たて続けに告げられる衝撃の事実に、頭がクラクラした俺は、尊さんの向かい、東屋の据え置かれた二つある長椅子のもう片方に、腰をおろした。

 小さな東屋は、四本の柱と柱の間をぴったりと埋めるような幅のベンチのような長椅子が二脚あり、そこに屋根を被せただけの簡素なものだった。素材は全て木だが、しっかりと防水加工されているのか、風雨にさらされているだろうに、公園とかにあるような薄汚れた感じはしない。

 東屋の長椅子同士の間は、然程無く、立っていた時には気づかなかったが、座ると高低差がない分尊さんとの距離は結構近い。手を伸ばせば頬に触れるくらいの距離しかない。

 改めて間近で見ると彼女がかなりの、それこそテレビに出ているアイドルやモデルと余裕で肩を並べられるくらいの美少女であることを思い知らされた。


「でも俺ん家別に神社でも何でもねーよ?」


『別にお主の家柄等関係ない。大体我等のようにきちんと祀られていればそんな風に憑いたりはせん。大方罸が当たるような事でもしたのじゃろう』


「何か心当たりは有りますか?」


「いや、全然無い。てゆーかいつから視えるようになったかも覚えてないし……」


 視えることがイイコトと思っていたわけではないが、それ自体が自分の力ですらないと言われると、なんだか恥ずかしい。


「大丈夫です。憑いているのは神様ですから、悪いものじゃありませんし、ちゃんと祀ってあげれば猫神達みたいに拓真さんを守ってくれるかもしれません!」


 意気消沈する俺を、尊さんは慰めようと優しい言葉をかけてくれる。


『尊、滅多なことを言うもんではない。たまたま憑いた奴が式神になるなどあるわけがない』


 しかし天空猫神は冷たくそう言い放つ。


「式神になるとまでは言ってないでしょ。少なくとも、祀ってあげれば大きなケガとか病からは守ってくれる筈よ」


『まぁ、それくらいなら無いこともないじゃろうな』


 珍しく年相応な雰囲気の言い回しで反論する尊さんに、天空猫神はあっさりと意見を翻す。

 昨日も思ったことだが、天空猫神は周りに対してと尊さんに対しての物言いが随分違う。


「あー……っと、祀るってどうしたらいいの?」


「そうですねぇ、きちんとお祀りするのであれば、社をお造りするとか、神棚を設けるとか、簡易的なものでもお水や榊を供えていただければ……」


『稲荷神じゃからな、それこそお稲荷さんでも供えれば良い』

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