拾漆
そんな反応に、隣に座る美衣子の肩がビクリと震えたのを、俺は見逃さなかった。
「俺も自分で言っててアレなんだけど……冗談じゃ済まない話なんだ」
美衣子の事を気にしつつ、俺は涼子を宥めるように語気を強める。
当の涼子も、尋常ではない美衣子の過度な反応に気後れして、スタンスだけは変えぬまま、鼻を鳴らして再び腰を沈めた。
「美衣子の話では、始めは家に帰って一人になると気配がするような気がしたり、足音が聞こえたりとかその程度だったらしい……」
一度話を切り、すぐ隣に座る美衣子に「だよな?」と確認をとる。
だが美衣子は小さく頷いただけで、顔すら上げようとはしなかった。
本人からの補足や、俺の間違いの訂正をしてくれれば、より話は円滑に進むのだが、仕方ない。
「でも、そのうち体調まで悪くなってきて……流石に何か原因があるんじゃないかって美衣子は考えたんだ」
俺が初めに美衣子から話を聞いた時は、美衣子は体調を崩している事までは言わなかった。
その事が分かったのは昨日尊さんが来てくれてからだ。
昨日俺も実際に邪気の影響で身体に影響を受けたから、美衣子のそれもきっとそれに起因するものだろうと理解していた。
俺は僅かな時間だったので疲労感程度で済んだが、それを何日にも渡って浴び続けていたら体調も悪くなるだろう。
「……だったら、なんで早く言わなかったんだよ!?」
俺が事のあらましを全て説明し終えると、涼子は唸る様な低い声でそう言った。
美衣子の肩がまたビクリと震える。
どうやら、とりあえず涼子を宥めない事には話は先に進みそうにないようだ。
「涼子、辛い思いしてんのは美衣子なんだ、だからさ……」
しかし、声をかけようとすれば、怒りの矛先が変わり、こちらをキッと睨まれてしまう。
「まぁ、お前がそんな感じになるかもしんねぇって思ったら、普通言えねぇわな」
すると、難儀する俺を見兼ねてか、陽平が助け舟を出してくれる。
陽平のその言葉に、涼子は痛いところを突かれたとばかりにぐっと詰まると、唇を噛んで、ガタガタと震えている美衣子に小さく「ごめん」と謝った。
俺はほぅっと息を吐き、もう一押しと不機嫌な涼子に向けて言葉を重ねる。
「美衣子だってな、そのまんまにしとこうと思ってたわけじゃないんだよ。皆に心配かけたくないって思ってたんだろうし……それで、俺と一緒に御祓いに行くことにしたんだ」
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