第26話 魔法学校


「さてと、どうしようかのう。ミーナは何処か行きたい所はあるか?」


「ん~~来る前は色々行きたかったんだけど、いざ着いてみると人の多さに気後れしちゃって、正直、無理に行かなくてもいいかなってなってる」


「たしかにそれはあるのう、では先にわらわが欲しい物を買いに行くがよいか?」


「うん、行こう行こう!」


 二人で街の中を歩き、ルディールは少し前から欲しがっていた、自分の家に置くマジックポストを探し始めた。

 目的のポストは、中央都市で倉庫を借りた時にお世話になったパラメト商会の本店に数種類ほど置いてあり細かな機能などを店員さんに聞いた


「どういった物をお探しですか?」


「とりあえず手紙が着けばいいが、出来れば見た目が格好いいのがいいのう」


「機能重視じゃないんだね…」


 そう店員さんに説明すると手紙より少し重い物も転送できて丈夫で、手紙が届くと無駄に光るマジックポストを紹介されたので、ルディールは値段も聞かずに即決で買った。


「私が勧めておいてあれですが、そのポストで良かったのですか?」


「うむ。特に光る意味はないのに、光る所が心揺さぶられたからこれで良いのじゃ!それと聞きたいんじゃが、中央都市の様に家や倉庫の様な物件は紹介して貰えるのかのう?」


「はい、ありますよ。資料をお持ちしましょうか?」


 頼むと言いそうになった所で村長との会話を思い出した。


(そうじゃ…どんな奴がおるとも解らぬ場所じゃったな…気をつけねばと言ったばかりでは無いか…)


「いや、すまぬ。将来的にここに住むかも知れぬからその時に何処で頼めば良いかな?と思って聞いたのじゃ」


 そうでしたか。と店員さんはいってルディールはお金を払いポストを受け取りアイテムバックに入れて店をでた。


「ルーちゃん、さっきのって中央都市みたいにここに倉庫を借りてって感じだったの?」


「そう思っておったんじゃがな、村長と話をしていていろんな奴がいると言うのを聞いたからのう。ここまで飛ぶのはすこし考えてからじゃな」


「あ~そうか……昨日のリージュ様のような事もあるもんね…アレって誰が知ってるの?」


「そうじゃな~お主の家族と村長だけと言いたいが、セニアの父親は薄々は感じておるじゃろうな」


 直接、転移する所を見られた事は無かったが、村長が中央都市に行く回数も増えているので、憶測だと付け加えミーナに説明した。


 王都の人の多さにミーナは人に酔いながらも、ルディールが行きたかったゲームでお馴染みの武器屋や防具屋をまわり、特に使う事は無いかも知れないが心ときめいた装備を数点買い、昨日の夜に少し気になった事を調べに中央都市よりさらに大きな図書館に向かった。


 図書館は広さの割に人がかなり少なかった、受付に行くとまた音消しのミサンガを貸してくれたので、それをつけて魔法に関する資料や国の歴史について調べ、もしかしたら過去にも自分と似たようなのが居るかも知れないと偉人達についても調べた。


「ミーナよ。かなりすまぬが、少し魔法などについて調べておるから、時間を潰しておいてくれ、魔法の事で分からぬ事があったら気にせず聞きに来てくれてよいぞ」


「うん、分かったー。じゃあ私もこの辺で魔法の本を読んでおくね」


 そう言って二人は少し別れ思い思いの本を探し読み始めた。それからしばらくしてミーナがルディールに話しかけて来た。


「ルーちゃんちょっといい?」


「うむ、わらわの方はお手上げじゃな。気になった事を調べておるが、それっぽいのはおらぬのう。で何が聞きたいんじゃ?」


「この本の完成された魔法と魔法の詠唱についてって所なんだけど…」


「お主。なかなか、ややこしそうなの読んでおるのう」


「最近、魔法が上手く使えるから楽しくて…ってここのページなんだけどね」


 そのページには、完成された魔法はスキルや特技に近く使用者の魔力の大小の影響は受けるが詠唱無しで本来の能力を発揮できる、詠唱がある魔法というのはまだ可能性の段階であり魔法としては完成されていない、というような事がつらつらと書かれてた。


