拾伍
「羨ましい……?」
「俺さ、変なものが視えるとか誰にも相談出来なかったんだ。結構子供の頃から視えてた気がするんだケド……浮遊霊とか、地縛霊とかってさ、こっちが視えてるってことが解ると、追っかけてきたり、中には面白がって脅かしてくる奴とかもいて、小さい頃は怖くてさ」
そう、俺はずっと目を瞑って、耳を塞いで、逃げてきた。
まだ視えていることがおかしいと思えていなかった頃は、うずくまって唸っているそれに声をかけてしまったりして、何日も追い掛け回されたり、眠れない夜を過ごしたり、ひどい時には首を絞められたり、階段から落とされそうになったりなんていうこともあった。
ある程度年齢を重ねてからは、そいつらが周りの人には視えていないことに気づいて、生きている人間とそいつらとの違いも見分けられるようになって、関わらない、気づいていないふりをするのが一番の対処法だとは解ったが、それでも、肝試しや、怖い話や、それこそ修学旅行だの歴史のある場所に行く度に、血まみれで、ボロボロのそいつらを嫌でも目にすることになって、知らぬふりをするのも辛かった。
それが、神様の祟りだというのだから、文字通り罰が当たっただけのことなのだろうが、それほどの報いを受けることをした覚えがない分、どうしてこんな目に合わなくてはならないのか、とずっと思いながら生きてきた。
「……ごめん、なんか上手く言えないんだけどさ、昨日のも純粋にすげぇなって思ったし、神様が視えるなんて思ってもみなかったってゆーか……君や猫神様たちにもっと早く出会えてたらさ、なんか色々違ってたんじゃないかなーとか……羨ましいって言葉は変かもしれないけど……」
日頃適当にしか物事を考えない主義なせいか、いざ本音で話そうと思ったら完全に支離滅裂になってしまった。
それでも、尊さんと猫神達は何も言わずに、訝しむようなこともなく、話しを聴いてくれた。
「だからさ……もし俺にも神様が憑いてるんだっていうならさ、直接言えたらなって思っちゃったんだよね……」
云いたいは山ほどある。謝罪も文句も……とにかく色々。今まで募らせてきた良いことも悪いことも。
それに聴いてやりたいことも山ほどある。祟るほどの恨みの理由も、どうしたら気が晴れるのかも……
「そうですか・・・・・・」
俺の言葉が完全に途切れるのを待って、尊さんは一度優しく笑むと、またしても考え込むように下を向いた。
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