか、その魔法の最終地点は恐ろしいぐらい強いから頑張るのじゃぞ)


 ルディールはミーナの使った魔法に心当たりがあり、妹? 友人? 生徒の成長を楽しんでいた。


 また水晶の交換で休憩になり今度はミーナが関係者に頭を下げてまわり、セニアと同じクラスになった。

 それから無事にクラス分けが終わり、ミーナとセニアのクラスは約30人ほどが集まり、リージュはまた挨拶があるからと一度ルディール達から離れた。


「では、私がいなくて寂しいと思いますが挨拶があるので行ってきますね。また後でお会いしましょう」


「いや、もう来るな」


 そのやり取りを見ていたソアレは少しは慣れたが内心はまたハラハラしていた。


「…自分で言うのもあれですが、私は感情の起伏があるほうではなかったですが、今日は一日驚くことばかりですね」


「なるほどのう、わらわと友人と言われたのがショックじゃったと」


「…嬉しさのあまり涙がちょちょ切れそうです」


 ソアレが気になっていたリージュとの関係をもう一度聞いてきたので、呪いの事を話さずに倒れた所を介抱したと答えておいたが、何かに感づいたのか困った事があったらすぐに声をかけてくださいと言ったので、ルディールは素直に礼を言っておいた。


 入学式が何事も無く終わり、ミーナとセニアがルディール達の元に戻ってき、二人にお疲れ様と労いの言葉をいい、二人の入学を祝っているとソアレがミーナをじっと見つめて話しかけていた。


「…ミーナさんは凄い人だったんですね」


「え?急にどうしたんですか?教えてくれる先生が凄いので」


「…確かに魔法は凄いですが、それよりよくずっとルディールさんと居られますね」


「あ~~…もしかしてまたリージュ様に変な事いってました?」


 などと仲良く話している二人を見ていると、セニアがルディールに話しかけてきた。


「ルディールさんはリージュ様とお知り合いだったのですね」


「正直に言うと知り合いたくなかったんじゃが、お主達と別れてからちょいとゴタゴタに巻き込まれてのう」


「そうですか、リージュ様とお知り合いになりたいと言う方はたくさん居ますが、知り合いたくなかったと言う人は何か新鮮ですね」


「帰れとか言ったら、似たようなことを言っておったぞ」


 その台詞を聞いて驚きつつ呆れながら本当に止めてくださいと言っていた。それからどこか一息つける所に移動しようという事になり、セニアがおすすめのカフェがあると言っていたのでリノセス家の馬車に乗りその場所に向かおうとすると、またリージュがまたやって来て馬車に乗った。


「また後でお会いしましょうと言ったのに置いて行くんですね」


「流石に生徒会長じゃしな、忙しいから邪魔してはいけないと気を使ったのじゃ。礼には及ばん」


「そうですか、ありがとうございます」


 その二人のやり取りに、ソアレはまたかと頭を抱え、ミーナはこの二人は仲いいのだと思い、セニアは笑顔の二人の関係に悩み、馬車は目的地に進んでいった。


 すこし進み目的地に近づくと王家の紋章が入った馬車が走っており、中には第一王女が乗っていた。


「王女様じゃな、ん?一人か?」


 リージュとセニアが確かに珍しいですが、馬車の運転手も王宮騎士の人物で、あの馬車も魔法防壁だらけですし、周りに隠れて護衛がいるはずですよと教えてくれた。


「王女様、一緒のクラスだけどちょっと寂しそうだったね」


「では、お主が友達になってやればええじゃろ」


「身分が違いすぎて近寄れない…」


「今更なにを言っておるんじゃ…わらわ以外はこの馬車の中は権力の塊じゃぞ…」


「そして全員がお友達と言うのが素敵ですね、青春です」


「お主は違うぞ」


 セニアもルディールとリージュのやり取りにソアレと同じようにハラハラしていた。そして周りを見渡してミーナが頭を抱えていた。


 なんとなく王女様の馬車を眺めていると急に馬車が止まり、何かを感じたルディールとソアレが馬車を止めさせ、障壁をはった瞬間に王女様が乗る馬車の近くに魔法が飛んでいき大きな爆発がして十数人の人影が王女の馬車を取り囲んでいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る