「ここなんだけどね。ルーちゃんが使う魔法って教えてくれる時は別だけど、詠唱してないからこういう事なのかな?後、この著者の人あんまり評価がよくないみたいだからどうなのかな~って思って」


「すまぬが、少し読ませてくれるか?」


 どうぞ~っとミーナから本を受け取り、ルディールは読み始めた。


(ふむふむ、この本の考え方で捉えるなら、わらわが覚えておるゲーム中の魔法は、完成された魔法と言うことになるんじゃな…もしかしたらこの世界の魔法の完成形はゲーム中に存在した魔法なのか?…魔法自体が似ておるし、昨日の死者の呪手も説明もつくのう。まぁ神官達が死者の呪手という名で呼んでおるかは別じゃな)


 その本をさらに読み、昨日考えた二つの選択肢の中の自分と同じようにゲームの中から転移した人物がいる方の可能性をかなり低くし、この世界の魔法を完成に近づけるとゲームの世界の魔法にかなり似てくるという可能性の割合が大きくなった。


(居るかもは知れぬが、解らぬ内はそこまで警戒する必要もないか…それよりわらわの魔法の知識が通用するのはかなりのメリットじゃな。言い換えれば捕まって記憶でも読まれたらゲーム中の魔法を使われるという事じゃな…)


「ミーナよ、お手柄じゃ。お主のおかげですっきりしたわい、ありがとう」


「え?役に立ったら私も嬉しいけど、それでその本の事ってあってるの?」


「ある程度はあっておるが少し違うのう。二つの完成させた魔法を詠唱でつないで別の魔法にする事もできるからのう、そうじゃな~。ゆで卵とパンはそれで完成しておるが、二つあわせるとタマゴサンドになるじゃろ?」


「なっなるほど!ちょっと分かった気がする。その考え方だとこの本が間違ってるって事じゃないんだ」


「他の本にくらべて先に進んだ本じゃな、詠唱は絶対に必要!みたいな本より当てになるぞ」


 それから二人はいろいろな所で遊んだり買い物などをし王都を満喫しついにミーナの魔法学校の入学の日を迎えた。




「どうしよう、ルーちゃんもう帰りたい。貴族様の馬車とかいっぱい止まってる!」


「お主、働く前から帰りたいみたいなのは駄目じゃろ…というか、竜の顎に泊まってリージュも見たんじゃから、そこまで緊張せんでええじゃろ。失礼じゃがほぼ全員、格下じゃぞ?」


「あっそうか…生徒会長って話だもんね…と言うか今、本当に失礼な事言ったね…」


 ミーナを正門まで送り、わらわはここまでしか無理じゃな、と言い戻ろうとした所で、後ろから声をかけられた。


「…生徒の師や先生に当たる魔法使いは一緒に入って大丈夫ですよ。ルディールさん、ミーナさんおひさです」


 二人は振り返るとそこには【焼き鳥】のメンバーの魔法使い、ソアレ・フォーラスの姿があった。


 「おお、ソアレか久しぶりじゃな、元気そうでなにより」


 「ソアレさん、お久しぶりです」


 ソアレは教え子を待っていて、その間に魔法学校の事や冒険者の話について教えてもらい、海の国で海賊や海の魔物の話を聞いていると、ルディール達の近くに立派な馬車が泊まり、ソアレの生徒になる人物が降りてきて声をかけてきた。



 「ええと…ソアレ先生はルディールさん達とお知り合いでしたか?」


 「…なるほど、最近アコットが知り合いに似てきたと思っていたので謎が解けました」


 「やはりセニアか。少し前に権力の塊のような女に会ったから、今ならセニアに緊張せずに話せるのう。村娘ぐらいには見えるのじゃ」


 その言葉を聞いてミーナとセニアは、いつ緊張してましたか?と顔に出したが挨拶を交わし、入学式が始まる講堂に移動を始めた。


 移動を始めると周りの視線がこちらに向いてくる事があり少し耳を傾けた。


「おっおい、あの人って雷光のソアレじゃないのか?」


「ああ、間違いないな。横に居るのはリノセス侯爵の娘だしな」


 その話が聞こえてきたのでルディールがソアレに話しかける


「お主、有名人じゃったのか?」


「…有名かと言われたら少し微妙ですね」


「先生かなり有名ですよね?魔法使い最年少で単独でAランクまでいったお方ですから」


「あれ?ソアレさんのPTはBじゃ無かったでしたっけ?」


 ミーナの疑問にソアレは簡単に答えた


「…魔法使いは個人で戦うよりPTで後ろから魔法をぶっ放すのが仕事ですから、連携の取りやすい仲間のPTに入れてもらってます」


「魔法使いはPTじゃと出来る事の幅がそうとう広がるからのう」


 ミーナがなるほどと納得して、雷光って格好いいですねと褒めると最近、魔力食いという二つ名を聞きましたが、あれには負けますと笑いながら答えていた。


「…と言う訳で、カーディフを見かけたら気をつけてください」


「レンジャーのくせに相手の土俵で戦うってどうなんじゃろな?」


「…それが自力で分かれば、【火食い鳥】はAランクです」


 それから講堂と言うにはかなり広い場所に行き、一度ミーナと別れ来賓席のような場所にいき、生徒会長のリージュの挨拶から始まり、生徒代表で第一王女の話が入り、長い学園長の話がやっと終わり、クラス分けが始まり生徒達が移動を始めたのでルディール達も移動を開始した。


 移動した先は、前にセニアが言っていたように屋外でかなり広く、所々に結界が張ってある場所で的になる丸い水晶が数個浮いていた。


「あの水晶に向かって魔法をぶっ放すのか?」


「…そうですね、あの水晶に当てる事で色がかわりクラスが決まります。黒だとAクラスで金だとBですね」


「ん?他の色はないのか?」


「…ありますが、ミーナさんもセニアも絶対にAですから聞く意味ないですよ」


「その自信はどっから来るんじゃ…」


「…魔眼持ちですから」


 と二人で話していると、クラス分けがゆっくり始まり、二人の元に一人の人物が近づいてきた。その人物にあらかさまにルディールはいやな顔をして追い払い、あまり表情にはださないソアレですら驚いた。


「こっち来んな!」


「…えっ?お知り合いですか?」


「はい、友人と言って問題ないと思いますよ。雷光のソアレさん」


「…そうですか、深くは聞きませんが、ルディールさんが軽口を叩いている所をみるとそうなのでしょう。お会いできて光栄です、リージュ様」


 その人物の登場に周りがざわめきだし、遠くからこちらを見ていたセニアですら驚きミーナに確認していた。


「はぁ~。誰が友人じゃ、で?何しに来たんじゃ?」


「ええ、最近仲良くなった魔法使いさんの名前を聞きにきたのと、かわいい後輩二人の様子を見に来ました」


「ルルルの花子じゃ」


「さすがは大魔法使い、ルディール・ル・オントさん。面白い偽名ですね」


「やはりお主の家の傘下じゃったか、で、本当に何のようじゃ?」


「はい、ルディールさんとの交友を深めるのと、セニアとミーナさんの様子を見にきました」


「帰ってくれたら簡単に友好度MAXになるぞ?」


「簡単なのはつまらないでしょう?少し難しいぐらいが、ちょうどいいのでここにいますね」


「…ルディールさんブレないですね」


「さすがに想定外すぎてブレブレじゃわい、今度あったら猫かぶるつもりじゃったが本心が出たわい」


「余計タチが悪いのが良いですね」


 リージュはルディールとのやり取りを上品に笑いながら有無を言わさずそこに居座った。

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